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横浜映画サークル

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-51)尼崎監禁殺人(39)警察の問題1

2016-07-09 23:00:40 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

(その4-50)の続き。

(L)警察の問題点:サイコパス犯罪に対応できていない

この項ではサイコパス犯罪に対する警察の問題点を述べるとともに、あるべき警察のサイコパス対策を考える。

サイコパス犯罪では市民が最も頼りにする警察が頼りにならない現実がある。すなわち警察法で定める警察の目的「個人の生命、身体及び財産の保護」(警察法2条1項)が実行されないので、なぜかをこの項で詳細に分析する。警察の問題点を浮かび上がらせるために詳細が重要なので長文になっていることを予めご了承願いたい。

猪俣家が何度も兵庫県警に訴え、谷本が血だらけの体で香川県警に訴えたが「事故か事件か、身内にやられたのなら民事不介入で動けない」と取り合わなかった。の事件と同様のサイコ化事件と言える桶川事件(桶川ストーカ殺人事件)で犠牲者猪野詩織が「殺されるかもしれない」「警察って本当に動いてくれてるの?」と父に話すと、「日本の警察は優秀だと信じて育ってきた」父は「日本の警察は一度動いたらものすごい勢いだ」と答えた。父の警察への期待は裏切られた(「犯罪被害と警察の責任」を問う市民の集いのご報告〔2006.08.16〕)での猪野詩織さんの父猪野憲一さんの話)。

の事件では兵庫県警と香川県警が警察の問題点を「警察が警察を調べ」「警察に都合がいい調査結果」が署員の虚偽証言や「記憶にない」ということで導き出された。一方栃木事件(栃木リンチ殺人事件:栃木監禁殺人事件)と桶川事件(桶川ストーカ殺人事件)では警察の問題点司法が調べ署員の虚偽証言やマスコミ操作が明らかになり『警察の職務怠慢』を認める判決が、日本の司法史で初めて下された*1。警察の問題点を考える重要な事件なのでの事件に加えて詳細を分析する。

サイコパスが行うストーカは、監禁と表裏一体のもので、抵抗が多いために監禁できない時にストーカとなる場合が多い。サイコパスは条件が整えばストーカを止め拉致監禁に行動を変化させる。は何年たっても逃走した人のストーカ行為を止めることはなく、4年4ヵ月逃げていた初代を捕まえ監禁し虐殺した。

この項は以下の構成。サイコ化事件に警察はどう対処したらよいかの筆者の考え方を項目(L-7)にまとめた。

(L-1)警察が抱える問題点を根本から考える

(L-2)兵庫・香川両県警の検証調査結果の問題点の要点

(L-3)兵庫県警検証調査結果の詳細分析

(L-4)香川県警検証調査結果の詳細分析

(L-5)例15栃木事件(栃木リンチ殺人事件:栃木監禁殺人事件)と警察対応

(L-6)例16桶川事件(桶川ストーカ殺人事件)と警察対応

(L-7)サイコパス対策と治療体制

*1:「警察の職務怠慢」を裁判で最初に認めたのは「神戸大学院生リンチ殺人事件」判決であるが、この事件は反社会性人格障害者の粗暴な暴力犯罪と言えるもので、サイコパスまんじゅう構造(以下饅頭構造)を形成したサイコ化事件ではない。サイコ化事件で「警察の職務怠慢」を初めて認めたのは栃木事件判決である。

(L-1)警察が抱える問題点を根本から考える

(a)警察署員が犠牲者の訴えを無視し続ける根本原因

例13北九州監禁殺人事件の元警官主也(かずや)がサイコパス松永に屈服し殺された原因谷本隆がサイコパスのところへ話せば何とかなると直談判に行き屈服し殺された原因と根本は共通である。人生でサイコパスのような人に会ったことがない*1ことが根本原因。理由なく人を虐待・虐殺するのように愛情ある関係を破壊して子供に親を殺させるような人に会ったことがない些細な理由を見つけて激しく人を恨(うら)む、また人から恨まれる行為を好んで行うような人に会ったことがない*2。まじめな警察官は、虐待にはよっぽどの理由があるに違いないと、その理由を一生懸命探そうとするがカラ理由(中身のない表面的な理由)しか見つからないので大した問題でないと判断する。その理由(カラ理由)を解決すれば虐待はなくなると誤った判断。警察官は「こんな些細な問題(カラ理由)は家族内で解決してほしい、警察が立ち入ることではない」と突き放す。サイコパス対応は行為の理由を聞き出すのではなく、行為そのものから判断しなければ、この警察官のように誤る。動機を把握して犯罪を解明するのは健常者の犯罪には有効であるが、サイコパス犯罪には有効でない。なぜならサイコパス犯罪の動機は逆転欲求の衝動で、健常者に理解できる動機らしい動機が存在しないからである。

主也については本シリーズ(4-9)「F)a)元警察官主也がなぜ小柄な松永に屈し、家族を殺し、自らが殺されることになったのか(b)主也の対応の誤りまとめとサイコパス対策の基本」及び本シリーズ(4-27)「(e)男6人以上が居ながら、なぜ女性に逆らえなかったのか」参照。谷本隆については本シリーズ(その4-33)「(C-6)(ⅱ)谷本隆がに屈服した原因」参照

マスコミにはに対する警察の対応を「事件の兆候をつかむ警察の「嗅覚が劣化したとしか思えない対応」とするものがある(sankei.jp.msn.com/west_affairs/news)。「嗅覚」のようなベテラン署員の直感に基づく捜査は、サイコパス犯罪に対しても有効であるが、サイコパス犯罪そのものの本質が把握されていなければ嗅覚」が役に立たない。また、警察署員にも割合はわずかだがサイコパス特性を持つ者がいることを忘れてはならない。後の項桶川事件でサイコパス特性を持つ警官の例を示す。

*1:サイコパス特性を持つ者は250人に1人程度。先進国の人が人生で接触(交流)する人の平均人数約1700人とし、人生80年とすると健常者は平均的には約12年に1人のサイコパスと接触することになる。学校の小、中、高の12年で1人に合う程度の低い割合で、健常者同士の交流が人生のほとんどを占めている。健常者には一般的には「変わった人がいた」「近づきたくない人」程度でしかサイコパスが記憶に残らず、サイコパスと深刻な対峙をした経験者は極めて少ない。ほとんどの警察官はサイコパスと対峙した経験がない。本シリーズ(その3)」1.11 サイコパスの統計的特徴(1)サイコパスの割合」参照。「人生で接触(交流)する人の平均人数約1700人」の出典は失念。ご存知の方は連絡ください。

*2:「恨(うら)まれるのを欲するような人」を健常者の感覚の延長で捉えて、「目立ちたい心理」や「自己顕示欲が強いために生じた心理」と言うようなサイコパスの理解がない誤った心理学者がまだいるので注意。目立ちたい心理や自己顕示欲とは全くレベルが異なる残虐性。人から恨まれる行為を好んで頻繁に行うのはサイコパス特性の兆候として見逃してはならない。

)「民事不介入」「事件化していないので動けない」は警察官職務執行法違反

サイコ化事件は警察署員には何が何だかよくわからないために対処できず、「民事不介入」「事件化していないので動けない」と言って逃げ回ることが各署共通に見られる。警察官職務執行法ではこのような「民事不介入」「事件化していないので動けない」を認めていないの事件の対応の兵庫県警や香川県警だけでなく滋賀県警でも見られ、また後の項の栃木事件や桶川事件でも見られる。サイコ化事件では全国の警察署が同様の警察官職務執行法違反を犯す傾向を持っていることが分かる。

警察官職務執行法:「周囲の事情から合理的に判断して」「負傷者等で適当な保護者を伴わず応急の救護を要すると認められる者」を「保護しなければならない」 (3条)、この場合、「他人の土地、建物又は船車に立ち入ることができる」(6条)と定めている。『応急の救護』の場合捜査令状は必要ない

猪俣家は激しく虐待されて、死の切迫した危険にあり、らやサイコ化した子供たちは「適当な保護者」には当たらず、は『応急の救護』の『保護しなければならない』対象であった。しばらくしては殺された。サイコ化した子供たちは、幼児を虐殺する親やDV(ドメスティックバイオレンス)で妻を虐殺する夫と変わらない。この猪俣家の警察対応警察官職務執行法違反になる、と筆者は考える。「神戸大学院生リンチ殺人事件」の弁護人を務めた弁護士中川勘太は栃木事件での石橋署員の対応は警察官職務執行法違反であると指摘している。後の項例15栃木事件参照。

(c)いじめ問題で教師が犠牲者の訴えを無視し続ける根本原因も共通

教師が人生でサイコパスのような人に会ったことがないことが根本原因。なぜいじめるかを問い詰めてカラ理由を聞き出して、「そんな理由でいじめてはいけません」と叱るが、いじめは止まらない。行為の理由からでなく行為そのものからサイコパス特性を把握しなければならない。相談した後先生に「チクった」ことを理由にさらに激しくいじめられるので犠牲者は二度と教師に相談しない。相談がなくなるので教師はいじめがなくなったと勘違いする。いじめている主犯を隔離し、いじめられている人から遠ざけなければならない。いじめられている人の問題ではないので「いじめる側を処置する」ことが重要である。いじめられている犠牲者に「死なないで」と訴えるより、いじめている側を抑え込むことが本質的なこと。いじめ内容が重度の場合はいじめる人をサイコパスの病気として扱わなければならない。たとえスポーツ万能・成績優秀で頭の回転がいい人でもサイコパスを疑う必要がある。いじめ集団(饅頭構造)の場合、虐待実行者が主犯とは限らず、隣で笑っている者が主犯のサイコパスの場合がある。現場にいないで、遠くから疑似サイコ後期に至った犠牲者に『空気』(サイコパスの強い意思)で虐待指示を出している場合や、真白後期に至った犠牲者を『空気』で屋上から飛び降りさせ「自殺」させる場合さえあるので慎重な分析をしなければならない。サイコパスは犠牲者に遺書さえ書かせるは川村家に一家心中させるときに遺書を書かせている。サイコパスサイコ化した犠牲者見分ける必要があるが、虐待の瞬間を見ても分からない集団(饅頭構造)形成の過程を分析して初めて主犯のサイコパスが浮かび上がってくる。集団形成は1週間程度の短い場合も10年を超える場合もある。いじめ問題は、本シリーズで関連性がある部分でその都度取り上げているが、本シリーズ(その4-6)「1)例1佐世保女子高生殺害事件、長崎教育委員会に見る教育現場の問題」など参照。また、教師にも割合はわずかだがサイコパス特性を持つ者がいることを忘れてはならない。この教師は自ら生徒をいじめるだけでなく、生徒が他の生徒をいじめているのを見て快感を得る。この快感を健常者は一般的には理解することができない。サイコパス教師が他の教師をいじめる場合や、サイコパスの生徒が気弱な教師をいじめる場合さえありうる。いじめられる教師に問題があるわけではなく、いじめる側が根本的な問題を抱えている。「いじめ」は「虐待」に置き換えられる。

