山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

失われた蜂の舞う草  御坂山系

2014年07月07日 | 番外編
 昨年花見隊隊員が発見した御坂山系のジガバチソウは、今年のブログでも開花した花が掲載されている。私も昨年探しに出かけたが、既に花が終わった後で、葉だけ確認してきた。そろそろ満開の頃だろう。どんな花が咲いてくれるのか楽しみにしていた。

 盛岡帰りのこの日、夜のうちに自宅に到着しているはずだったのだが、未明1時過ぎ、あまりの眠さに中央道藤野サービスエリアで仮眠をとったが、眠さがとれず車の運転に支障がありそうだったので、結局朝7時ごろまで車内でウトウトしながら夜を明かしてしまう。運転を再開すると、雲が晴れて青空が広がり出した。これならばきっと・・・富士山も姿を現すだろう。あの花と一緒に富士山を眺めて・・・という目論見で、眠い体をたたき起こして御坂山塊に車を走らせる。晴れた日曜日だけあって、この日は登山者が多そうだ。


    アヤメが咲く。


    トンボソウかキソチドリだと思うのだが、昨年開花したところを見ても花の名前はわからずじまい。


    登山道を少し外れて林の中に踏み込むと、イチヤクソウの葉がいっぱい。

 目立たないように林の中をこっそりと歩いて昨年葉を見つけた場所に行ってみると、一株も見つけられない。場所を間違えたのか?ひとまずは富士山の見える場所まで行って引き返して再び探すが・・・場所が間違っているとは思えない。しかし、少なくとも7~8株はあったはずの蜂の舞う草は全く見つからない。ようやく見つけた1株はまだ蕾で、これ以外には見つけることができなかった。


    青空に富士山が姿を現した。梅雨のこの季節にしては良く見えるほうだろう。


    昨年見つけた場所を念入りに探すが、発見したのは小さなこの株1株のみ。


    まだ蕾。


    盗掘の跡か?穴が掘られたように見えなくも無い。


    こちらの花は健在。

 自宅に帰って花見隊のブログを見ると、この前日に花が咲いているのを確認したばかりだった。どうやら別の場所のようだ。私が発見したこの場所は登山道から少し離れており、人目に付きにくい場所にある。盗掘らしき痕跡はは既に葉でおおわれており、もしやられているとしたらかなり以前に盗まれたものだろう。鹿の食害にしてはその周辺には食害の痕跡が少なく。盗掘の可能性が高いだろうと思っている。

 いつかはこういう目に会ってしまうのではないかとブログを書きながら恐れていたのだが、遂に起こってしまったという気がして残念でならない。山名は伏せて、花の名前も検索でひっかからないように工夫をしなければならないのではないかと痛切に感じさせられた。いつ絶えるやも知れない稀少な花だけに、咲いているうちにできるだけ多くの人に見てもらいたいという思いとは裏腹に、盗掘という卑劣な行為に怯えて窮屈な記事を書かなければならないのは悲しい。
コメント (4)
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梅雨に咲く白い小桜、ヒナザクラ 栗駒山  平成26年6月28日

2014年07月07日 | 圏外編
 盛岡2泊目の朝もまたまた早起きできず、起床したのは7時。天気予報の通り、曇り空が広がり、いつ降り出してもおかしくないような空だ。高速道路を南下して一ノ関で下りた頃にはザッと雨が降り出した。間もなく止んだが、果たしてこの天気で登れるものかどうか? 午後にはもっと天気が悪くなる予報だ。行くか、このまま甲府まで帰るかどうか、迷ったがひとまずは登山口の栗駒山荘まで行ってみることにした。時折雨が混じる中を、須川温泉に到着したのは10時半を過ぎていた。

 相変わらずのどんよりとした空、山の上は雲が巻いていて、どこが山頂なのかわからない。登って行く人たちの姿も見えるし、さほど難しい山でも無いので登ってみることにした。今回の目的は山頂では無くて途中に咲いているであろうヒナザクラという白いサクラソウ属の花だ。前日早池峰山で会えなかったヒメコザクラはこの花の蛇紋岩土の変性種と思われる。東北の山ではヒナザクラはさほど珍しいものでは無いようだが、ヤマケイの高山植物図鑑に載っている朝日岳の群落が素晴らしく、是非見てみたいと思っていた花である。

