山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

花咲く北岳 平成23年7月16-18日(2日目)

2011年07月31日 | 南アルプス
 7月17日(2日目)

 朝から抜けるような青空が広がった。4時半朝食、5時半に出発する。いきなり草スベリの急登、メンバーの顔色を伺いつつ、疲れないように前日にも増してスローピッチで登る。3時間ほど歩いたところで樹林帯を抜け、シナノキンバイのお花畑に到着した。鹿の食害で年々縮小しつつあるお花畑だが、今年からお花畑全体をネット柵で囲い、鹿が入り込まないようにしてあった。さぞかしこの柵の設置には手間がかかったことだろうが、もっと早くこうすべきではなかったかと思う。

    出発前の白根御池小屋前で記念撮影。今日も頑張ります!


    草スベリの急登を登る


    迫る大迫力、北岳。もう、すぐそこに見えるのだが・・・


    草スベリ上部、シナノキンバイのお花畑を行く  今年からネット柵が設置されている。

 ここで私は三脚を出し、皆には先に行ってもらい存分に、気の済むまでこのお花畑の写真を撮らせてもらった。満開でちょうど見頃のシナノキンバイ、抜けるような青空、そして花が当たりのこの年、たくさん咲いている。何度も登っている北岳だが、今回が最も条件が良かった。急いで歩くなどもったいない。登山者にはやや迷惑だったかもしれないが周囲に気を使いつつ、三脚を担いだまま、気の向くままにシャッターを切りつつ、メンバーたちに30分ほど遅れをとって稜線に到着した。

    シナノキンバイのお花畑  今年は花が当たり年。


    シナノキンバイのお花畑と北岳


    シナノキンバイ


    ハクサンチドリが混じる。周囲の花はミヤマキンポウゲ。

 時間は11時過ぎ、予定していたよりも早く着いた。4人のメンバーは先に肩の小屋まで行ってそこで食事にすると言って出発した後だった。残り4人で仙丈ケ岳を眺めながら小太郎尾根分岐部で昼食にする。好天に恵まれたこの日は正午近くになってもまだ南アルプスには雲がかかっていない。甲斐駒ケ岳や八ヶ岳、さらにその向こうの北アルプスまで見渡せる。花と景色と空気を楽しみながらの贅沢な昼食だ。ゆっくり昼食をとり出発、稜線の眺めを楽しみながら午後1時過ぎ、肩の小屋に到着した。

    小太郎尾根分岐部の稜線から見る仙丈ケ岳(3,033m) この景色を見ながら昼食。


    花咲く稜線を歩く。北岳肩の小屋までもう少し。

 先行した4人は宴会を始めていた。この頃から山頂に雲が巻き始めたが、まだ持ちこたえられるだろうという判断で山頂をピストンしてくることにした。1人は体調不良、1人は既に酔っぱらっており、6人で出発する。山頂までは1時間少々の行程だが、目の前に北岳北峰(北岳山頂は双耳峰になっており、標高点は南峰にある)が迫ったところで雨が降り出す。山頂まであと20分とかからないが、雷雨になるかもしれず、下山の時間を入れると1時間はかかる。ここで引き返すことも1度は考えたが、空を見上げると意外と明るく、ここは山頂まで行くことにした。雨は小雨で間もなく止み、無事に山頂に到着、その頃には時折雲間から青空も覗いた。全員ではないが、ひとまず目的の山頂まで連れて来ることができた。達成感というよりもほっとした気分だった。

    山頂へ行く途中のチョウノスケソウお花畑


    チョウノスケソウ  小判のような葉が特徴。紫の花はオヤマノエンドウ。


    山頂到着、やったぜ!

 肩の小屋に戻って1時間と経たないうちに土砂降りの雨がやってきた。遠雷も轟く。この時間に山の上に居なくて良かった。雨は30分ほどで上がり、その後鳳凰山に虹が架かった。しかもダブルの虹だ。思いがけない山の神様の歓迎に感動しながらこの景色にじっと見入ってしまう。そして日没。仙丈ケ岳の左肩に、雲に巻かれながら真っ赤な夕陽が沈んでいった。空が雲におおわれてなかなか夕陽が見られない今日この頃、久しぶりに見る綺麗な夕暮れだった。

    鳳凰山にかかる虹  2本出ているのが見えますか?