(d)サイコパスに利用される警察システム

逃げている犠牲者をサイコパスは警察システムを使って捕まえる。免許登録システム(警察に協力させ免許更新に来たまり子を捕まえた)、駐車違反システム(猪俣家の所有車を駐車違反にし、逃走中のを探しに警察が動くことを利用した)、家出人捜索願に対してなど)、金銭略取犯罪(逃走中のは知人から「金を返さない」と警察に訴えられ、潜んでいたは警察に出頭させられた。出頭した時に警察署の外にらが待っていた)、市役所住民票システム(逃走4年4か月後に住所変更した初代をその10日後に捕まえた)など、はあらゆる手で執念深く逃走者を捕まえる。妻初代に「会いたい。娘も会いたがっている」と電話をさせて逃走中のを誘い出している。逃走者を捕まえるために親族関係を利用する例である。は背後にがいることを察して会わなかったが、この電話が初代と話した最後になった。サイコパスは警察、市役所、親族のつながりなどあらゆるものを逆転欲求のために利用する、「極めて頭が良い犯罪者であることを理解する必要がある。一般的な警察官などはサイコパスの頭の良さに歯が立たない場合がある。例13北九州監禁殺人事件のサイコパス松永が沙織に「逃げても警察に捕まえてもらうから無駄だよ」と言ったのは本気である。

サイコパスは健常者が人を助けたいと思う心も利用すが、これについては後の項の「(L-3)(b)谷本家での警察対応、表の注*7:サイコパスは警察や市役所の市民へ奉仕すること、人を助けたいという心を利用する」参照。

警察はサイコパスの特徴をよく理解して、市民サービスを低下させることなく、サイコパスに利用されない強靭なシステムにする必要がある。ネットシステムでサービスを低下させることなくウイルス対策を実施するのと類似の考え方になる。サイコパスは次々と新たな方法を考えてくるので、警察のサイコパス対策システムはネットシステムと同様に新しい事実に対応して常に更新が必要になる。サイコパス対策は後の項(L-7)で述べる。

用語解説:サイコパス犯罪単独サイコパスの犯罪(単独サイコ犯罪)とまんじゅうサイコパスの犯罪(饅頭サイコ犯罪)の両方を言う。サイコ化事件まんじゅうサイコパス犯罪に含まれる。

用語解説犠牲者と被害者:本シリーズでは、犠牲者とはサイコパスに寄生された健常者を言う。警察が使う「被害者」は「犯罪により害を被った者」(ウィキペディア、刑事訴訟法230条、法律用語)で「加害者」に対して使われる。本項では「犠牲者」と「被害者」は同義と考えてよい。厳密には本シリーズで言う犠牲者の一部が警察で立件されて「被害者」の位置になる。

(L-2)兵庫・香川両県警の検証調査結果の問題点の要点

猪俣家と谷本が生存し、警察の対応が酷かったことをマスコミ(読売、朝日などの取材)に訴えたために警察は無視できずに調査せざるを得なかった。マスコミが動いたために警察が隠ぺいできなくなったのは栃木事件や桶川事件と同様。また、が逃げた先のいとこの女性(当時71歳)が日記をつける習慣があり、当時の警察の対応が酷かったことが克明に記録されていたことも本件の検証調査を導出した。猪俣家と谷本が係わった範囲だけが調査され、それ以前は犠牲者が殺されたり、行方不明になったりで警察の対応を批判する人が出てこないので調査されていない。また、滋賀県、京都府、高知県でもの監禁虐待が行われ近所の人などの通報があったが、警察の対応を批判する人が出てこないので調査されていない。批判者が出てこなければ、またそれをマスコミが取り上げなければ、警察は自分の問題点を調査することはない

両県警の調査は「警察が警察を調べた」ために、警察の言い訳や署員の虚偽証言にあふれた調査になっている*1。多くの犠牲者を出し「不十分、不適切な対応」と問題を認めながら、処分者は一人もいない。警察官僚らしい身内に甘い対応になっている。この「検証調査結果」(以下調査結果)は「調査結果報告書ではなく、どこにも正式な「報告」はされていないと思われる。調査は署員証言を優先し、など犠牲者や近隣住民通報者の証言記述はほとんどないという不合理なものになっている。

*1:「軍人が軍人を調べる」軍法会議は、軍幹部が私的な自己保身に使うので、認めてはならないと軍事評論家の田岡俊次が盛んに主張していたが、警察でも同様の傾向がある。

(a)調査結果の警察署員の虚偽証言や言い訳隠ぺいの例

(ⅰ)代表的な署員の虚偽証言の例下記表の通りである。桶川事件での埼玉県上尾署刑事二課長などは虚偽証言どころか告訴状や取調調書などの改ざんを行い、マスコミの情報操作まで行っている。栃木事件の栃木県警石橋署(現上野署)署員も同様の虚偽証言などを行っている。警察官がこのようなサイコパス犯罪で不適切な対応をしているのは一部の特殊な例ではない。栃木事件と桶川事件については後で述べる。

情報元

香川県警署員虚偽証言

谷本の話

筆者の見解

読売新聞2012/11/3朝刊。

朝日新聞2013/1/28朝刊

何度も被害届の提出を求めたものの、は「家族を容疑者にしたくない」などと拒んだ

取材には「担当の署員からは『身内のもめ事なので事件化は難しい』『密室の出来事で証明する人がいない』などと言われた」と話した(読売)。「らから家族同士で殴り合うように仕向けられたことなどを署で説明したが、『身内の事件で立件が難しい』と言われ、被害届は出さなかった*1(朝日)

被害届を出しても無駄だ、受け取らないと署員は対応し「何度も被害届の提出を求めた」は虚偽証言と言える。署員は重大事件になったために自己保身の嘘をついた。調査は署員の話に基づき、から話を聞いていない

*1:娘が父を殴り、ガスバーナーで火傷をさせるなどの虐待していることを署員は理解できず存在を無視して「娘を訴えるのか」とに迫り被害届をあきらめさせる言動を繰り返した。署員が「身内のもめごと」「民事不介入」と動かないのは各警察署に共通にみられる。前項「(L-1)(b)『民事不介入』『事件化していないので動けない』は警察官職務執行法違反」参照。教育現場で陰湿な嫌がらせや暴力にもかかわらず「友人同士のもめごと」と誤るのと類似。饅頭構造では健常者同士が虐待するので「友人同士」と見え、しかも主犯のサイコパスは虐待実行者の中にいないことがあるので、特に「友人同士のもめごと」に見えるサイコ化事件(饅頭構造で健常者がサイコ化した事件)では健常者がそれまでとは別人になっているので、「まさかあの人が」と理解できない知人が出てくる。サイコ化事件は夫婦間、親子間、友人間だけでなく企業内では社員同士で虐待が起こり、あらゆる組織内で起こりうる経営者のサイコパスも存在し、例13北九州監禁殺人事件の松永は布団販売会社の社長として社員間で通電による虐待を日常化した。筆者は企業人としての生活の中でサイコパス特性があると思われる何人かを把握した。企業の中に極めてわずかな割合だが存在する。

(ⅱ)県警の代表的な言い訳、隠ぺいの例下記表の通りである。助けてほしい、何とかしてほしいと訴えに来た犠牲者に「教示した」「助言した」や「納得して帰った」と言う調査結果の言葉は、ほとんど「言い訳」のために使われている。

香川県警調査結果の言い訳の例

筆者の見解

対応日03/2/20  03/4/11

十分に話し合い今後必要があれば高松東署に相談すること等を教示した

十分に話し合ったのであれば、谷本家の監禁虐待や虐殺は防げたはず「十分に話し合った」は署員の言い訳。「今後必要があれば…」は、今何とかしてほしいから来ている、今後の話で来ていない。教示と言う言葉は他にも「金銭問題は弁護士と相談するよう教示した」などと言い訳に使われている。弁護士と相談して解決するような問題なら警察に来ていない。暴力などを背景に金が奪われ、意味が分からない虐待を受けて、助けてほしいと訴えに来ていた。

03/4/26 03/4/30

今後暴行等が発生すれば110番通報することを助言した

言われなくても暴行などがあれば110番通報する、助言の必要はない。すでに暴行が行われているから、今何とかしてほしいと警察に来ている。今後ではない。

04/1/19

のキャッシュカードで現金が出されていた、を捜査できないかと来た。署員の説明に「納得して帰った

警察に何回来ても「身内の問題」として動かないので、はキャッシュカード事件を窃盗としてを捜査してほしいと松東署に来た。調査結果では「署員のメモに被害者が銀行となるので被害届を受理できない旨を説明し、納得して帰った旨の記載がある」となっている。は納得したのではなく、『この署員に話してもダメだ』とあきらめたのであろう

03/8/22

署員名の谷本家訪問メモ  

「庭5人正座」、「木にゴムで両手を縛る」、と妻初代及び娘の負傷状況等の記載。メモに対し作成時期、記載の正確な意味、内容を裏付ける事実等当時の具体的状況を確認することができなかった

事実の具体的状況は訪問した署員に聞けばわかること。近所の人も知っている事実。メモに記された激しい虐待の事実を認めれば、何も対応しなかった警察の責任が追及され職務怠慢になる。そのためにメモに記された事実は「確認することができなかった」と隠ぺいした。このように自分たちの都合がいいように隠ぺいするのであれば、言い訳のための調査であったと言わざるを得ない。尚、別のところであるが「署員は当日の状況を記憶していなかった」と都合の悪いことは「記憶にない」とした。

(ⅲ)兵庫・香川両県警とも「助けてほしい」と来たことは調査結果では「相談」に来たと表現:なぜそのまま「助けを求めに来た」と表現しないのか、警察の用語の決まりで、来たすべては「相談とする」のであればやむを得ないが、違和感がある。耳がちぎれかかり、手足にやけどを負い血だらけで高松東署に来た何とか助けてほしいという求めを「相談」に来たとしている。他の「命に係わる深刻な、助けてほしい」と来たすべてが「相談」に来たとなっている。調査結果の「相談」は、一般的な相談とは状況が違うことを理解しておく必要がある。

(その4-52)へ続く。

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-50)尼崎監禁殺人(38)裁判9

2016-07-09 23:00:35 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

(その4-49)の続き。

*7の停滞期に呪縛解放が進む:和子の死亡後に「自首の是非を3人で話し合った」のはが和子虐殺の陶酔状態で停滞期に入り、残虐性が影を潜めたためと考えられる。すなわち、3人は弱い呪縛解放が生じて自分を回復し「自首の是非を3人で話し合った」。和子を虐待している最中は自分を失い全く別人の状態で、自首を考えるということはない。「衰弱した和子に水を飲ませた」のも同様の理由で、の「意向に逆らったわけではなく意向が影を潜めたからである。サイコ化犠牲者の行為サイコサイクルを理解しないと判断を誤る。この検察の判断はその例である。

*8:検察の「24時間監視されてはおらず、逃げることは可能だった」は誤り。サイコパスの監禁は監視で逃げられないだけではなく、がんじがらめの監禁になっている。一時逃げたのは逃げたとは言わない。逃げれば、残った親族全員が捕まえに動くことや、捕まればさらに激しい虐待を受けることがひしひしと伝わっている。警察も身内の問題として助けてくれない。実質的に逃げられない。逃げて生き延びた人は偽名を使い、ひっそりと生活して、人生を犠牲にしている。4年4ヵ月逃げて潜んでいた谷本初代が親族に捕まり殺された事実を検察は理解しなければならない。

