問3「ヒトの指差し」と指示語についても考えたまことさんは、次の【資料】を見つけ、傍線部「指さされたものが、話し手が示したいものと同一視できないケース」があることを知った。まことさんは、「話し手が地図上の地点を指さす」行為もこのケースに当てはまることに気付き、【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】に記された「指差し」の特徴から、なぜ「同一視できないケース」でも「話し手が示したいもの」を理解できるのかについての考えをまとめることにした。まことさんは、どのようにまとめたと考えられるか。後の(1)~(4)を満たすように書け。
【資料】
「話し手が何を指しているか」を明確に示すには、「あれ」「これ」「それ」のような指示詞や、「あの」「この」「その」を伴う一般名詞を使って、いわゆる「指さし」のジェスチャーを伴わせるのが有効です。しかし現実には、そうやって〈 指さされたものが、話し手が示したいものと同一視できないケース 〉がいくつかあります。一つには、指さしによって示されたものが、それ自体、文字や写真など「何かを表すもの」である場合です。たとえば、レストランのメニューに載っている料理の名前、あるいは料理の写真を指さして「これにしよう」と言った場合、「これ」で指示されているのは指さしの直接の対象である文字や写真そのものではなく、文字や写真が表している料理です。
(川添愛『自動人形の城 人工知能の意図理解をめぐる物語』による。)
注1 指示詞――「指示語」のこと。
(1) 二つの文に分けて、全体を八十字以上、百二十字以内で書くこと(句読点を含む)。
(2) 一文目は、「話し手が地図上の地点を指さす」行為が「指さされたものが、話し手が示したいものと同一視できないケース」であることを、【資料】に示されたメニューの例に当てはめて書くこと。
(3) 二文目は、聞き手が「話し手が示したいもの」を理解できる理由について書くこと。ただし、話し手と聞き手が地図の読み方について共通の理解をもっているという前提は書かなくてよい。
(4) 二文目は、「それが理解できるのは」で書き始め、「からである。」という文末で結ぶこと。
〈 資料の読み取り 〉
指さされたものが、話し手が示したいものと同一視できないケース
∥
指示されたもの=それ自体が「何かを表すもの」である場合 (例)文字・写真
具体例
「これにしよう」(指さす)→レストランのメニューの料理名or写真
↓
「これ」で指示されているもの
∥
文字や写真そのもの ではなく
↑
↓
文字や写真が表している料理
(2)一文目は、「話し手が地図上の地点を指さす」行為が「指さされたものが、話し手が示したいものと同一視できないケース」であることを、【資料】に示されたメニューの例に当てはめて書くこと。
〈 設問の指示と資料とを対応させる 〉
「ここに行きたい」「ここが好きだ」(指さす)→地図上の地点
「ここ」が指示するもの
∥
地図のその地点そのもの ではなく
↑
↓
地図が示している現実の土地や場所
〈 文章化する 〉
話し手が地図上の一点を指さした時、指示対象が地図そのものではなく、
現実のその土地や場所であることを聞き手は理解する。58字
(3)二文目は、聞き手が「話し手が示したいもの」を理解できる理由について書くこと。ただし、話し手と聞き手が地図の読み方について共通の理解をもっているという前提は書かなくてよい。
理由となる部分を、【文章Ⅰ】【文章Ⅱ】からさがす。
【文章Ⅰ】指差しで指示されている方向を見る
∥
見ている側は、指差した人間の位置に自分の身をおく
∥
「他者の視点に立つ」能力
【文章Ⅱ】対象がもたらす同一のイメージを持つ機会が提供される
↓
特定の対象への関心が共有される素地をはぐくむ
〈 文章化する 〉
それが理解できるのは、聞き手が無意識のうちに話し手の立場になり、
共有するイメージにもとづいて会話しているからである。58字
示された解答例
1 話し手が地図上の地点を指すことで、指示されているのは地図そのものではなく、地図が表している場所であることが聞き手には理解できる。それが理解できるのは、他者の視点に立つ能力があるからである。(95)
2 地図上の地点を指差して「ここに行きたい」と言った場合、「ここ」が示しているのは地図の実際の場所である。それが理解できるのは、指さした人間の位置に身を置くことで、指された人間が指さした人間と同一のイメージをもつことが可能になるからである。(119)
3 地図上の地点を指差して「ここに駅がある」と言った場合、「ここ」が示しているのは地図に対応している実際の駅である。それが理解できるのは、指された人間が指さした人間の視点に立つことで、実際に示したいものを想像するからである。(111)