    雲巻く仙丈ケ岳に沈む夕陽


    夕映えの北岳と夕陽を見つめる人々


    日没後の放射する夕陽

 一旦小屋の中に戻り、本日の寝床と明日の荷物を整理した後、8時ごろに外に出ると今度は赤い月が昇り始めていた。この日は十七夜の明るい月が昇って来る日だ。星を撮るには明る過ぎる月だが、富士山に近い良い位置から月が昇って来る。最初は雲に巻かれていた富士山も夜9時近くになってから雲が晴れ、雲海の上に浮かぶ幻想的な景色となった。肩の小屋の電気が消えた8時半過ぎ、ようやく北岳側の風景も撮影できるようになった。山頂にさそり座が昇り、霞のように淡く天の川が肉眼で確認できる。月明かりが明るすぎたがなんとか北岳にかかる天の川を撮影し、この日は床に着く。明朝は3時起床、北岳山頂で日の出を迎える予定だ。

    十七夜の月昇る  左の山は鳳凰山、町灯りは甲府市の郊外から南アルプス市方面。


    雲海に昇る月と肩の小屋テント場  静寂で幻想的な夜でした。


    月照らす北岳と天の川


 翌朝は目を見張るような真っ赤な朝焼け空となりました。今シーズン最高の朝焼けだったと肩の小屋小屋主さんが言っていました。近日アップします。
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花咲く北岳 平成23年7月16-18日(1日目)

2011年07月31日 | 南アルプス
 平成23年7月16-18日

 1泊2日で十分に行ける北岳だが、今回2泊3日とした理由は、自身の頚椎症のため左腕に不安あり、どこで行動不能となるかわからないという身体的状況があったからだ。この計画を立てたのはまだ症状の酷かった2月ごろのことである。白根御池小屋1泊、北岳肩の小屋1泊で、かつ雪渓の残る左俣を通らずに行く行程は初心者向けの楽々北岳登山となる。2日目に山頂まで行くとしてもその標高差は約1,000mとなり、乾徳山や瑞牆山に登るのと同じくらいである。相棒の植田さんに声をかけ、経験者2人、初心者6人、計8人の構成で7月連休に北岳を目指した。

 7月16日(1日目)
 御池小屋までなので、黙々と歩けば3時間ほどで到着できる行程である。12時までに広河原を出発すれば十分だが、1週間前に行った八ヶ岳杣添尾根のようにいつ雷雨に出くわすとも限らず、出発を少し早めにして芦安9時のバスで行くことにした。予想通り芦安市営駐車場は満車で芦安小学校の下にある臨時駐車場に車を止めることになる。都合良いことに臨時駐車場にはジャンボタクシーが待っており、準備して15分ほどで全員同じタクシーに乗ることができ、バスよりも早く広河原に到着できた。

    北岳を目指して  これから広河原出発。皆さん期待に満ちた良い表情してます。


    大樺沢から見上げる夏の北岳


    大樺沢の流れ  橋のかかるこの場所で昼食。


    河原の岩の上でちょっとお昼寝。気持ちいい~! くれぐれも落石にご注意を。

 10時、広河原出発。決してピッチを上げることなく、30~40分に1回の割合で休憩を入れつつ大樺沢を登る。グンナイフウロやミヤマハナシノブ、センジュガンピなどの花が咲く河原沿いの景色を楽しみつつ、時に河原の石の上に寝転んで休憩しつつ歩き、途中の河原で昼食をとり、二俣には午後1時半ごろに到着した。今年は7月に入ってからの気温が高く、例年ならば二俣のかなり手前から雪渓歩きとなるのだが、登山道は完全に露出し全く雪を踏むことなく二俣まで行くことができた。雪を期待していた私には少し物足りなかった。ここまで来れば白根御池小屋までは1時間ほどで(私たちの足ならば)到着できる。下界は30℃を越える猛暑だろうが雪渓の残るこのあたりは涼しくて気持ち良い。ゆっくり休憩してから出発し、御池小屋には3時過ぎに到着した。