*9:博之、香愛、裕美弁護側の見解はサイコ化犠牲者の状況をよく理解している。

*10:3人は裁判時には健康な精神に戻っており、精神障害ではないサイコ化事件期間限定精神障害事件でもある。支配されている間とその後の呪縛解放までの期間限定である。精神鑑定の「学習性無力感」ではサイコ化事件を扱うには不十分で、裁判長を説得できない。「学習性無力感」などの精神鑑定については本シリーズ(その4-34)「(d)(ⅲ)瑠衣の精神鑑定」参照。

*11:「博之は香愛にも暴力を加えた」「博之はから逃れようとせず、他の2人を犯行(和子虐殺)に加担させた」は博之が疑似サイコ後期に至っている様子を示し、サイコパスがその場にいなくても3人で母和子虐殺したことを述べている。川村家は博之をまんじゅうのアンとした自律傍系構造になっている。例13北九州監禁事件でサイコパス松永がいないところで、緒方恵理子を夫と姉と子供の3人が殺すのと類似の状況である。緒方恵理子虐殺も参照してほしい、本シリーズ(4-8)「(E)第4の殺人:緒方恵理子33歳」。

*12財産目当て:検察の「財産目当てだったの真意に気付けず」は健常者の延長上でサイコパス犯罪を理解しようとした典型的な誤り。「財産目当て」では和子を虐殺する説明がつかない真意は健常者に寄生する逆転欲求である。サイコ寄生前期略奪期)が財産目当てが目立つだけ。サイコ寄生後期(残虐期)は健常者の心を破壊し肉体を破壊することを通して快感を得る。サイコパスの健常者への寄生については本シリーズ(その4-35)「(J-1)(a)サイコサイクルをサイコ寄生区分で分析する:略奪寄生と残虐寄生」参照

*13動機は身勝手:検察は「(和子虐殺は)自分の身を守るために暴行するなど動機は身勝手」としたが、これも*12と同様、健常者の延長上でサイコパス犯罪を理解しようとした典型的な誤り。「自分の身を守る」と言う正常な精神状態ではない。3人はの分身になって、動機を代行して和子を虐殺した。サイコパスが話す殺害動機には中身のない表面的な理由(カラ理由)しかないため、「動機は身勝手」となる。サイコパス事件の多くは「動機は身勝手」として処理される。

*14:裁判長の「博之が自ら依存して生きる道を選んだ」も健常者の延長上でサイコパス犯罪を理解しようとした典型的な誤り。博之は疑似サイコ後期に至っており、がいなくても「遠在の空気』」で虐待をするので、外部からは自分の意志で虐待を行っているように見える。すなわち博之が自ら生きる道を選んだように見える。実態は自分を失い、サイコパスの逆転欲求満足のために残虐行為をしている。【太平洋戦争時の健康な兵士が自ら特攻の道を選んだように見えるが、実態はサイコパスの旧日本軍幹部の逆転欲求満足のために自爆攻撃をするのと同様である。後の項「戦時下のサイコパスの特徴行動」参照】

*15:博之の「私がもっとしっかりしていたら、和子さんが死ぬこともなかった」は呪縛解放したから言える言葉。当時はどんなにしっかりしていてもに逆らうことはできなかった。サイコパスは逆らうことができないような状態を作ってから虐待し、サイコ化する

*16:サイコパスは、財産・子供などのあらゆる物的なものと、愛情ある人間関係・生きることそのものなどのあらゆる心的なものの「全てを奪い、破壊する」と同時に簡単に死ぬ。サイコパスは財産を奪うことに快感があり、奪った財産は湯水のように使ってしまう。は奪った金でブランド品をそろえ、角田家の従属者に贅沢三昧をさせ、これ以上食べられないというほど食べさせる。【太平洋戦争の満州関東軍731部隊の石井四郎隊長が隊員に当時内地では食べられないような贅沢品の赤飯やステーキなどをたらふく食べさせるのと似ている。石井四郎のサイコパス特性については後の項「戦時下のサイコパスの特徴行動」参照】

*17:【「全員が死に向かって進んでいた」は太平洋戦争の多くの戦場で見られた旧日本軍の状況。サイコパスは敵も味方も全員が死に向かって進んでいくことに快感があり、強い衝動がある。健常者には自分の延長上ではこの感覚が理解できない

*18:香愛の「人間の弱さを思い知った」は「サイコパスの恐ろしさ思い知った」と理解されるべきものである。

*19:香愛の言葉に呪縛解放苦悩の様子がよく現れている。博之と裕美も呪縛解放苦悩の状態になっている。呪縛解放苦悩については本シリーズ(その4-5)「(d)(ⅰ)サイコパス化過程の4段階の表の注*3:健常者の呪縛解放時の3つのタイプ、「忘却」「苦悩」「正当化」」参照。

*20:香愛弁護人は、裁判員が「3人と同じ状況で指示に逆らうことができない」ことを理解してくれると確信を持っている。ほとんどの健常者はサイコパスに取り込まれれば、サイコパスに逆らうことは困難である。【太平洋戦争の健康な兵士が、自爆攻撃の特攻に自ら「志願しないことを選択できない」のと類似の状況である】

(c)2審大阪高裁、検察、弁護側、裁判長の見解比較:横田信之裁判長判決2014/10/3。

鍵点

検察 棄却

弁護:無罪

横田裁判長:博之を減軽し、3人とも猶予刑

饅頭

「3人を肉体的、精神的に激しく抑圧し、圧倒的な影響力を持っていた指示こそ事件の要因。3人に主従や上下の関係はなく、執行猶予の有無という重大な差を付けるのは均衡を欠いている*1として博之が実刑から執行猶予に減刑。裕美と香愛は1審のまま

精神鑑定

首謀者と位置づけたから睡眠制限や暴行などの虐待を受け「正常な判断ができず、心神喪失状態」「の心理的支配下で刑事責任能力はなかった」と再度無罪主張した。博之:上告せず確定。裕美と香愛:不服で上告

さらなる制裁を恐れて犯行に及んでおり、状況に見合った行動を取っていて精神障害はなかったと判断した。また和子死亡時に3人が自首しようとしたことから「善悪の判断や行動制御に影響を及ぼすほどの精神の異常は認められない*2として、1審と同じく完全責任能力を認めた

筆者の見解、注*1:まんじゅう構造の上下関係、すなわち内部の虐待する側とされる側の違いを大きなものとして認めず両方とも犠牲者としてほぼ同列にしたこの判決は画期的なものである。

*2:3人が自首の話をしたことなどは前項(b)筆者の見解の「*7の停滞期に呪縛解放が進む」参照。精神障害の特徴は*10期間限定精神障害の説明参照。現状の精神鑑定では精神障害を認めると無罪になり認めるわけにいかない事情がある。サイコ化事件では犠牲者といえども単純に無罪にすべきではないので、あるべき判決として筆者の判決を本シリーズ(その4-43)「(K-4)司法の問題(a)筆者の判決の考え方」で説明しているので参照してほしい。

(d)最高裁:最高裁。第3小法廷、岡部喜代子裁判長。判決2015/10/13、裕美、香愛の上告棄却。大阪高裁判決で確定。

(K-7)6裁判のまとめ 

この6裁判はまんじゅうサイコパスの特徴がどのようなものかが司法の場で浮かび上がった歴史的に重要な裁判である。司法関係者のサイコパスの認識の違いが6裁判での判決の違いになっており、例えば少女時代から角に寄生され約3億円を奪われ子供を奪われた犠牲者の谷輪美子が懲役21年の不当な判決を受け、一方川村博之は義理の母和子を虐殺したがの影響が理解され執行猶予の軽いほぼ正当な判決になっている。サイコパスの理解度の違いが量刑の違いになっており法の下の平等が崩れ、司法でのサイコパスの認知を深める必要性がこれらの裁判から浮かび上がっている。例13北九州監禁殺人事件の緒方純子も大変過酷な残虐行為を受けた犠牲者であるが無期懲役の不当な判決となっている。サイコパスの理解が進むことで、司法制度全体、法体系全体の大改革が必要になると筆者は把握している。

映画『凶悪』のような人は誰でもが残虐なのだと言わんばかりの残虐映画が次々と作られるが、サイコパスは残虐性を持つが、健常者には残虐性はない。健常者は逆に残虐性を嫌悪し、観たいとは思わない。サイコパスはいつでも残虐なわけではなく残虐期に残虐であり、停滞期には外見上は健常者と変わらない。健常者は残虐ではないが、健常者でもサイコパスに取り込まれてサイコ化すれば残虐になるサイコ化事件をその残虐性に目を奪われることなく本質から扱う司法が求められている。サイコパス裁判及び緒方順子の裁判については本シリーズ(その4-9)「(M)松永の無罪弁明にみるサイコパス裁判と科学的犯罪心理学の課題」も参照してください。

 (L)警察の問題点

(その4-51)に続く。

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-49)尼崎監禁殺人(37)裁判8

2016-07-09 23:00:30 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

(その4-48)の続き。

(K-5-6)博之・裕美・香愛裁判:1審神戸地裁裁判員裁判:裁判長細井正弘:判決2013/10/31。裁判員42日間。3人とも控訴。2審控訴審大阪高裁裁判長横田信之:判決2014/10/3。裕美と香愛が上告。最高裁第3小法廷、岡部喜代子裁判長:判決2015/10/13。各裁判の要点は下記表の通り。

 

川村博之

川村裕美

大江香愛(裕美の姉)

1審

神戸地裁

検察求刑

懲役5年

懲役4年

懲役4年

弁護側主張

無罪

判決2013/10/31

懲役3年6月

懲役2年執行猶予3年

懲役3年執行猶予4年

2審大阪高裁,判決2014/10/3

懲役3年執行猶予5年

同1審

同1審

最高裁,判決2015/10/13

上告せず

無罪を主張し上告。棄却。高裁判決で確定

博之・裕美・香愛裁判全般の犯罪の中で最も新しいので情報が多く、殺害された母和子以外が生存し、関係者の記憶がしっかりしている。本シリーズでの理論的な解明の骨格となった事件である。川村家は09年4月に角のベビーカーが電車のドアに挟まったとのいちゃもんで、クレーム対応の仕事をしていた川村博之が取り込まれた。以来2011年11月に香愛が逃走して事件が発覚するまでの2年6か月の事件。この間に川村家は自立傍系サイコパスまんじゅうを形成し、博之は疑似サイコ後期まで至り、がいなくても母和子、裕美、香愛へ暴力をふるい虐待するようになった。互いの暴力の強要、絶食、睡眠やトイレの制限、たばこの火を顔になどすさまじい虐待の実態が明かされた。「息をする以外はすべての指示に従った」博之証言。下記表は川村家のそれぞれがサイコ化していく過程を分析したもの。傍系であるためにほとんど生活階層はなく、虐待をする上下関係だけになっている。詳細は本シリーズ(その4-18)~(その4-23)参照。