 11時、出発。素直に他の人たちが登って行く登山道を行けば良いものを、人の少なそうなコースを選んだところ、ルートを間違えたようで途中で道が無くなってしまっていた。取水管ホースが通っているところをみると、これはどうやら取水口に行く道らしい。途中で向こう側の禿げ山の上に人がいるのが見えたのでおそらくそちらが正規の登山道だろう。途中から道無き斜面を適当に登ってそちらに行ってみると、登山道を示す棒が立っていた。


    須川温泉。ここは岩手県と秋田県の県境。


    小川を渡ってその先までは道があったが、途中から道は消失。中央に見える禿げた山の上に人の姿が見えた。


    咲き残ったミズバショウの咲く湿原が脇にあった。向こう側にある土の露出した場所にも行ってみたが道は見つからず。


    イワイチョウとハクサンチドリが咲く草地で道が消失。左下に見えた沢を登らないとこの先には進めない。


    戻ってウラジロヨウラクの咲く斜面を登って禿げた山の上に出る。


    禿げた山の上。(おそらくは硫黄山)


    その先には登山道を示す棒が立ち、案内標もある。

 樹林帯の中を抜けると硫黄の臭いがする広場に出た。そのあたりにはイワカガミがたくさん咲いていた。さらに進むと広大な湿原に至り、木道が整備されていた。


    道脇に咲くイワカガミ


    ミネズオウ


    賽ノ河原。硫黄の臭いがする。


    イワカガミと賽ノ河原


    木道が整備された湿原。


    イワカガミがたくさん


    ワタスゲ


    イワイチョウとウラジロヨウラクツツジ


    広大な湿原 名残ヶ原

 この道間違えで1時間ほど時間を消費してしまう。下山してくる人たちと続々とすれ違うが、この時間から登って行く人の姿はあまり見かけない。空模様もますます悪くなってきた。


    地獄谷付近。さらに硫黄の臭いが強い。


    地獄谷を見下ろす。


    人の休憩している向こう側が昭和湖。


    青白い神秘的な水を貯える昭和湖。

 昭和湖のほとりで休憩し、昼食をとる。時間は午後1時20分、山頂までは十分に行ける時間だが、天候が心配だ。やがて小雨が降り出し、この先でカッパを着用する。木の階段道を登って行くと、いよいよ本降りの雨となってきて、風も強まって来た。お目当てのヒナザクラは昭文社の地図では向こう側の秣岳(まぐさだけ)側に記されているが、とても行けそうに無い。雨の中、山頂まで行くかどうするか?迷いながら歩いていると右側の土の斜面の白い花が目についた。近付いてみると・・・これは会いたかったヒナザクラではないか。三脚を出して撮影を試みるが、雨でレンズが濡れるうえに結露がおこり、さらに風で揺れてなかなか撮影できない。なんとか撮って先に進むと、その先の登山道脇にもたくさん咲いていてくれた。小降りになったところで存分に撮影させてもらって山頂に向かう。


    登山道脇の斜面に咲いていたヒナザクラ。今回の一番の目的の花。


    ヒナザクラ群生。しかし、雨でいまいち撮影できず。


    その先にもたくさん咲いていた。


    ヒナザクラ群生


    可愛らしい花、ヒナザクラ。

 再び雨足が強くなった中を登って行くと、稜線に抜けた天狗平というところで強烈な風と横殴りの雨に見舞われる。山頂まであと20分だが、さすがにこうなると登る気も失せる。お目当てのヒナザクラには出会えたことだし、ここは山頂はあきらめて引き返すことにした。


    強烈な風と横殴りの雨に見舞われた天狗平。ここで引き返す。

 名残ヶ原まで下りると雨は小降りになり風も止んでいた。振り返って見る栗駒山山頂方面は真っ黒な雲におおわれていた。おそらく上はまだ強烈な雨と風が吹いているのだろう。湿原の景色を楽しみながらゆっくりと下山した。

 もっと凄いお花畑が広がる山を想像していた栗駒山は、想定とは違って火山の山だった。硫黄の臭いがする砂礫の近くに湿原が広がる光景は少し奇異に感じる。標高差は500mほどのコース整備が行き届いた歩き易い山なので、今回は山頂を踏めなかったがまた立ち寄る機会があるだろう。

