山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

細月昇る富士、パノラマ台から三方分山

2011年12月26日 | 御坂・毛無・天子山系
  平成23年12月23日

 夜明けの南東の空に二十八夜の細い月と水星が並んで昇るこの日、夜明け前から三方分山のパノラマ台か精進峠に行く計画を立てた。しかし、前日は忘年会。朝起きられるかどうか不安があったが、4時少し前に目が覚め、急いで準備して精進湖に向かう。パノラマ台登山口から登りはじめたのは5時を過ぎていた。まだ月は昇ってきていなかったが、20分ほど歩いたあたりで富士山の裾野から昇り始めた細い月が見えてきた。中腹の展望地でひと休みしてここで三脚を出して月と水星を撮影する。あまりゆっくりしているとパノラマ台に到着した頃には夜が明けてしまうので、数カットだけ撮って出発。その中には、肉眼では確認していなかったが、富士山の上を流れて行く流星が写っていた。見ていなかったのが残念だ。

    富士の裾野から月が昇りはじめる


    流星流れる富士  撮影したカットの中に偶然流星が写っていた。

 しだいに開けて行く東の空と高度を増す月を横目で見ながら、パノラマ台目指してひたすら歩き、6時15分、パノラマ台に到着した。月は富士山よりも高い位置まで昇ってきており、水星の輝きは夜明けの空に消えかけていた。風がやや強く、気温は-8℃、結構寒かった。月の欠けている部分が地球の光の反射でうっすら光る地球照の写真を撮りたかったのだが、10分ほど到着が遅かった。

    細月昇る富士  パノラマ台に到着した時の月と富士。


    同上

 月が朝の光に消えて日の出が近付く。富士山の裾野に沸いた雲が金色に輝き、やがて日の出となるが、空気が澄んでいる割には思ったほど空は焼けてくれず、物足りない日の出となった。パノラマ台にはトイレが設置されており、三脚を立てたままでトイレに行った時に事件が起きた。トイレから帰ると、風に煽られて三脚が倒れており、岩にレンズを強打して愛用のレンズが破損してしまっていたのだ。Eos40D本体よりも高いレンズだっただけに相当痛かった。修理できるかどうか、これからカメラのキタムラに持って行くが、おそらくはレンズ光軸がずれてしまってダメだろうと思う。

    日の出直前の富士山。裾野に湧いた雲が輝く。


    富士裾野からの日の出  冬至の頃は精進湖界隈で富士山の裾から昇る日の出が楽しめる。


    朝日射す御坂山塊  尖って見えるのは王岳。


    本栖湖と毛無山山塊


    パノラマ台と日の出

 7時半にパノラマ台撤収し、三方分山に向かう。朝から何頭も犬が吠えている声がするので何かと思っていたら、精進峠で数人の猟師さんたちに出会った。今日はイノシシとシカの猟に何人もの猟師さんたちが入山しているという。いつもならば熊避けのために1人念仏を唱えながら(独り言を言いながら)歩いているのだが、迷惑にならないようにその先は無言で歩く。

    アセビの生える道を登る。


    精進山から見る富士山  下に光って見えるのは精進湖。


    眼前に近付く三方分山


    三方分山最後の急登。登りついて山頂かと思いきや、さらにその15分ほど先が標柱点。

 最後の急登を登りつくと平らになり、祠が立っている。ここが山頂かと思いきや、そうではなく、山頂はさらに15分ほど稜線を歩いたところにある。9時、三方分山到着、これで3度目の登頂となる。この頃には富士山はもう雲の中に隠れてしまっていた。
休憩して軽く朝食をとり、下山。来た道を精進峠まで戻り、峠から精進湖へ降りる道を下山した。数人の猟師さんと出会い、本日の収穫はシカ3頭、イノシシ2頭で、これから山から担ぎ出すのだそうだが、狩猟以上にこの担ぎ出しが大変なのだそうだ。半分以上下りたところで、60~70kgはあろうかという大きなシカを2人の猟師さんが登山道まで引き上げている最中だった。確かにこれは相当大変な作業、しかも高齢の猟師さんが多かった。