犠牲者

サイコパス化移行又は経過の期間、全過程2年6ヶ月。表の左から右へ時間の経過

博之

に知り合って9ヶ月真白前期

自宅に乗り込まれ8ヶ月真白後期

離婚,子供の人質養育費。7ヶ月疑似前期。裕美,香愛,和子を虐待へ

2ヶ月疑似後期へ。疑似後期4ヶ月経過で和子虐殺

裕美

博之とともに9ヶ月真白前期

博之とともに8ヶ月で真白後期

9ヶ月疑似前期へ。捕まえた和子を虐待へ

疑似後期へ移行せず

香愛

離婚問題に巻き込まれて4ヶ月真白後期

5ヶ月疑似前期、裕美、和子虐待へ

疑似後期へ移行を拒否する逃走で移行せず。

子供

が自宅に来て両親への暴力を見て8ヶ月真白前期

両親離婚、人質になり7ヶ月真白後期

疑似前期へ移行の兆候。和子を叩く行為有り

和子

巻き込まれて12ヶ月殺害直前まで正常。殺害直前の数週間で真白後期

川村兄

巻き込まれて4ヶ月の家族会議で真白前期。後期移行前に逃走

川村父

巻き込まれて4~5日監禁正常維持。逃走。真白前期に移行せず

 裁判に係る4人の到達したサイコ化段階をまとめると下記。

 

到達したサイコ化段階

虐待状況:虐待の階層構造まんじゅう構造)ができている

博之

疑似サイコ後期

香愛,裕美,和子を自律的に虐待。「息をする以外すべてに従った」博之証言。を崇拝

香愛

疑似サイコ前期

博之が見ている前で裕美,和子を虐待。自分も栄養失調でガリガリに痩せ、殺される寸前

裕美

疑似サイコ前期

博之が見ている前で和子を虐待。自分も栄養失調でガリガリに痩せ、殺される寸前

和子

真白後期

肋骨3本と喉の骨が折れ、通常体重41キロが死亡時は22.5キロにガリガリに痩せて、ドラム缶にコンクリート詰めで遺棄された。この虐殺は川村家の人により行われた

検察が、川村家がに取込まれたのは「3人の心の弱さ」が原因と的外れな主張をした。サイコパスの恐ろしさを知らないこの検察官のような人は、簡単にサイコパスに取り込まれ、殺されることになる。3人は普通の健常者で心が弱いというようなことを示すいかなる証拠もない。検察が的外れであることと弁護側が最初から徹底的に無罪を主張したことで、本来あるべき判決に至った貴重な裁判である。子供たちが母親を虐殺したが2審では全員執行猶予になった。3人それぞれの弁護側の状況分析は正確で、サイコ化事件の実態を知る貴重な内容である。2審でも心神喪失は認められず責任能力はあったとして無罪には至らなかったが、「の指示こそ事件の要因」(2審横田裁判長)としてサイコ化事件の実態の理解は得られている。だが、博之がの指示がないのに香愛、裕美、和子を虐待することの解明はされていない。この虐待行為は博之がサイコ化過程の疑似サイコ後期段階に至ったとすることで初めて理解できる。以下裁判の詳細を見る。

(a)1審検察、弁護側、裁判長の見解比較

まとめサイトにある各報道を元情報にしているので、厳密性を必要とする人は裁判記録を直接見てください。筆者の見解は表の注できしています。

鍵点

検察:求刑博之懲役5年,裕美と香愛懲役4年

弁護:無罪

細井裁判長:博之実刑,裕美・香愛猶予刑

サイコ化

論告「は人の心を取り込む巧みさと3人の心の弱さがあった*1、3人は離婚や子どもの養育などの問題を解決するため頼る選択をし、依存していき、母和子への暴行に加担していった」「もともと抱いていた家族間の不満を増幅させられたに恐怖心を抱く一方で、家族の問題を解決するため依存していった*2と強調した。「母和子への暴力は1カ月半にわたり、食事やトイレも制限する過酷で無慈悲なものだった。和子が感じた悔しさや苦しみ、絶望は想像を絶する*3

の威圧や恐怖、懐柔を通して心理的に屈服し、無批判、無抵抗の状態になっていた。何度も暴力を受け、財産を巻き上げられて、の目を通してしか、ものごとを見ることができなくなった。精神的にも肉体的にも虐待され、それでもに「和子さんを自由にしてあげましょうなどと言うことができたかどうか。裁判員の皆さんには、我が身に置き換えて考えてほしい*4

「首謀者はであり、と関わりを持たなければ犯行に及ばなかったことは明らか、3人は被害者の一面がある」*5。和子に対する「暴行は長期間に及び、無慈悲かつ執ようで悪質極まりない

精神鑑定

3人が責任能力のない心神喪失状態だったとする弁護側の主張については「心神喪失まではいたっていない」「怒りの矛先の恐怖と意向に沿わない行動をする和子さんへの怒り憎しみからから暴行に及んでおり、責任能力はあった」*6 

「3人は意向に逆らって衰弱した和子に水を飲ませるなど、自律的な判断をしていた。和子の死亡後に自首の是非を3人で話し合った」ことなどを挙げて「違法な行為という認識はあり、自律的な判断に基づいて行動に加担した。精神障害でもなく、の影響も一定程度に限定されていた」と刑事責任能力は問えるとした*7

精神鑑定で「3人とも明らかな精神障害はないが、行動を制御する能力は完全に失われていた」とされたことには、「24時間監視されてはおらず、逃げることは可能だった。」「鑑定結果は抵抗しづらい心理状態を説明しただけ。採用すべきではない」と主張*8

博之弁護側は「暴力などによって生殺与奪を握られ、心理的に完全に屈服していた。自律的思考はできなかった」「事件当時は考えや指示が唯一の行動基準。責任能力はなく、適法な行動を取れる状況でもなかった」と無罪を訴えた。香愛弁護側も「全ての行動基準で、犯行当時、暴力以外の手段を選択できなかった判断が自分の判断に取って代わってしまい、和子に対する暴力以外の行為は選択できなかった。普通の人が、同じ環境で他の行為をとれたかどうか。3人の言葉を思い出して評議してほしい。博之側と同様、心神喪失状態で刑事責任能力はなかったと無罪を求めた。裕美弁護側も最終弁論で、「理不尽な指示価値観疑いを持っておらず異常な精神状態だった」に支配されていた間の裕美は、本来の裕美ではない。自律的な判断に見える行動も意向に沿うようにしたものだ。無抵抗な状態は精神の障害にあたり、刑事責任は問えない無罪を求めた*9

精神鑑定はの指示に無抵抗に従う「学習性無力感」に陥っていたとして責任能力を否定し、無罪の主張根拠となったが、判決は「心理学上の概念で精神障害ではない」とした*10

饅頭

「博之は香愛にも暴力を加えた」*11

「博之はから逃れようとせず、他の2人を犯行に加担させた*11

動機

3人は「財産目当てだったの真意に気付けず*12に対する依存心と暴力の矛先が自分に向くかもしれないという恐怖心で、「(和子虐殺は)自分の身を守るために暴行するなど動機は身勝手*13

博之が自らに依存して生きる道を選んだ*14

殺意:3人は殺人罪で逮捕されたが起訴は傷害致死罪で、裁判の始から「殺意は無い」ことになって、論じられない

酌量と量刑

共犯者に逆らえなかった過去の類似事件を参考にすれば懲役8年程度を求刑すべきだが、暴力にさらされ被害者的な立場という特殊性がある」と求刑理由を説明。博之については香愛にも暴力を加えたなどとして2人より重い5年を求刑

の指示に無抵抗に従う「学習性無力感」に陥っていたとして責任能力を否定し無罪主張し、判決不服で控訴

「ほかの2人を巻き込んだ刑事責任は特に重い」と実刑。香愛と裕美は関与が限定的と執行猶予付。

3人の最終意見陳述

博之

の言いなりになり、(家族間でののしり合い、殴り合ったはもういないと思っても体が(怖さを)覚えていて、いまだに拭いきれない。この手で義母の命を奪い、当時の自分が憎い」「私がもっとしっかりしていたら、和子さんが死ぬこともなかった」*15と涙で声を詰まらせた。の自殺について「私たち家族から全てを奪った。何一つ認めることなく、謝ることもなく、自分勝手に死んでいった」*16と批判

香愛

全員が死に向かって進んでいた異常だった」と話した*17。「人間の汚さやずるさを目の当たりにし、人間の弱さを思い知った*18。「(母和子は」どんなにつらく痛かっただろうと胸が締めつけられる。正直に話すことが母に償う唯一の方法だと思った。罪を一生背負い続けていく本当に申し訳ない」と泣きながらメモを読み上げた*19

裕美

「あの頃は全てが異常だった。異常な空間、異常な空気だった。母に心よりおわび申し上げます」「生き残った自分は命の重さを意識して、精いっぱい生きていきたい」と涙を流した*19

香愛弁護人

3人と同じ状況で指示に逆らうことができたか?という点は普通の人が評価すべきで、まさに裁判員裁判向き」*20と語った

(b)筆者の見解:上記表の注で筆者の見解を記す

*1:検察は「3人の心の弱さ」が原因と的外れな主張をした。サイコパスに取り込まれた側に原因があるとするサイコパスの実態を知らない人が陥りやすい見解。3人は普通の健常者で「心が弱いというようなことを示すいかなる証拠もない。サイコパスの本当の恐ろしさを知らない正義感だけのこの検察官のような人は、簡単にサイコパスに取り込まれ、殺されることになる。本シリーズ(その4-9)「(F)(a)元警察官主也がなぜ小柄な松永に屈し、家族を殺し、自らが殺されることになったのか」と「(⒝)主也の対応の誤りまとめとサイコパス対策の基本」参照。

*2:検察の「(3人は)離婚や子どもの養育などの問題を解決するため頼る選択をした」は認識が誤っている。「問題そのものがにより作られた。サイコパスは虐待や心の交流を破壊することに理由を必要としている。「問題」は「カラ理由」となる。その理由は中身のない表面的なもので、健常者にはこんなばかばかしい理由で離婚をし、子供をに預けるのかと思うようなどうでもいい内容である。例13北九州監禁殺人事件の松永は虎谷を虐待するときに娘の沙織に「父親の悪いところを10個書いて報告しろ。そうしないと電気を通す」と言って「ちくりノート」を携帯させ、その内容を理由として虎谷を虐待した。松永はこの虐待で親子間の心の交流破壊と、虎谷の肉体破壊の2重の逆転快ドーパミンを味わっているの言う「問題」は松永の「ちくりノート」に相当する作られたカラ理由。だが事実が多少なりとも含むところにカラ理由のカラ理由たるところがある。