 (栗駒山荘のお風呂に入って雨で冷えた体を温め、汗を流して長い帰路についた。順調に行けば深夜2時頃に自宅到着のはずだったが、あまりに眠く、中央道藤野サービスエリアまで来てひと眠りして、結局はそこで夜を明かすことになってしまった。雨に打たれた Canon Eos7D は故障して電源が入らなくなってしまった。)

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固有種咲く早池峰山(後編)  平成26年6月27日

2014年07月07日 | 日本百名山
 12時少し過ぎた頃に早池峰山山頂に到着すると、10人ほどの登山者が食事休憩中だった。途中でかなりの人に追い抜かれたので、多くの人たちは既に下山して行ったと思われる。裏側(北側)に行くと、そこには大岩のゴロゴロした間にお花畑が広がっていた。そちら側は休憩している人は一人だけ、登りながら途中で花談義して一緒だった人だった。盛岡在住の方で、この地域の山や花情報に詳しく、岩手山のコマクサが素晴らしいこと、秋田駒ケ岳の黄色いスミレがたくさん咲くことなど、いろいろ情報をいただいた。


    早池峰山山頂と避難小屋(中央の赤い屋根の建物)。



    山頂裏側。露出した岩の間にお花畑が広がる。


    山頂のお花畑①


    山頂のお花畑②

 1時近くまでゆっくり休憩して小田越への尾根道を下ることにする。時折青空が見えるが、ほとんどが雲の巻く曇り空だが、おかげであまり暑く無く過ごし易い。まずは木道の整備された稜線を下降点まで進む。


    木道の整備された尾根道。雪が残る。


    木道脇のコバイケイソウの葉とショウジョウバカマ


    お花畑

 下りの尾根道は沢沿いの道に比べると傾斜は緩いが、岩がゴロゴロ、しかも蛇紋岩でできた滑り易い岩なのでスリップに要注意だ。有名な長い2段ハシゴ場があるが、さほど難しい場所では無い。こちらは広大なハイマツの斜面が広がり、登山道脇にはミヤマシオガマやハヤチネウスユキソウ、ミヤマオダマキなどの入り混じって咲くお花畑が広がっている。そして、振り返れば蛇紋岩の圧倒的な岩肌。早く下山しようなどという気にはとうていなれない。


    見下ろす小田越尾根道。下に小さく白く見えるのが小田越小屋。


    蛇紋岩の岩壁。凄い迫力。


    有名な2段ハシゴ場


    山頂方向を見上げる。


    広大なハイマツの斜面が広がる。


    ハヤチネウスユキソウ。こちら側にもたくさんある。


    岩の間にミヤマオダマキの群落


    ミヤマオダマキ大株


    岩の間のお花畑


    見下ろす蛇紋岩の岩山


    振り返って見る蛇紋岩の岩山


    樹林帯に入る直前で見たマルバシモツケ。昨年の北海道遠征以来に出会う花。


    樹林帯の中でツバメオモト


    大きな葉のマイヅルソウ群落


    小田越小屋到着。

 午後2時45分ごろ小田越小屋に到着する。小屋の前に山岳パトロール隊の連絡係の方がトランシーバを持ってパトロール隊と連絡をとっていた。こちらの山も盗掘と鹿対策のために気が抜けないようで、その後続々とパトロール隊員たちが下山してきた。10人ほどいたのではないだろうか。私も山梨県のレインジャー隊として少しだけ同じような業務に携わっているだけに、苦労がわかる。

 休憩してアスファルトの林道を歩いて河原の坊駐車場に戻る。山頂でお会いしたパトロール隊の方に、林道脇にも花が咲いていると聞いていたので、花を楽しみながら、写真を撮りながら楽しみつつ歩く。