    登山道脇に咲くミヤマハナシノブ


    大樺沢二俣手前の雪渓。今年は雪解けが早い。


    右俣雪渓の下からモヤが湧きあがる。涼しい。


    右俣雪渓を背に記念撮影。北岳は雲におおわれる。

 缶ビールのほかにウィスキー1リットル、日本酒2リットル、さらに瓶のままワイン2本など、アルコール類は十分に持ってきており、さっそく宴会が始まる。5時過ぎに夕食となったがその後も宴会は続き、明日の荷物をできるだけ軽くするためにひたすら飲んだが、さすがに日本酒とウィスキーは飲みきれず明日に持ち越しとなる。一人は完全に出来上がってしまい、気がつけば布団ではなく小屋の廊下で寝ていた。私たちのグループがいちばん大騒ぎしていて、近くに座っていた宿泊客に笑われてしまった。

    白根御池到着。テントがたくさん。


    持ってきたワインで乾杯。瓶入りはちょっと重かったです。

 御池小屋はこの日は大混雑、1枚の布団に2人寝るはずだったが、植田さんはシュラフ持参しており廊下で寝てくれ、もう1人外で寝たいというので私が持参したツエルトをテント場に設置してそこで寝てもらった。おかげで2枚の布団に3人で寝ることになり、余裕をもって横になることができた。明朝は4時起床なので、この日は月がテント場を照らす9時まで夜の撮影を行い床につく。

    テント場と昇るさそり座  月明かりと霞で星写りは悪かった。雲のすぐ上にあるのがさそり座の胴から頭の部分。


    月光照らす北岳と白根御池小屋テント場
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雷雨のため途中下山、杣添尾根  平成23年7月10日

2011年07月20日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成23年7月10日

 先週の赤岳・キレット・権現岳に続いて今週も八ヶ岳を訪れた。赤岳周辺の花の咲き具合からしてこの日あたりがウルップソウを見るに良い時期になりそうだからだ。しかし・・・目を覚ませばもう時間は6時半、横岳最短ルートの杣添尾根直登意外にルートの選択は無くなってしまった。急いで準備し、高速を使って登山口の海ノ口に向う。

    杣添川にモヤが湧く。

 8時、海ノ口に到着したが、予想通り駐車場はいっぱいで道路脇に車を止めさせてもらう。先週の県界尾根でイチヨウランを見つけ、生育環境がだいたいわかったので同じような林の中を首を振り振り歩いていると・・・発見!2株イチヨウランを見つけた。しかも標高1,800mくらいの低い位置で発見した。気分を良くして引き続き登山道脇、時に林の中に踏み込みつつ稀少植物を探しながら歩くが、その後は何も見つからない。そんなことをしながら、写真を撮りながら歩いているのでピッチは上がらない。

    発見!イチヨウラン  少し痛んでいる。


    コバノイチヤクソウ群落  こちらはまだ蕾。

 12時、もうすぐ森林限界を超える標高2,500m付近でポツポツと雨が降り出した。かと思ったらあっという間に本降りの雨になってきた。午後2時までは持つだろうと思っていたのだが、山の上ではそうは行かず、急いでカッパを着てザックカバーを装着する。横岳稜線まではもう1時間とかからないだろうが、下手をすると雷雲に巻き込まれてとんでもないことにもなりかねない。即座にあきらめて下山を開始した。

    11時20分、雲行きが怪しいぞ!12時、雨が降り出す。その10分後・・・

 その10分後・・・目の高さと同じか、それよりもやや低い位置でゴロゴロと雷の音がし始めた。樹林帯には入ったが、霧に巻かれていてまだ危ない。早足で1時間下り、ようやく雷雲から逃れた。その頃には・・・振り返って横岳を見ると真黒な雲がかかり、山の端から端までゴゴゴゴーというもの凄い雷鳴が轟き渡っていた。迷わず下山して正解だった。