検察の「もともと抱いていた家族間の不満増幅させられた」も認識が誤っている。「家族間の不満」をもしノートに書き留めれば「ちくりノート」になり、が無理やり言わせた、あるいは懐柔期に聞き出したものに違いない。「家族間の不満」を言わなければ飲食制限などが待っている。検察の「増幅させられた」というのは、カラ理由と虐待の間の論理飛躍のことを言っている。この飛躍は「サイコ強弁」により実行される。博之が昔ほかの女と付き合っていたことを聞き出して、離婚しろ、という飛躍である。健常者は今の妻が了解すれば問題にならないと思うが、離婚しなければ虐待が待っている。カラ理由はサイコ強弁」となり虐待の強制力を持って、論理飛躍を実現する。は「お前にはあの女は似合わない」という理由だけで離婚させる論理飛躍さえある。は下記表の通り合計10組以上を離婚させている。サイコ化した犠牲者は逆らうことなく離婚している。「似合わない」で「離婚させる」論理飛躍は「サイコ強弁」そのものである。検察の見解を筆者が理解すれば、検察の「もともと抱いていた家族間の不満を増幅させられた」は「些細な家族間のことを聞き出してはそれを虐待のカラ理由とした」となる。検察の「頼る選択をした」「問題を解決するため依存していった」は「問題(カラ理由)を使った虐待で犠牲者のサイコ化が進んだ」となる。

合計離婚数

橋本家

皆吉家

谷本家

猪俣家

川村家

10組

1組

3組

2組

3組

1組

サイコパスが残虐行為に理由を必要としていることについては本シリーズ(4-4)「9」サイコパス自身は自分をどう感じているか(d)虐待行為にどうでもいい理由を必要とする」参照。「ちくりノート」については本シリーズ(その4-8)「(e)娘沙織(父死亡時11歳)を取り込んだ松永のアプローチ法」参照。「サイコ強弁」については本シリーズ(その4-7)「(B)第1の殺人:虎谷久美雄34歳(d)サイコパス強弁」参照。

*3:「絶望は想像を絶する」と検察は残虐性に目を奪われている。一般的にサイコパス事件はその残虐性に目を奪われ、本質が見えなくなりがちであるが、検察はこの状態。

*4:この弁護側の裁判員への呼びかけは真白後期状態の説明であるが、事件の本質を突いている。

*5サイコ化事件の本質の一つは加害者が実は被害者でもあること。細井裁判長はこのことに気が付いた。そのため判決が妥当なものに近い。だが妥当な判決に至るのは2審大阪高裁の横田裁判長の判決である。

*6:検察の見解は結論が誤っているが、下記2つの重要なサイコ化事件の本質を述べている。

①「意向に沿わない行動をする和子」=母虐待犠牲者を子供サイコ化犠牲者が虐待をする構図:和子の「の意に沿わない行動」はにより作られたもので自らではない。子供に虐待させるカラ理由を「意に沿わない行動」の形で作っている。例えば、深夜に続く「家族会議」でが「寝てもよい」いう前に居眠りをした、「水を飲むな」というのに水を飲んだ、「許可してない」のにトイレに行ったなどで虐待し、「私が殴っているのに知らんぷりか。身内がやらなあかんやろ!」と川村家の人に和子を殴らせた。居眠りをした、水を飲んだ、トイレに行ったなどが意に沿わない行動である。谷本家などで「身内のことは身内で正せ」と身内間で虐待をさせたのと同じ構図。詳細は川村家、谷本家などそれぞれの家族の分析の項を参照。

サイコ化犠牲者はサイコパスの怒り憎しみを代行するサイコパスは理由なく激しく怒り憎むが、サイコ化犠牲者はその怒り憎しみを代行する。3人は母和子を怒り憎む理由がないが、代わって怒り憎む殺意の代行と同様で、動機の代行とも言える。サイコ化犠牲者サイコパスを映し込んだ分身へ変化していく。殺意の代行については本シリーズ(その45)「(K-5-3)裁判」の始の「殺意の代行」参照。

警察はサイコパスの残虐行為、例えば「何回も刺して殺している」「バットで頭がつぶれて脳が出るほど叩いている」ことに「激しい恨みによる犯行」と説明することがあるが、警察が推測しているような激しい恨みの理由となる事実は見当たらない。ストレスがあったなどのカラ理由(中身のない表面的な理由)はある。健常者はそんな理由で、なんでこんな殺し方をするのか、さっぱりわからない。また、健常者はサイコパスと対面した時になんでこんな「些細なことに激しく怒っている」のかわからない。特にサイコパスが人から恨まれたい、憎まれたいという欲求を持っていることを健常者は理解しがたい。サイコパスの逆転欲求を理解して初めて納得できる。これらはサイコパスが脳神経系の病気であることを示す特徴である。サイコパスの「理由なき憎しみ・恨み・怒り」が偏桃体機能不全から生じることは、本シリーズ(その4-3)「3)サイコパスの逆転愛情/逆転承認欲求」参照。

(その4-50)へ続く。

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-48)尼崎監禁殺人(36)裁判7

2016-07-09 23:00:25 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

(その4-47)の続き。

(K-5-5)瑠衣裁判:1審神戸地裁裁判員裁判:裁判長佐茂剛(さもたけし)、仲島と同じ裁判長。判決2016/02/12懲役23年。控訴せず確定。裁判員?日。

瑠衣裁判全般:瑠衣は角田家で極めて特殊な位置を占めていた。そのことが、瑠衣の犯罪と証言を評価する重要な視点だが検察も弁護側も注目していない。検察は「疑似家族のピラミッド構造」(直系生活階層)とまんじゅう構造の関係を混乱させているのでここで明確にしておく。生活階層は衣食住の日常を営む、健常者と同様の大脳新皮質の合理的判断に基づくもので、残虐性を求めるまんじゅう構造とは異なる長期に従属した犠牲者を生活階層の上層にした。下記表は直系7人がに取り込まれてからの年数をまとめたものである。マサが取り込まれた2002年を基準にすると20年以上前から取込まれている人を上層10~20年中層10年未満下層にしていることが分かる。例外が一人いる瑠衣マサより1年後にもかかわらずマサより上の上層の優遇された位置にいる。

 

マサ

瑠衣

仲島

に取り込まれた時期

1958

1973内縁へ

1986誕生

1988

2002Mへ

03/2

06頃Mへ

5歳

27歳

0歳

16歳

29歳

17歳

38歳頃

マサ基準年

-44年

-29年

-16年

-14年

0年(基準)

1年後

4年後

直系生活階層

上層

中層

下層

上層

下層

久芳を05/7に殺害した後の07年の角田家直系7人のまんじゅう構造生活階層の比較を下記表に示す。例えばマサは残虐行為の時には暴力装置として重要な位置を占めるが、日常的な生活では下層で、発言力がない。一方瑠衣はまんじゅう構造で積極的な残虐行為を行う重要な位置であると共に、生活階層でも上層の優遇された位置にある。これは瑠衣がサイコパス特性を持ちとサイコパス融合拡大を起こしていたためと考えられる。最下層は逃走を繰り返すなどに逆らい、に興奮を与える人たち、あるいは弱い高齢者など逆転欲求のターゲットになる犠牲者たちである。最下層まんじゅう構造の虐待犠牲者と共通になる。サイコ停滞期は生活階層が主体となり、サイコ寄生前期略奪期)は生活階層まんじゅう構造が融合し、サイコ寄生後期残虐期)はまんじゅう構造が主体となる。生活階層ではが金銭担当、が子供の世話担当など分業がある。傍系には生活階層がほとんど存在せず、略奪と残虐行為を受けるまんじゅう構造だけになる。次の項(K-5-6)博之・裕美・香愛裁判」は傍系の裁判になる。

 まんじゅう 基本構造

まんじゅう  構造内容

  直系まんじゅう構造     (逆転欲求に基づく虐待行為時)

 直系生活階層          (大脳新皮質に基づく衣食住確保時)

中心のアン

サイコパス

(瑠衣)

頂部

暴力装置

マサ

上層

、瑠衣

まんじゅうの皮

疑似サイコ後期

、瑠衣

中層

疑似サイコ前期

仲島、

真白後期

下層

マサ、仲島

虐待犠牲者

虐待を受ける人

初代,まり子,みつゑ,次郎,皆吉次男

最下層

同左犠牲者

瑠衣のサイコパス特性は「瑠衣は事実ではないことを言っている」「復讐しようとしている」と訴えた。詳細は(K-5-1)優裁判(a)検察、弁護、裁判長の見解比較注*3参照。マサは「谷本初代の頭を揺さぶっていない」と証言したが、瑠衣はマサが初代に暴力をふるい「頭を激しく揺さぶっていた」とマサと矛盾する証言をした。筆者は、瑠衣が母初代を虐待したことをマサに被せたと見ている。いずれの裁判長もマサの証言を認めず、瑠衣の証言を真実とした。瑠衣はまんまと裁判長をだましたと考える。サイコパスの中には裁判長も平気でだますものがいる。詳細は(K-5-4)マサ裁判(a)1審検察、弁護側、裁判長の見解比較注*11参照。母初代を、潜んでいたホテルで捕まえた時のことを瑠衣は「自ら尼崎に戻った」と証言したが、さすがにこの証言は検察が「不自然」と指摘している。

父谷本明が妻初代と娘まり子を逃がした時、瑠衣を逃がそうとしなかった。瑠衣には逃げる意思がないばかりか、逃げるのを知ればに告げ口し、逃げられなくなる恐れがあった。詳細は本シリーズ(その4-34)「(d)谷本瑠衣とのサイコパス融合拡大:平和時の融合拡大の貴重な例(ⅰ)瑠衣のサイコパス特性を示す具体例」参照。

以上を踏まえ、以下瑠衣裁判の内容からサイコパスの実態に迫る。

(a)検察、弁護側、裁判長の見解比較

鍵点

検察:求刑懲役30年

弁護:懲役15年相当

佐茂裁判長:判決懲役23年

サイコ特性

母初代を潜んでいたホテルで捕まえたのを「自ら尼崎に戻ったとする瑠衣の説明は不自然」で加害目的略取罪が成立する*1。「信じるあまりに言動をうのみにし、正当化した*2。姉まり子虐殺について「モニターでの監禁監視など、それぞれの犯行で重要な役割をした」「姉まり子は何の落ち度も無いのに全ての希望を奪われ、無念は計り知れない」「瑠衣なしでは犯行は成り立たない。3人に対する虐待は残酷で卑劣極まりない

最終弁論「いずれの事件もの発案で関与は補助的、瑠衣は犯行に不可欠なものではなかった。「規範意識が一般社会からかけ離れていたのは反社会的な価値観を有するマインドコントロールが原因*2

「親しい者同士の暴力を肯定するの価値観を受け入れ、虐待行為や死に抵抗感を抱かない異常な感覚をいや応なく身につけた」*2

「姉のまり子を5か月もの長期間にわたり劣悪な環境で監禁し、暴行を加えるなど人格を踏みにじり肉体的精神的に多大な苦しみを与えた」*3

饅頭

角田家での立場を維持するために同調して積極的に暴力をふるい虐待に関わった」*4

17歳で角田家に取り込まれたことで*5マインドコントロール下にあった」

「犯行加担の背景にの影響はあるが、自分の判断で追従した面も小さくない。役割は他の共犯者より大きい」*6と指摘。

殺意と動機

らの暴行や虐待などで「死に追い込む行為の危険性を認識していた」と強調して殺意を認定*7

殺意を認めるには相当の疑いが残る」「事件には関わったが、殺すつもりはなかった殺人罪は成立しない。「積極的に犯罪を行う動機がない*7と精紳鑑定結果などを使い従属的な立場を強調。共謀や殺意を否認