    道のかたわらにハクサンチドリが普通に生えている。


    こちらはノビネチドリ。


    ズダヤクシュ


    ハクサンチドリ群生


    ベニバナイチヤクソウ


    一瞬目を疑った。こんなのが道の傍らに・・・ 


    コ*ケ*イ*ラ*ン


    午後4時、河原の坊駐車場に到着。

 固有種満載の早池峰山を存分に楽しんだ1日だった。他にも稀少な固有種が多々あるらしいが、一度歩いただけでそう簡単にお目に出来るものではなさそうだ。いつかは今回出会えなかったヒメコザクラ、そしてこれからたくさん咲くであろうナンブトウウチソウにも出会ってみたい。しかし、遠いこの山、きっと定年後でなければ来る機会は無いだろう。
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固有種咲く早池峰山(前編)  平成26年6月27日

2014年07月07日 | 日本百名山
 至仏山や谷川岳と同様に蛇紋岩というアルカリ性の高い特殊な岩が露出している早池峰山は、この山固有の花が咲くことで知られている。特にハヤチネウスユキソウは有名で、この花を見るために多くの登山者が訪れる。そろそろ咲いている頃だろうが、今回私が見たいのはそちらではなくて、ヒメコザクラというサクラソウの仲間の白い花だ。若干時期が遅いかもしれないが、運が良ければ出会えるかもしれない。

 早朝4時起きで出発のはずだったが、前夜の夜遊びがたたって起きたのは5時。車を飛ばして7時に早池峰山駐車場に到着した。平日はマイカーで登山口まで行けるが、土日・祝日はマイカー規制でバス利用でなければ入山できなくなる。既に10台近い車が止まっている。今回は沢ルートを登って尾根ルートを下る一般的な周回コースを歩く。登り3時間半ほどのコースだが、花を探しながら5時間で登る予定だ。


    沢ルートを登る。


    さっそくノビネチドリを発見。


    タチカメバソウがルート沿いに沢山咲く。


    標高の低い場所からミヤマオダマキが出現。


    沢から見上げる早池峰山。岩ゴツゴツの山。


    沢が枯れたあたりから早くもハヤチネウスユキソウ出現。


    花はまだだが、この葉っぱはおそらく固有種ナンブトウウチソウの葉。


    蛇紋岩でできた早池峰山岩峰が迫る。急騰の枯れた沢を登る。

 沢の中にも蛇紋岩が散らばってはいるが、枯れた沢を上部まで登って尾根に取り付いたあたりからいよいよ固有種を含めた花が咲き出す。初めて見る花が多いだけに、なんとなく名前はわかるが確信が持てない。下山後に図鑑を見て確認ということになる。沢沿いを歩いている時に山岳パトロールの方と運良くお会いし、ヒメコザクラのことを尋ねたところ、かなり詳細に場所を教えてくれたが、おそらく終わっているだろうとの事だった。


    ミヤマシオガマ。向こうに白い花はチングルマ、手前の黄色いスミレはキバナノコマノツメ。


    ハヤチネウスユキソウがあちらこちらに咲いてはいるが、至仏山のホソバヒナウスユキソウのように一面咲いているというわけではない。


    蛇紋岩とお花畑。


    固有種ナンブイヌナズナ。


    ナンブトラノオ


    ホソバツメクサ(?)


    ヨツバシオガマ


    ハヤチネウスユキソウ


    ミヤマハンショウヅル


    ミヤマアズマギク。至仏山のジョウシュウアズマギクに似て、やや華奢な気がする。


    ミヤマキンバイ


    アオノツガザクラ


    山頂付近のナンブイヌナズナ群落

 登山道を真直ぐ登らずに右の岩場左の斜面と探しながらジグザグに登り、再三ヒメコザクラを探したがとうとう見つからなかった。ほぼ予定通りの4時間40分かけて山頂に到着した。


    早池峰山山頂

山頂裏側の人が少ないところでお花畑を眺めながら食事していると別のパトロール隊3人組がパトロールと水場調査のためにやって来た。その中の女性のパトロール員は花についてかなり詳しく、いろいろと教えていただいた。やはりヒメコザクラはもう終わっているとの事。そしてこの山でも盗掘事件があって、稀少な植物が失われてしまい、今年はパトロールを強化しているそうだ。さらに、全国どこの山も同じように、鹿の食害に悩まされているそうで、山の裾野や沢沿いはかなりの被害が出ているらしい。この山も、いずれは保護柵で覆わざるを得なくなってしまうのかもしれない。(後編に続く)

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