    平らで気持ち良い三方分山山頂


    到着した9時には、富士山はもう雲の中。

 山頂から1時間半ほどでパノラマ台入り口の駐車場に到着。防寒のために重装備で湖畔の道を歩いていると、カメラとマイクを持った7~8人のグループが向こうからやって来た。明らかに何かの取材だ。すれ違おうとすると、私のほうに寄って来た。東京12チャンネルの富士山をバスで巡って眺める旅企画をやられているそうだ。汚い格好をしているのにカメラが回っていたのでちょっと焦ったが、写真家の栗林先生の居場所を探しているらしい。場所を教えて、あとで写ば写ばに行ってみると、ちょうどインタビューの真最中だった。これから西湖周辺の樹海の案内をすることで話がまとまったようだ。突然のテレビ取材にも全くおっくうがらずに応対する栗林先生には頭が下がる。
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皆既月食の赤い月、滝子山一夜(後編)

2011年12月19日 | 大菩薩・小金沢山系
 
 月が東の空に輝く夕方6時、テントの中に一旦引き込み、夕食を取る。月が欠け始めるのが9時半ごろからなので、寒さしのぎにシュラフの中に潜り込んでしばし休憩する。

    月光照らす御坂山塊と富士


    甲府盆地の灯り

 8時過ぎ、テントの外に出ると、月の下にオリオン座が昇ってきていた。富士山側を見ると、月光に照らされた御坂山塊とその向こうに見える富士山が美しい。西側には甲府盆地の夜景と雲が巻いた南アルプスの山並みが広がる。冷え込んだ上にやや風が強かったおかげで空が澄み、月食を観察するには絶好の空となった。しかし寒い。温度計を見ると-8℃を指していた。

    そろそろ欠け始め。だが、まだ富士山と一緒に撮影できる画角には入らず。


    半分以上欠けた所でようやく10mmレンズの画角に入る。しかし、まだ明るすぎて月は吹き飛んでしまう。


    皆既直前の月と冬の大三角形  17mmレンズで撮影。

 9時40分を過ぎた頃、いよいよ月が欠けはじめた。しかし、新調した10-22mmレンズを最大広角にしてもまだ富士山と一緒にこの月を写し込むことはできない。皆既月食になるのはほぼ頭の真上、角度は足りるのだろうか?ちょっと心配になる。
 月が半分近く欠けた10時過ぎ、ようやく富士山と月が10mmレンズの視野で捉えられるようになる。麓の夜景を入れてぎりぎりの位置だが、なんとか入りそうだ。いつも使っている17mmレンズでも試してみたが、予想通り全く富士山の視野に入って来なかった。

    皆既月食の赤い月とオリオン座


    富士に昇る赤い月  月が欠けるにつれて星が輝く。予定では冬の大三角形が入るはずだったが、若干画角が足りず。

 2種類のレンズを交換しつつ撮影していると、10時50分過ぎ、遂に皆既月食となり、輝いていた月は赤銅色の月に変わる。初めて見る皆既月食の月は本当に赤かった。そして月が隠れると星がたくさん輝き出す。滝子山からだと、予定では富士山の真上で皆既月食になるはずだったのだが、計算を間違えたようで、やや東側で皆既したため、冬の大三角形が画角の中に捉えきれなかったのがちょっと残念だった。ようやく冬の大三角形が画角に捉えられた深夜12時は、皆既月食がもう終わる頃で月が輝き始めていた。

    月食の終わり。ここでようやく冬の大三角形が写りこむ。この画像ではわかりにくいかもしれないが、超低空にカノープスも写っている。

 富士の裾野の低空には若干雲が湧き、町明かりで明るく光っていた。冬の大三角形が南中した頃、肉眼でカノープスを見ることはできなかったが、皆既月食が終わる頃に撮影した映像の中にはっきりとその星が写っていた。やはり、条件が良ければ滝子山からカノープスを見ることができるのだ。おそらくはその北側の大蔵高丸、白谷ノ丸、さらに大菩薩嶺に至る山々からも見えるのだろう。皆既が終わった12時過ぎ、テントに戻って暖をとり、シュラフに潜って眠る。

    薄明の空  左が丹沢山塊、右が御正体山の山並み。


    Earth shadowと沈む月

 翌朝4時頃、背中が寒くて目が覚めた。温度計を見るとテントの中で-10℃を指していた。寒いのでバーナーを炊いてテント内を暖めまた寝る。5時50分、テントから出るときれいな瑠璃色の空が広がっていた。水平線がオレンジ色に染まっている。月は甲府盆地の向こうの西の空に傾いている。Earth shadowが広がった。