「著しい衰弱状態の被害者に虐待を続ければ、危険にさらされる認識があったのは明らかだ」と殺意を認定*7。罪全てでとの共謀を認定し、「被害者の人格を踏みにじり、多大な苦しみを与えており、違法性は極めて高い」と指摘。

酌量と判決

「3件の殺人罪は死刑や無期懲役相当」だが「17歳で角田家に取込まれており同情の余地がある」*5「瑠衣は捜査や裁判を通じては自分にとって不利になるような証言をするなど、真相解明に協力した」「捜査段階や公判で詳細を語り、真相解明に協力し、深く反省している」*8*9として有期刑上限懲役30年を求刑

3人に対する殺人罪の成立について、逮捕監禁致死罪の幇助などにとどまると主張、「瑠衣の関与はごく限られていた」と情状酌量を求め結審。懲役15年が相当

「3件の殺人罪で違法性が高く死刑も考えられる」一方で、の強い影響を認め、自分に不利なことを含め、全てを供述するなど真相究明に協力し、反省もしている*8*9、「犯行に果たした役割は角よりは明らかに小さい」として懲役23年

(b)筆者の見解:上記表の注で筆者の見解を記す

*1:初代は、娘まり子と瑠衣の2人とも約10ヵ月まえに結婚していることを聞かされれば、一緒に尼崎へ行くしかないと観念したであろうことが想像される。は初代の心理を読んで娘2人を利用したと考えられる。サイコパスは犠牲者に同情することはなく、そのため冷酷に犠牲者の心を読み、破壊することができるは取込期で、激しい暴力を潜ませ、初代に対し甘い言葉を使った。すなわち、外部からは初代は「自ら尼崎に戻った」ように見える状態だった。瑠衣は単純にはうそを言ってはいないということである。自ら戻ったように見えても、尼崎へ戻った後激しい暴力・虐待が行われたので加害目的略取であったことには変わりはない。まんじゅうサイコパスが起こす事件の難しいところの一つは犠牲者が自ら望んでいるように外部からは見えることである

*2:検察、弁護、裁判長それぞれ表現は異なるが同じ瑠衣のサイコパス特性を表面的に言っている。それぞれ誤った理解をしているのでサイコパスの理解のために下記表にまとめておく。

 

瑠衣のサイコ特性の表現

筆者の見解

検察

信じるあまりに言動をうのみにし、正当化した

瑠衣はを信じたわけでも、言動をうのみにしたわけでもない。の残虐行為にと同じようにドーパミンの快感を得たと考えられる。正当化したのでなく、サイコパス共鳴を起こした。瑠衣がを「お母さん」と慕い続けた理由もこのドーパミンの快感にあり、瑠衣はさらにを「サイコのサイコ崇拝」の対象とした。サイコパス共鳴と「サイコのサイコ崇拝」については下記、用語解説参照。

弁護

規範意識が一般社会からかけ離れていたのは、反社会的な価値観を有するマインドコントロールが原因

規範意識が一般社会からかけ離れていた」は正確でない。「規範意識」でなく、瑠衣は「残虐行為に対する感情」が健常者とかけ離れていた。「規範意識」が問題になるのは暴力団員など反社会性人格障害者である。サイコパスとは全く別の障害である。「反社会的な価値観」は反社会性人格障害者を言うことが多く、弁護側はサイコパスと反社会性人格障害者の価値観の違いが分かっていない。下記「健常者と反社会性人格障害者とサイコパスの価値観」参照。瑠衣が「一般社会からかけ離れた」原因を角のマインドコントロールとしたが、瑠衣は初めからサイコパス特性を持ち、「一般社会からかけ離れ」ていた。

裁判長

親しい者同士の暴力を肯定するの価値観を受け入れ、虐待行為や死に抵抗感を抱かない異常な感覚をいや応なく身につけた

「親しい者同士の暴力を肯定する価値観」は消極的すぎて正確ではない。「親しい者同士の暴力を強制する価値観」が実態に近い。は「親しい者同士の暴力」を衣食住・排泄・姿勢など生存欲求のすべてを非人間的にして破壊し、強制する。すなわち「肯定する」は「強制する」が相応しい。

「虐待行為や死に抵抗感を抱かない」も消極的すぎて正確でない。「虐待行為や死を求める強い衝動がある」が実態に近い。すなわち「抵抗感を抱かない」は「求める強い衝動がある」が相応しい。瑠衣は「異常な感覚をいや応なく身につけた」のではなく、初めから身につけていた裁判長はのサイコパス特性をごく表面的にしか把握できていない。

用語解説:①サイコパス共鳴(サイコ共鳴):サイコパスの残虐行為を見たり聞いたりした他のサイコパスがドーパミンの快感を味わう現象。残虐行為を介して複数のサイコパスがドーパミンの快感を共有すること。サイコ共鳴を健常者は起こさない。逆に健常者はドーパミンが減少し残虐行為を嫌悪する。サイコ融合拡大は組織、サイコ共鳴は個人について言っている。サイコ融合拡大は、サイコ共鳴を基礎としたサイコ同士の組織拡大=まんじゅう構造の拡大、のことである。

②サイコパス残虐崇拝(サイコ残虐崇拝):サイコパスは残虐行為でドーパミンの快感を与えてくれるあらゆる人・物・事を崇拝サイコ残虐崇拝)する。サイコ共鳴がさらに強くなり、崇拝する状態になったものある。崇拝対象が人の場合は、自分では何らかの制限で実行できない残虐行為を、実行している、あるいは実行したサイコパスを崇拝する。すなわち、自分より残虐なサイコパスに対する崇拝「サイコのサイコ崇拝」になる。瑠衣がを「お母さん」と慕い続けたのは「サイコのサイコ崇拝」と考えることができる。残虐行為が戦争の場合には「サイコの戦争崇拝」になる。ドイツのナチスや旧日本軍の残虐行為を今でも崇拝する人がいるが、サイコ残虐崇拝を起こしていると考えられる。健常者が疑似サイコ後期に至り逆転快ドーパミンを味わい「サイコパス崇拝」を起こすが、これはサイコパスがサイコパスを崇拝する「サイコのサイコ崇拝」と全く同じ脳内状態で違いは観察できないと思われる。疑似サイコ後期のサイコパス崇拝については本シリーズ(その4-5)「(d)(ⅰ)サイコパス化過程の4段階の表の注*1:疑似サイコパスのサイコパス崇拝」参照。

③サイコパスと健常者と反社会性人格障害者の価値観:ここでは価値観を「偏桃体が中心となって脳内に形成される、自分に好ましいことかどうか、大事なことかどうかを判断する基準」とする。価値観は欲求構造、精神構造と言い換えることができる。

サイコパスの価値観逆転欲求満足を求める価値観である。理由なく人を殺したい、人が苦しむ姿を見たいなどの逆転欲求の価値観である。

健常者の価値観健康な欲求満足を求める価値観である。国や地域や宗教や歴史や家族の違いなどで価値観に多様な面を持つが、その基本的な構造には違いがない。健常者の価値観の基本構造(欲求構造、精神構造)については、後の項「経営とサイコパス」で具体的に述べる。健常者に理由なく人を殺したい、人が苦しむ姿を見たいという価値観はない。

反社会性人格障害者の価値観:健常者の価値観のうち社会秩序と他者の苦痛を考慮する部分が欠損した価値観。暴力団員など犯罪を繰り返す人に見られる価値観である。サイコパスと反社会性人格障害との違いは本シリーズ(その3)「1.15(4)4)(D)サイコパス、反社会性人格障害、自閉症の大脳生理学的違いのまとめ」参照。

*3:なぜ瑠衣は姉まり子に死に至る残虐な行為をするのか?*2で述べたように裁判長は表面的な説明で、とても納得できるような説明になっていない。「サイコパス」を理解して初めて残虐行為の動機が分かる。

*4:瑠衣が虐待犠牲者を虐待するのは「角田家の立場を維持するため」ではないサイコパス特性を持つ瑠衣虐待そのものに惹きつけられて「積極的に暴力をふるい虐待に関わった」。その結果、が自分と同じ感覚を持つとして優遇(サイコパス融合拡大)した。立場を維持するために暴力をふるったのではなく、「に同調して積極的に暴力をふるった」ので立場が維持され、優位な位置に押し上げられた。検察の主張は逆立ちしている。

*5:弁護側や検察が17歳であることに同情の余地があるというのは誤り。17歳の瑠衣は初めから虐待する側に回っており、同情の余地はない。いじめ集団の中心には17歳以下がたくさんいる。同情は年齢で行うのでない。少年法の保護は、「同情」とは異なる視点。同情は本人の意に即さない逆境に晒された場合が相応しい。瑠衣は初めから本人の意に即しているので同情の余地はない。少年法の保護の対象にはなる。

*6:裁判長は瑠衣が角に「自分の判断で追従」していること、すなわちサイコ融合拡大の一面を観察した。

*7:検察と裁判長は、虐待を続ければ死ぬことが分かっていた、ので殺意があり殺人罪が適用できるとした。重要なことは、なぜ虐待を続けるのかの動機である、すなわち殺意はなぜ生じているかである。検察と裁判長ともにこの動機の説明はない。弁護側はこの点を突いて「犯罪を行う動機がない」と主張した。現在の裁判では犯罪結果が重要で、動機は補足的なので弁護側の主張はほぼ無視された。サイコパスの残虐行為に健常者が理解できる動機はない。殺したいから殺す、苦しめたいから苦しめる以上の動機はない。カラ理由(表面的で深みのない理由)はある。瑠衣の精神鑑定、および裁判長と精神鑑定人とのやり取りは本シリーズ(その4-34)「(d)谷本瑠衣とのサイコパス融合拡大:平和時の融合拡大の貴重な例。(ⅲ)瑠衣の精神鑑定」参照。

*8サイコパスは自分の残虐行為を平然と言ってのける。残虐と言う感覚がないためである。瑠衣の自分に不利な証言、例えば母初代を水入りのペットボトルで殴り飛ばし、腹を蹴り上げたことをひょうひょうと証言したことなど、自分の残虐行為を述べたことである。これは例13北九州監禁事件の松永が通電などの虐待を「雷親父のしつけ」と言うのと同じで、悪いことをした実感がないためである。悪いことをしたと思うのは相手の苦痛を理解した時に生じるので、相手の苦痛を理解できないサイコパスは、虐待を悪いことと感じることができないために無頓着に話す。例13北九州監禁殺人事件の松永は、なぜ犠牲者を激しく虐待するのかの問いに「しつけの意味があり教師のげんこつと同じ」と平然と答えている。本シリーズ(4-9)「(M)松永の無罪弁明にみるサイコパス裁判と科学的犯罪心理学の課題」参照。