    イチヨウラン  3株目


    同上


    同上  4株目。雨と霧でレンズが結露していた。

 登りながらカモメランを見つけたあたりをさらに良く探してみると、もう少し低いところにもう2株発見することができた。写真を撮影していると、次々と下山してくる人たちと出会った。この時間に下りてきた人たちは雷雲の直撃はなんとか避けられたようだ。
 午後3時、駐車場到着。まだ車が10台ほど止まっていたが、この人たちは大丈夫なのだろうか?心配しながら帰路につく。
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八ヶ岳稀少植物調査(2日目) 赤岳からキレット、権現岳を経て天女山へ

2011年07月12日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成23年7月2-3日

 赤岳の南に位置する権現岳、さらにその向こうの南アルプス。この山々の上に流れる天の川を期待していたのだが、赤岳山頂小屋の夜は一晩中雲が巻き真白な夜だった。夜10時に外に出てみたが何も見えない。

    赤岳山頂で記念撮影。これからキレットを超えて権現岳へ。

 朝は4時に目が覚めた。あたりがもう明るくなり始めている。外に出た人たちが「何も見えないよ」と会話している声が聞こえる。日の出時刻の4時半に起き出して外に出てみるが、霧で視界が20mほどしかない。日の出も全く見えない朝だった。朝食は5時半からだったが、私は注文せずに自炊で朝食をとる。6時、小屋を出発。赤岳山頂にある標柱のところで3人で記念撮影をした後、キレットを目指して下り始める。霧で視界が悪い中をただひたすら鎖とハシゴの連続する急斜面を下りる。途中にはチョウノスケソウやイワウメの群落、咲き始めたミヤマシオガマ、ミヤマキンバイ、ハクサンイチゲなど、岩の隙間にたくましく咲いていた。

    朝露に濡れるチシマアマナ


    霧に霞む八ヶ岳のお花畑


    真行寺尾根分岐部。霧に霞む。


    チョウノスケソウ群落  この花は傷みやすく、新鮮な状態を撮るのが難しい。


    シコタンソウ


    霧のキレットを下る。花は咲き始めたばかりのミヤマシオガマ


    鎖とハシゴの連続。左腕の疲れがしだいに増してくる・・・


    イワウメ大群落


    キレットのお花畑。ミヤマキンバイ、キバナノコマノツメ、ミヤマシオガマ、ハクサンイチゲなど。ミヤマダイコンソウはまだ葉っぱだけ。


    ミヤマクロユリ

 キレット小屋のあたりまで下りたところで一瞬青空が見え、赤岳が全容を現した。鋭く尖った岩峰がいくつも立ち並ぶその様相はいつも見慣れている赤岳とはずいぶん違って見えた。下りてくる最中は霧に巻かれて何も見えなかったが、振り返って見るとどこをどうやって下りてきたのだろうか。

    一瞬空が晴れ、全容を見せた赤岳。いちばん左が山頂。


    霧に霞む旭岳。このあたりで左腕が攣る。


    旭岳への崖のような登り。

 しばし休憩してツルネのピークに向うが、キレットの鎖とハシゴで左腕が相当疲れていた。痛みこそ軽いが、筋性疲労で力が入りにくくなってきていた。ツルネを越えて進むが、このあたりは至って穏やかな普通の登山道だ。しかし、旭岳に近付くにつれてまた道は険しくなり、急斜面の岩場を登ったり鎖があったりとアルペンルートに変わる。そして旭岳目前で休憩した際に、遂に左腕が攣ってしまう。頚椎症のために筋力だけでなく持久力が相当落ちてしまったようだ。腕をマッサージして再び登る。旭岳への崖登り、さらに岩場と鎖場が続き、最後に60段のハシゴが待っていた。途中で何度も左腕をブラブラさせて休みながら苦手なハシゴを登り、ようやく権現岳に到着した。どうやら今の左腕の状態では鎖・ハシゴ・岩場は3時間くらいが限界のようだ。
 先に到着していた2人には申し訳ないのだが、権現岳でゆっくり休ませてもらい、腕を十分にマッサージして出発する。あとは下りの鎖場が少しあるだけで、三ツ頭から天女山へのルートは普通の登山道だ。