    夜明けの富士


    三つ峠越しの朝富士

 富士山の山頂がピンク色に染まり、6時42分、丹沢山塊から朝日が昇る。空気が澄んでオレンジ色に染まったきれいな日の出だった。大菩薩・小金沢連山が朝日で赤く染まっていた。7時過ぎまでこの素晴らしい夜明けを楽しみテントに戻って朝食を取る。

    朝の滝子山山頂

 さて、人が登ってくる前に邪魔にならないようにテント撤収、8時半下山開始した。前日登ってきたルートはやはり遠回りで、もう1本東側の尾根にルートがあってそこを下りた。出たところは景徳院の裏側だった。景徳院境内を見物させていただき、11時、駐車場に到着。一応は寝たが、帰りの車の運転は相当眠かった。

    欠ける月(合成)

 月の欠けて行く様子を55mmズームで撮影して合成したが、焦点距離が短すぎてあまり良いものにはならなかった。かつ、最後の赤い月は星を同時に撮影することを意識し過ぎて露出オーバー(Iso感度上げ過ぎ)の画像となってしまった。次こそは・・・と言いたいが、次にこのような好条件が揃う日はいつになるのだろう?



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皆既月食の赤い月、滝子山一夜(前編)

2011年12月14日 | 大菩薩・小金沢山系
 平成23年12月10日-11日

 空が澄んだ皆既月食の夜、皆様はいずこへ?私は富士山の上に昇った赤い月を捉えるべく、テント泊、滝子山山頂で一夜を過ごした。今までにも何度か月食の機会はあったのだが、いずれも天候が悪く不発に終わってしまった。初めて撮影する赤い月、果たしてうまく撮影できるものかどうか??今回の月食は深夜11時半、ほぼ頭の真上で月食となるため、今使っている17mmレンズで富士山を入れて撮影するには画角が足りず、支給されたばかりのボーナスで10-22mm超広角レンズを新調して撮影に望んだ。

12月10日
 朝から青空が広がり、寒い日となった。ブログには書いていないが、昨年秋に笹子から滝子山に登って、いつか山頂からカノープスを撮影してやろうと下調べをしてあった。今回は雪が降ったばかりだったので、車のスリップを心配して林道を避け、勝沼側の景徳院から登ることにした。3時間くらいで到着するだろうと甘い考えで、11時に自宅を出発、12時半に景徳院を出発した。地図を持って行くのを忘れ、入口がわからなかったが、「大鹿峠」という看板があったのでその看板に従って道を行くと、人家の柱に道標が打ち付けられていて、庭の中を通って登山道に入った。送電線鉄塔が何本も立っていて、道は良く整備されている。しかし、なかなか大鹿峠に着かない。

    景徳院の門。門の下に「湯の沢峠入り口 大鹿峠入り口」の看板あり。


    人家の柱に「大鹿峠」の看板。人家の庭を横切って登山道に入る。


    鉄塔整備道を兼ねているらしく、良く整備されている。


    大鹿峠付近の樹氷と、遥か向こうに見える滝子山。(中央の双耳峰のように見えるのが滝子山)
 
 午後2時20分、ようやく笹子側からの道に合流、見覚えのある看板が立っていた。その先が大鹿峠だった。樹氷の向こうに見えた滝子山はまだ遥か彼方だ。小休止してからひたすら歩くが、久しぶりのテント装備荷物はずっしりと重く、なかなか足が進まない。滝子山目前の最後の草原で日は西の山裾に沈んでしまった。なんとか夕暮れの富士山を見ようと最後の急登を必死に登り、息絶え絶えに午後5時、滝子山山頂に到着した。残照は終わってしまったが、夕焼けを背負った端正な雪化粧の富士山が、三つ峠越しに立っていた。

    滝子山手前の草原。もう日は西に沈みかけている。


    山頂目前で遂に日が沈んでしまう。


    夕暮れの富士  午後5時、ようやく山頂到着。夕焼けの空に富士が立つ


    夕暮れの富士と金星


    東の空に昇った十五夜の月

 東の空には金色の月がもうだいぶ高く昇ってきていた。大月市の明かりの向こうのは東京都の明かりが大きく広がっている。日が暮れて暗くなるにつれて星が輝き出す。月明かりに照らされた富士山の右には明るい金星が輝いていた。さて、今宵はこの月、どんな姿を見せてくれるのだろうか?星空の撮影を始めた3年前までは天体現象など全く興味がなかったので、部分月食は見たことがあるが皆既月食を真剣に観察するのは初めて(子供の時に見たような気もするが・・・)の経験となる。

    月光照らす夕暮れの富士


    滝子山から見る月。今宵はどんな姿を見せてくれるのか?