*9:瑠衣は最終陳述で「被害者や遺族が苦しんでいる気持ちの分だけ刑を受けたい」「被害者や遺族の苦しみに沿う、重みのある刑を受けたい」と陳述した。これは健常者の反省に相当するのか、刑罰が苦痛でないサイコパスの特徴が出ているのか、反省していると見せて刑を軽くしようとしているのか、模範囚としてじっと釈放を待つサイコパスの特徴が出ているのか、今のところ筆者は判断する情報を持っていない。健常者は「そのまま素直に反省していると受け取りたい」のであるが、サイコパスは健常者の心情を読み取って裏をかくことがあるので注意が必要。

(その4-49)へ続く。

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映画『凶悪』残虐性シリーズ(その4-47)尼崎監禁殺人(35)裁判6

2016-07-09 23:00:20 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

(その4-46)の続き。

(b)筆者の見解:(その4-46)の上記表の注で筆者の見解を記す

*1:検察の主張内容は、マサまんじゅう構造の「暴力装置」疑似サイコ後期に至った様子のありのままを述べていると言える。「暴力装置」はの「指示通り」「意向に沿い」「暴力や虐待などを担当し」「中核的な役割」をする。分身になっているのでに次ぐ重い責任があるように見える

*2マサは裁判までにはマインドコントロールの本を読むなどで完全に呪縛解放しており、なぜ自分が「暴力装置」になったか、によりサイコ化される自分を冷静に振り返って、その原因を掴んだマサは懸命にの恐ろしさや、マインドコントロールされたことを主張したが、「卑怯で反省していない」と突き放された。筆者はマサ真実を語っていると思うが、検察にも平島裁判長にも全く理解されることはなかった。裁判でもが真実を話しても検察が「不合理な弁解に終始し、反省もない」としたのと同じ状態。背景に瑠衣証言があることが共通する。

*3:弁護側の「指示されたことをしたにすぎない」「進んで加担していない」という主張は、マサ疑似サイコ後期になっており、自ら進んで虐待をするようになっているので、現実と異なる誤った主張になっている。このことを裁判長に見抜かれ「積極的に関与していた」「指示のままに従っていた他の共犯者とは質的に違う」「進んで『汚れ役』を果たしていた」と反論され 弁護側主張は総崩れの状態で、マサを支えることができなかった。

*4:平島裁判長の「絶対的権力で忠誠を誓わせる」は正確でない。「絶対的権力」の実態は「暴力装置」「密告システム」を持つ「まんじゅう構造にあるマサが最初にに取り込まれたのも「暴力団風の男たちと父皆吉長男」が「暴力装置」としてマサ宅に乗り込んできたため。「絶対的権力」は「暴力装置に支えられている

本シリーズでいう暴力装置とは:広い概念で、サイコ化した人や金銭で動く暴力団員など人を含み、武器や虐待するための道具、監禁小屋など逆転欲求満足のための「サイコパスと犠牲者の間に介在する媒介物」のことである。マササイコ化して暴力装置になった。暴力装置については本シリーズ(その4-5)「(f)サイコパスまんじゅうの構造」参照。

*5:検察はピラミッド型の疑似家族とまんじゅう構造の表面的な理解ができているが、内部の暴力装置、密告システムで健常者がサイコ化していくメカニズムの理解はできていない。平島裁判長も特殊な共同体と検察の理解を追認した。本裁判では弁護側総崩れにより、裁判長はほとんどの検察の主張を追認した。

*6:「の手足となったマサがいなければ、一連の犯行は不可能だった」は誤りマサと知り合う前に橋本家母や猪俣家母など少なくても4人を虐殺している。これらは事件化せず裁判で解明されていないだけで、マサいなくても犯行は可能である証拠である。マサを「暴力装置」に置き換えて「の手足となる暴力装置がいなければ、一連の犯行は不可能だった」が正しい。橋本家や猪俣家では親族がサイコ化し暴力装置となって母親などを虐殺した。サイコ化した人であればだれでも暴力装置になるマサである必要はない。例えば川村家では川村博之がサイコ化し暴力装置になった。サイコ化した人がいない時にはは金銭で暴力団員と思われる男たち、女たちを暴力装置とした。

橋本家については本シリーズ(その4-23)~(その4-25)、猪俣家については(その4-26)~(その4-27)参照

*7:3人の虐殺は「サイコパスの特徴行動区分」がよく表れている。久芳はサイコ寄生前期(金品を奪う略奪期)の虐殺で、まり子と次郎はサイコ寄生後期(心、肉体を破壊する残虐期)の虐殺。久芳は保険金目的という健常者に理解し易い動機を含むが、同時にマサなどに殺させる「健常者に健常者を殺させる」という互いの心の交流を破壊する逆転欲求満足を得ている。そのことは殺害時に万座毛の現場には行かず、マサらだけで殺害させたことで分かる。が現場に行かないのは、殺害の責任逃れが目的ではないので、健常者の論理で考えてはいけない。サイコパスの特徴行動区分については本シリーズ(その4-35)「(J-1)(a)サイコサイクルをサイコ寄生区分で分析する」参照

*8:まり子と次郎の虐殺は虐殺そのものが目的なので、健常者が考える動機説明ができない。そのために検察は「非道」「悲惨な犯行」と残虐な事実を述べるだけでしかない。なぜ「悲惨な犯行」をするか健常者は自分の延長上では理解できない。従来はサイコパス犯罪を「強い恨みによる犯行」として健常者の延長上で把握して、調書などの「動機欄」を埋めていたが、の事件では、多くの証言があり、どこを探しても「強い恨み」の原因が見つからず、検察は「強い恨みによる犯行」と言う動機でごまかすことができず、残虐な結果だけを言う。動機はサイコパスの逆転欲求を理解して始めて明らかになる。

*9:まんじゅう構造に取込まれた犠牲者は外部からは常にサイコパスと共謀しているように見える。実態は共謀とは無縁の完全な従属である。本シリーズ(その4-46)「(f)の控訴審」の*5、及び(その4-44) 「(K-5-1)裁判(b)筆者見解*11参照。いじめ集団に巻き込まれた子供たちは全員が共謀しているように見えるのと類似。

*10:弁護側の「マサ殺意はなかった」は正確でないの「殺意の代行」の概念を主張しなければ、マサを救うことはできない。弁護側は「殺意がないのになぜ殺したか」の説明がつかずに「死ぬとは思わなかった」など無理な論陣を張ったため、「はよせな」と声をかけて久芳の飛び降りを強要した事実を突きつけられて論理崩壊をして、平島裁判長は殺意を認定した。まり子についても「虐待も死に直結しなかった」と事実を踏まえない主張で裁判長に一蹴された。「殺意の代行」については本シリーズ(その45)「(K-5-3)裁判」の始の殺意の代行の説明部分参照。

*11:谷本初代の虐殺は娘のまり子と瑠衣が行った可能性が大きい。は橋本家以来一貫して子供たちに母親を虐殺させている初代の虐殺も例外でないと考えるのが妥当。当時逃げたまり子が捕まっており、瑠衣と共にの命令で市役所の住民票窓口に何度も足を運んで、初代が潜んで働いていたホテルを探し出した。ホテルで初代を捕まえる時にもまり子と瑠衣がホテルフロントで娘ですと初代を呼び出している。マサが初代の「頭を揺さぶっていた」と言うのは瑠衣証言であり、瑠衣はマサを陥れた可能性がある。マサは「頭を揺さぶっていない」「自分は、暴力は振るっていない」と主張したが認められなかった。「揺さぶった」のはマサでなく瑠衣ではないかと筆者は考えている。初代は激しく揺さぶられたことが原因と思われる脳障害で入院し、死亡した。マサが否定するのは呪縛解放忘却で忘れた可能性もなくはない。瑠衣がサイコパス特性を持ち、うそを言う可能性が大きいことは本シリーズ(その4-45)(K-5-3)裁判(b)筆者見解*6 *7、及び(その4-44)(K-5-1)裁判(b)筆者見解*3、及び本シリーズ(その4-34)「(d)(ⅲ)瑠衣の精神鑑定」参照。裁判での証言が瑠衣証言で否定されたと同様のことがマサ裁判でも起きている。

*12:「ほかの被告たちが口をそろえて、の存在の大きさを強調する」ことを、死刑を無期に減刑する理由にした。裁判長たるものほかの被告がどう言うかでなく、事実認識に基づいて判決をしなければならない。弁護側が論理総崩れと言うこともあると思うが、平島裁判長は主体性のない、検察側の追認に終始している判決に思える。言葉も検察が使っている通りが散見される、例えば「死刑を選択することは躊躇する」。検察がサイコ化事件の本質を見ていないので、裁判長も見ていない。

(c)まり子の父親谷本明さんのマサ裁判コメントに対する筆者の見解

文字数減のために谷本明さんを明と略し敬称も略していることがありますのでご了承ください。 

まり子の父谷本明さんのマサ裁判コメント

筆者の見解

の指示をその手足となって実行するマサいなければ、一連の犯行の実現は不可能だった」と判決が認定したことは、極めて正当な判断であったと思います。

正当な判断ではない。前項(b)筆者の見解注*5参照

長期間にわたる虐待の末に、人間としての誇りを奪われ、命までも奪われた娘(まり子)や妻(初代)の苦しみ、無念さを思うと、無期懲役という判決でも軽すぎる命をもって亡くなった方々に償うべきだという気持ちがわき上がってきます。「マサはまり子と同じ苦しみを受けるべき。極刑以外にない

サイコパス犯罪が残虐なため死刑を求める一般傾向。(K-5-3)裁判の「(c)まり子の父親谷本明さんの裁判コメントに対する筆者の見解」表の上方蘭参照

マサは、『全ての指示でやった、が怖かった』などと弁解していましたが、マサの果たした役割の大きさからすると、全てをせいにするマサ弁解は、卑怯だと思います。私は、決してマサ許すことはできません

マサにサイコ化されたことを理解し正直に話したことがせいにして、卑怯だと映る。前項(b)筆者の見解注*2参照

マサは、と角田家の人間による一連の犯行において、積極的に暴力を振るうなど、主体的な役割を担っていました。マサの関与がなければ、は本件一連の犯行をなし得なかったのですから、マサ同罪です。

積極的、主体的に残虐行為をするのはマサ疑似サイコ後期に至った証拠。動機解明が裁判にはないマサ自身に動機が見つからないのがサイコ化事件の本質。前項(b)筆者の見解注*8参照。同罪に見えるのは前項(b)筆者の見解注*9参照。

 (d)毎日新聞2015/11/13がうまくまとめているので筆者の見解と比較する。 

毎日新聞2015/11/13

筆者の見解

判決は「(マサは)とは同列には論じられない」と役割の違いに言及した。

判決はマサが同列ではないことを把握しながら、サイコ化され疑似サイコ後期に至ってしまったことの理解はない

一連の公判では、が事件に至った真の動機に迫るアプローチはなく不在の裁判の限界も示した。(「生きていれば判決内容も違ったものになったかもしれない」と述べる裁判員もいた)

生きていたとしても、なぜ残虐行為をするのか本人もわからないので動機は把握できない。例13北九州監禁殺人事件の松永は生きているが証言から真の動機は分からないのと同様