    権現岳の長いハシゴ直下、ミヤマシオガマ満開。


    ようやく着いた権現岳。あとは下るだけだが、ここから先がまだ長い。


    権現岳山頂付近に咲いていたミヤマキンバイ


    ミヤマクロユリ群落


    霞む権現岳山頂と神社

 左腕を使わないでいると次第に腕の疲れがとれてきて、ようやく花を探す余裕が出てきた。登山道脇を首を振り振り歩いているとピンクの可愛らしい花、カモメランを発見した。さらに先頭を歩いていたAさんがとんでもないものを発見。ランはランだが、葉緑素を持たない腐生植物のラン、ヒメムヨウラン(姫無葉蘭)だ。初めて見たし、こんな植物がこのルートにあるとは思ってもいなかった。絶滅危惧種にこそ入ってはいないが、出会うことはきわめて困難といって良いだろう。三脚を出して存分に撮影させてもらった。

    カモメラン発見。山の中にも咲くのを知った。


    腐生植物ヒメムヨウラン。もう2度とお目にかかれないかもしれない。

 ひたすら天女山に向って下り、3時ごろに天女山到着。ここから先がまた大変で、八ヶ岳遊歩道は車を止めたところまで7kmほどあり、しかも緩い昇りだ。2人について行けず、またしても先に行ってもらうことにした。ほぼ中間点にある水場のところで2人は待っていてくれ、ここで最も健脚のKさんが先に行って車を回収し、美が森の駐車場まで迎えに来てくれることになった。私はしばし休憩させてもらい、ここで荷物を軽くすべく、カップソバを食べる。

    やっと到着、天女山駐車場。でもここから車まではまだ2時間以上かかる・・・

 遊歩道を歩いて行くと地獄谷へ行く林道に出くわし、この林道を歩いて美が森駐車場に着いた。10分と経たないうちにKさんが車でやって来た。歩けばまだ40~50分はかかるだろう。本当に助かった。
 初めて越えた八ヶ岳キレット、想定以上に大変な行程だった。首を故障して以来、いちばん過酷なコースとなり、現在の状態での限界も見えてきた。イチヨウラン、カモメラン、ヒメムヨウランという稀少種の収穫があったが、自分自身の体の限界がわかってきたことも大きな収穫だった。
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八ヶ岳稀少植物調査(1日目)、県界尾根から赤岳へ 平成23年7月2-3日

2011年07月12日 | 八ヶ岳・秩父山系
 平成23年7月2-3日

 山梨県山岳連盟では毎年山岳レインジャーと称して山梨県の稀少高山植物の調査を行なっている。私の所属する嶺朋クラブもその活動に参加しており、年3回のレインジャー活動に協力している。今回はその初回活動、もともとは6月11-12日の予定だったのだが悪天候のためにこの日に変更となった。決まったルートの指定は無いのだが、山梨県側のルートという規定がある。そこで今回は県界尾根を登って赤岳山頂小屋に1泊、翌日キレットを越えて権現岳に登り、三つ頭を経て天女山に下山。そこから八ヶ岳遊歩道を歩いて県界尾根の登山道入り口まで戻るというロングコースだ。果たしてこの左腕でこのコースを行けるのか?一抹の不安がよぎるが、それ以上に心配なのは同行する2人の足が速いことだ。おそらくは着いて行けないだろう。
 10時、サンメドウズスキー場の奥にある県界尾根入り口に集合する。既に駐車場はいっぱいで路肩に車を止めて出発する。しばらくは林道のような広い道を歩き、県界尾根の看板のところで右に曲がって尾根の側面を登る。急傾斜を1時間ほど登ると野辺山側の道と合流し、小天狗に到着する。時間は12時、ここまではひとまず順調だった。