 すっかり暗くなった夕方6時過ぎ、テントを設営し、夕食をとって月食が始まるのを待つ。腕時計の温度計は-6℃を示していた。(後編に続く)

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南アルプスと八ヶ岳を望む甲府盆地の夜景、春日沢の頭 

2011年12月07日 | 御坂・毛無・天子山系
 平成23年11月27日

 登山を始めた6年前、簡単に登れそうな山を探して訪れたのが春日山だ。鳥坂トンネルの脇から尾根に取り付いて登ると、1時間ほどで到着できる。そこにある春日沢の頭という展望地は、山頂が切り払われていて甲府盆地の眺望が良く、左に南アルプス、右に八ヶ岳を望むことができる。いつか夜景を見に行きたいと思いつつも、簡単に行けるだけにいつでも行けるという思いがあったためか、ずっと行かずに今日に至ってしまった。午後3時過ぎから、鳥坂トンネル脇に車を止めて春日沢の頭に向かった。しかし、このトンネル脇に止めた車が後にトラブルに・・・

    鳥坂トンネル脇に車を止める


    午後3時半、日はもう西に傾いている。


    道標と尾根に登る登山道

 トンネルの芦川側に駐車スペースがある。旧道が脇を走っており、そこを進むと既に閉鎖されて使用不能となった古いトンネルのところに出る。右に登る道と道標がついており、そこを登ると10分ほどで尾根に出る。向こう側には甲府盆地の景色が広がる。右に行けば釈迦ヶ岳方面に、左に行けば春日山だ。小コブをいくつか越えて尾根伝いの道を行くと、4時15分ごろに目的地春日沢の頭に到着、ちょうど夕陽が南アルプスの左端に沈んで行くところだった。山梨百名山の標柱はここから先の少し下ったところにあったはずなので、荷物を置いて三脚とカメラだけ持ってそちらに行ってみる。しかし・・・かなり下ったが標柱が無い。さらに進んで、隣のピークのコルまで、10分ほど下ったがとうとう標柱は発見できなかった。そういえば、春日沢の頭にある標柱には春日山とは書かれておらず、方向が示されている。ということは、山梨百名山の標柱があったところが春日山なのではなくて、本来はさらに先にあるアンテナの立っているところが春日山なのだろうか?とすると、まだ私は春日山のピークは踏んでいないということになる。夕暮れ迫り、今回は行けないが、いずれこの先まで行ってみることとしよう。

    尾根道を進む


    春日沢の頭  右が八ヶ岳、左が南アルプス。


    夕暮れの南アルプス  山は南アルプス南部の荒川岳と赤石岳。


    甲府盆地に明かり灯る


    夕暮れの南アルプスと甲府盆地

 春日沢の頭に戻ると、もう日は沈んで夕焼け空になっていた。ヘッドライト装着して暗くなるのを待つが、空には雲が多くて星空は望めなそうだ。金星と月が接近している日だったが、それも難しそうだ。4時45分、甲府盆地に明かりが灯り、5時、夕焼けの空は闇に変わる。やがて東の空に木星が輝き出す。月も雲におおわれて霞んではいるが、姿を現した。

    夕暮れの甲府盆地


    林に昇った木星


    月昇る  金星も一時だけ輝いた。

 撮影していると、突然妻から電話がかかってくる、「警察から電話がかかってるけど・・・」。警察のご厄介になるような不祥事はやってない(バレてない??)はずだが・・・?。何のことか聞いてみると、トンネル脇に止めた車を通りかかった消防署員が発見し、暗くなっても人がいないので山菜取りか何かで入山して遭難したのではないかと警察に通報したらしい。とんだ遭難騒動に巻き込まれてしまった。ここは電波が悪く、一時的に電話が繋がったもののすぐに切れてしまい、その後は繋がらなくなってしまった。仕方なし、夜8時頃まで粘るつもりだったが、空模様はいまいちということもあって、撤退することにした。5時半、下山開始、6時に駐車場到着した。

    甲府盆地の夜景

 駐車場では電話が繋がるので妻に電話すると、笛吹警察署に電話するように言われたとの事で電話する。事情を話すと、何のおとがめも無かった。とんだ遭難騒動の夜景撮影だった。
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