ロシアは年内にも、危険な軍事活動の防止に関する協定を北朝鮮と結ぶ可能性がある。ロシア連邦下院(国家会議)のセルゲイ・ナルイシキン議長が623日にこのように話した。この協定が結ばれれば、両国の国境付近で武力衝突を防ぐために、細心の注意を払うことが両国の義務となる。 

 

協定の目的

 この協定がなぜ必要なのかについて、専門家の意見は異なる。「これは国際的には標準的な協定で、信頼のレベルを高めるために、友好国の間で結ばれるもの」と話すのは、ロシア科学アカデミー経済研究所ロシア・アジア戦略センターのゲオルギー・トロラヤ所長。

 別の専門家は、密猟者防止の問題、韓国とアメリカの合同演習への対抗、または韓国の一部組織がロシアの領土を使いながら北朝鮮の情勢の不安定化を試みているなどといった点を、協定の理由としている。「これは李明博大統領時代にあったような政府のプロジェクトではないが、アメリカの爆撃で助けなければならないプロテスタントのキリスト教の抵抗が北朝鮮にあるとの印象を植え付けたがっている勢力が存在する」と匿名希望の専門家がロシアNOWに説明した。

 それでも、この協定が安定傾向の一部であることに、どの専門家も同意している。ロシア科学アカデミー東洋学研究所朝鮮・モンゴル部のアレクサンドル・ヴォロンツォフ部長はこう話す。「ロシアと北朝鮮が近づく理由の一つは、ロシアの全体的な東洋への転向。朝鮮半島も、東アジアにロシアが融合する重要な要素の一つとみなされている。トランポリンのようなもの」

 

北朝鮮のインフラ

 関係は政治分野だけでなく、経済分野でも発展している。ロシアの経済界は北朝鮮の鉱物資源に関心を持ち始めた。また、ロシアは北朝鮮で、長期的なインフラ・プロジェクトを実施している。

 ヴォロンツォフ部長によると、そのようなプロジェクトの中には、ロシアの沿海地方と北朝鮮の羅津港を結ぶハサン(ロシア)と羅先(北朝鮮)の鉄道がある。「『ロシア鉄道』社はこの港の埠頭の一つを49年契約で借り、刷新し、他の国への貨物輸出のために使用している。 将来的には、シベリア鉄道を経由した韓国の釜山から西ヨーロッパまでの輸送路創設の話になってくる」とヴォロンツォフ部長。また、北朝鮮を経由してロシアから韓国にガスパイプラインと送電網を建設することも計画されている。

 

中国は反対しておらず

 欧米諸国が北朝鮮政権との関係を改善してはならないと呼びかけているが、ロシアは反応していない。「ロシアが北朝鮮から距離を置いた時、その真空部分はすぐに他の国によって埋められ、ロシアの利益に影響があった。アメリカと韓国は1990年代、ロシアに北朝鮮との関係を断って圧力をかけてほしいと頼み、ロシアはそれに一部応じた。だが、北朝鮮の核問題の解決を目指す席にロシアが参加しなければいけなくなった時、アメリカと韓国は、ロシアには北朝鮮への影響力が十分にないとして、ロシア抜きで大丈夫だということをほのめかした。ロシア政府にとってこれは良い教訓となった」とトロラヤ所長。

 北朝鮮はロシアを中国のカウンターバランスとして使いたがっているため、関係正常化に興味を持っている。一部の専門家は、ロシアと北朝鮮が接近すれば、ロシアと中国の関係にマイナスの影響をおよぼすと考えている。しかしながら、懸念するまでもないようだ。ロシア科学アカデミー極東研究所朝鮮研究センターのコンスタンチン・アスモロフ主任研究員はこう話す。「中国は注意深く観察しているが、ロシアと北朝鮮の関係発展を積極的に妨げようとはしていない。中国政府はおそらく、自国の立場へのいかなる脅威にもならないことを理解しているのだろう」

 「ロシアと中国の可能性はまったく異なる。例えば、中国と北朝鮮の年間貿易額は60億ドル(約7200億円)に達するが、昨年のロシアと北朝鮮の貿易額はわずか1億ドル(約120億円)にすぎない」とヴォロンツォフ部長。