    県界尾根登山道入り口


    急斜面を登る


    木の名前は知らないが、秋になるとおいしいグミの実が成るそうだ。


    尾根の分岐。野辺山側の登山道と合流する。

 小天狗で昼食をとり、さらに進む。ところどころ展望の開ける場所があるが、この日の山は雲におおわれて向いに見える真行寺尾根の下部が少し見えるだけだった。尾根の登山道脇にはコイワカガミやミツバオウレン、ゴゼンタチバナ、キバナノコマノツメなどが咲いていた。予想通り、私は2人のペースについて行けず、電話連絡をとりながら2人には先に行ってもらうことにした。小屋の食事は5時か6時ごろ、それまでに到着すれば良いので、私のペースでも十分に間に合うはずだ。

    ところどころ展望が開けるが、この日は雲がかかって山は見えず。


    登山道脇に咲いていたゴゼンタチバナ  4葉と6葉があるようだ。

 標高2,430mの大天狗には13時50分に到着。この頃にはもう2人の姿は全く見当たらない。眺望を期待していたのだが、大天狗の山頂は木が邪魔になってあまり良くなさそうだった。(霧で景色見えなかった。)登山道周辺にはミツバオウレンとコイワカガミの群落が広がっており、白とピンクの絨毯になっていた。

    大天狗山頂  眺望はいまひとつ。


    大天狗のコイワカガミ群落


    大天狗のミツバオウレンとコイワカガミ群落  白とピンクの絨毯。


    ヤマザクラがまだ残っていた。


    霧に霞むダケカンバの森

 この先がこのルートの核心部となる。傾斜がきつくなり、森林限界を超えるとそこには足場の悪い鎖場が待っている。足をかけるところが少なく、鎖にぶら下がるようにして登るのだが、その途中で稀少植物のムシトリスミレを発見。鎖を抱え込みながら体を固定してなんとか撮影、2株見つけた。さらにその上の大岩にはいろいろな花がついていた。コイワカガミ、ミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ(まだ葉だけ)、イワウメ、ハクサンイチゲ、チシマアマナ、そしてまだ花の咲かないムシトリスミレなど。長野県側と違って歩く人が少ない山梨県側ルートだけあって、手付かずでそのまま咲いているという感じだった。

    鎖場から県界尾根を振り返る。


    鎖場のところで見つけたハクサンチドリ


    希少植物ムシトリスミレ


    大岩のところに咲いていたチシマアマナ

 その先も鎖場が続くが、今度は傾斜が緩いので難無く登れる。左手は痛むには痛むがあまり酷くは無い。そしてようやく赤岳が見渡せる県界尾根上部に出たのは午後4時だった。もう2人は小屋に到着している頃だろう。見上げる赤岳は鋭く切り立っていて、今までに見てきた赤岳とは少し様相が違う。三脚を出して撮影準備をしているとあっという間に雲に巻かれて赤岳は消えてしまった。20分ほど待ったがとうとう姿を現さず、あきらめて山頂小屋目指して再び登り始める。

    鎖場の上部から見上げる赤岳  鋭く尖って格好良い。(あの上が山頂ではない)


    鎖場と赤岳山頂小屋  もう少し、されどまだ遠い。花はイワヒゲ。


    最後の登りの途中から見る横岳と赤岳展望荘


    小屋のすぐ下にあったミヤマシオガマはまだ蕾がついたばかり。モヤモヤした綿毛が可愛らしい。

 途中で電話連絡が入り、夕食は5時半からだという。十分に間に合う時間ではあるが、山頂直下のルートもまた大変な道で、ハシゴと鎖が何本も続く急傾斜の道だった。ひたすら休みながら、明日に疲れを残さないように登り、5時15分、ようやく山頂小屋に到着した。アルペン気分満点の面白いルートだったが、最後の登りはちょっときつい。
 さて、このルートで見つけた目玉の稀少植物は、ひとつは前述のムシトリスミレだが、もうひとつ、イチヨウランを発見した。イチヨウラン自体はおそらくは探せばあるのだろうが、ほとんどが1~2本ポツポツと咲く程度だ。しかし、この株は7本がかたまって咲いていた。こんなにたくさん並んでいるのを見たことがある人はほとんどいないのでは?この日一番の収穫だった。(2日目に続く)

    イチヨウラン(一葉蘭)


    7株も固まって咲いていた。こんなにたくさん咲いているのを見たことがありますか?
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