車座になった家族間での話し合いをさせ、暴行を強要し、告げ口密告)をさせる--。公判で明らかになったのはが集団生活をする「疑似家族」のトップとして暴力や甘言を操り、他人を支配していった構図だ。

毎日新聞はまんじゅう構造の要点をうまくまとめている。告げ口密告システムはサイコパスを理解する重要な概念なので次の項(e)「国家の密告システム」はまんじゅう構造の特徴と酷似」で説明する。

 (e)「国家の密告システム」はまんじゅう構造の特徴と酷似も例13北九州監禁殺人事件の松永もまんじゅう構造内部に告げ口(密告)システムを作っている。告げ口(密告)システムの基本概念は本シリーズ(その4-5)「(f)サイコパスまんじゅうの構造」参照。密告内容を理由(カラ理由)として犠牲者に虐待を加える。親子間でも密告させ、親子の心の交流を破壊する。密告システムの本質は心の交流を破壊するときに生ずる報酬系ドーパミンの快感を得るサイコパスの逆転欲求にある。【旧ソ連や旧東欧社会主義国や太平洋戦争時の日本軍国主義国内での密告システムは、サイコパスに社会が汚染された負の側面と言える。「頭がよく」「便がたつ」サイコパス集団はついに旧ソ連や日本社会を融合拡大や敵対共鳴で取り込んだと筆者は考えている。サイコパスの融合拡大、敵対共鳴は国家形態によらず資本主義国でも、軍事独裁国家でも、社会主義国でも広がり得る。サイコパスの融合拡大と敵対共鳴については本シリーズ(その4-5)「(h)サイコパスまんじゅう拡大の特徴」参照。密告システムは虐待・虐殺を伴い、一般的に言われる「政治指導者の疑心暗鬼というような、健常者の延長上での理解できる範囲を遥かに超えた現実があり、サイコパスの影響が強く示唆される。密告システムの形成はその集団がサイコパスに取込まれたことを意味する。まんじゅうサイコパスは個人も集団も取り込む。集団は家族や近所付き合いのような小集団から、企業や自治体や軍隊のような大集団まで取り込む。密告システムは秘密警察などに入り込んだサイコパスが「知っていて黙っていた共謀罪」として機能させ、でっち上げ事件で、盛んに密告させ合い、無実の人を捕まえて虐待・虐殺した。密告システムは基本的人権や表現の自由などの民主主義諸原理の対極にあり、残虐行為や戦争を望むサイコパスが好んで積極的に作り上げるサイコパスまんじゅう構造の一部である。太平洋戦争の日本軍国主義社会や旧ソ連の密告システムの教訓は民主主義諸原理を守ることが密告システム対策、すなわちサイコパス対策の根幹であること示している。逆に言えばサイコパス対策により民主主義諸原理を守ることになる】。後の項「戦時下のサイコパスの特徴行動」で再度述べる。サイコパスまんじゅう構造と健常者の組織の違いは後の項「経営とサイコパス」で具体的に説明する。 

(f)裁判を傍聴してきた豊田正義さん(毎日新聞2015/11/13記事)と筆者の見解:毎日新聞記事『北九州市で2002年に発覚した一家7人の連続監禁殺人事件(本シリーズの例13)でノンフィクション小説を執筆し、今回の一連の裁判も傍聴してきたジャーナリストの豊田正義さんは「いつ立場が入れ替わり、虐待される側になるか分からない。そうやって、家族間を疑心暗鬼にしていくところは両事件とも酷似している」と語る』。筆者は、豊田さんは健常者の延長上でを理解しようとして誤ったところがあると思う。裁判の全部を傍聴したからと言って事件の本質が理解できるわけではない。下記表はそのことを示すために作成した。 

豊田正義さんの見解

筆者の見解

一連の公判で検察側は「主導し、他の被告の役割は従属的」との見立てで立証した。そのため、がどのような言動をし、親族らがその意向にどう対処したかについては詳細に検討されたが、内面に肉薄する場面はなかった

「従属」により親族がどのようにサイコ化していくかの検討はない。本質が抜け落ちた空っぽの裁判になっている。の内面だけでなく、親族らの内面に肉薄する場面はなかった。残虐な結果だけを見て、原因を見ていない裁判。

豊田さんは「北九州事件を主導し死刑が確定した男にはカネという動機が見えたが、動機は結局、明らかにならなかった」と振り返る。

北九州事件の松永もカネだけが動機ではない。サイコ寄生前期は金銭の略奪が目立つが、寄生後期に入ると残虐行為だけになる。も全く松永と同様である。

豊田さんは「マサの虐待はひどいものだったが、殺意の部分では相当の開きとの間にあったと感じた」ともいい、判決は妥当との見方だ。

判決は妥当でない。殺意は「相当に開き」でなく、角の「殺意の代行」として、角の誰でもいいから虐殺したいという逆転欲求の代行として把握しなければならない

が20代の時にに「うちは成績も悪いし顔も不細工で、自分の子はほしくない。子供を譲って」と話したということから、「家族を作りたかったのかもしれない」と述べた

の「…子供を譲って」と言うのは、から子供を奪うカラ理由でしかない。カラ理由については本シリーズ(その4-4)「(9) (d)虐待行為にどうでもいい理由を必要とする」参照。ほとんどの健康な女性は、成績や容姿で自分の子供を欲しくないと思うことはないし、他人の子供を奪いたいとは思わない。の中学時代の写真を見る限り容姿が悪いとは思えないし、が特別にいいというわけでもなさそうで、カラ理由が妥当。

家族を作りたかったのではなく、逆転欲求を満たすまんじゅう構造をつくりたかった。裁判の「疑似家族の表現は誤解を招く。相互に愛情がある家族関係は全くないばかりでなく、心の交流が破壊されたロボットの関係で、密告システムと虐待する関係になっている。マサの「誰も信じられない、異様な世界だった」が言い当てている。

 (g)マサ2審控訴審:控訴審大阪高裁。笹野明義裁判長。2017/3/17判決、控訴棄却。1審と同じ無期懲役。弁護側不服2017年6月現在上告中。

 控訴審の検察、弁護側、裁判長の見解比較要点は下記表の通り。筆者の見解は注で述べる。 

検察

弁護:一審判決は「量刑不当」

笹野裁判長:控訴棄却

控訴を棄却するよう主張

弁護側は臨床心理士の証言などから「に取り込まれた」「従属的な立場で、殺意はなかった*1と主張。

「虐待の過程で生命の危険を認識できた」と殺意を認定*1

「虐待方法を提案するなどして自ら角田家での生活を選んでおり、みずからの意思に基づいて犯行に積極的に関与した。ほかの共犯者と比べても関与の程度は強かった」他の被告と比べて「量刑が不当に重いとは言えない」「無期懲役はやむを得ない」。一審判決に「誤りはない」

谷本初代への傷害致死罪については「暴行していない*2と否認し無罪を主張

久芳は自殺*3で自殺幇助、他は監禁致死などにとどまる。

久芳がに逆らえなかった特殊な人間関係、共犯者の証言を踏まえ、自殺ではないとした*3

 筆者の見解

 注*1:臨床心理士の診断結果が裁判長に無視されるのは本シリーズ(4-44)「(K-5-1)裁判(⒝)筆者見解注*6」で精神鑑定医の診断が無視されるのと同様でサイコパス犯罪に対する従来の精神鑑定がいかに無力であるかを示す例になる。 

*2:初代へ「暴行していない」ことは1審から一貫してマサが主張。瑠衣証言で陥れられた可能性がある。瑠衣証言については本シリーズ(4-44)「(K-5-1)優裁判⒝筆者見解注*3」及び(K-5-4)マサ裁判⒝筆者の見解注*11参照 

*3:弁護側の「久芳は自殺」はサイコパスが虐待犠牲者を「自殺させる」行為で、自殺ではないので、検察に論破されてしまう。サイコ化事件の本質に入り込んで弁護しないとサイコ化犠牲者マサを救うことはできない。サイコパスが虐待犠牲者を自殺させる行為については本シリーズ(4-44)「(K-5-1)裁判⒝筆者見解注*10」参照

裁判員裁判の原点映画「12人の怒れる男たち」(米国、1959年日本公開。原題:12 Angry Men) 

日本の裁判員制度は職業裁判官が加わるが、米国の陪審員制度は一般人だけのところが異なる。一般人が犯罪を判断する点では共通。の6裁判はいずれも裁判員裁判。ストーリ:父親殺しで逮捕されたスラムに住む18歳の少年を一般人12人が有罪か無罪か判断する。有罪になれば死刑。判断は全員一致が必要。目撃証言や凶器のナイフが特定され有罪は明らか、と直ちに結論に至りそうになった時、1人だけ「人の命を5分で決めて、もし間違っていたら?1時間話そう」と言だす。他の人は「大した理由がなくても奴らは人を殺す。気にするような人種じゃない。奴らは根っからのクズなんだ」と1時間話そうと言い出した人に激しい怒りをぶつける。話し合っているうちに目撃証言も凶器も先入観のもので曖昧であることが徐々に明らかになってくる。

 筆者は、映画の題名は、有罪は分かり切っているじゃないか、話し合おうなんて何を言い出すんだと怒る陪審員たちから付けられたと思う。サイコパスの犯罪は残虐なために、何を躊躇しているんだ、死刑が当然じゃないかと、怒れる遺族たちに重なるマサの裁判では、マサが龍の入れ墨をしていることで凶暴で残虐な人と先入観を持たれ、瑠衣の陥れるような証言もあって不利な判決へつながった。仲島裁判の裁判員も仲島を「流されやすい人」と人柄の先入観を持ち、にサイコ化されてしまったことは見落している。仲島裁判の裁判員は角に取り込まれれば簡単にサイコ化したに違いない。に取り込まれればどのように頑強な人でも屈服させられる。マサが屈服させられたように。下の画像左は議論している場面、左から2番目に「1時間話そう」と言い出した名優ヘンリー・フォンダがいる。ベルリン国際映画祭の金熊賞を取った作品。マサ裁判の裁判員にヘンリー・フォンダのような人はいなかったと思われる。画像中は2008年日本公開のロシア版のリメイクの議論場面。ロシア版は第64回ヴェネツィア国際映画祭特別銀獅子賞を取った。映画だけでなくTVや演劇で何回もリメイクされている。画像右は演劇で2009年に俳優座劇場プロデュース『 十二人の怒れる男たち 』の場面。

 画像出典左:12 Angry Men http://clusterwms-12angrymen.wikispaces.com/ (閲覧2017/7/2)。画像出典中:CinemaCafe.net『12人の怒れる男』http://www.cinemacafe.net/movies/cgi/21081/ (閲覧2017/7/2)。画像出典右:http://www.kpac.or.jp/event/detail_139.html (閲覧2017/7/2)。ストーリなどの情報元:ウィキペディア『 十二人の怒れる男たち』及び、お薦め映画 FAVORITE MOVIES(5)「12人の怒れる男」http://www.geocities.co.jp/Playtown/1541/angry-men.html (閲覧2017/7/1)

(その4-48)へ続く。

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