水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

新共通テスト試行「国語」第一問 記述式(2)

2018年12月10日 | 国語のお勉強(評論)

問2「ヒトはどのように言語を習得していくのか」という問題について考えを進めたまことさんは、【文章Ⅰ】の傍線部B「初期の指差しは、言語習得のひとつの重要な要素をなしている」ことについて、【文章Ⅱ】に詳しく述べられていることに気付いた。そこで、【文章Ⅱ】の内容を基に、子どもが「初期の指差し」によって言語を習得しようとする一般的な過程を次のようにノートに整理してみた。その過程が明らかになるように、空欄に当てはまる内容を四十字以内で書け(句読点を含む)。


【文章Ⅱ】
1 単語が意味を持つとは、指示対象が存在することを表している。名詞ならば、意味する事物が外界に存在する。子どもは「リ・ン・ゴ」と教わって、「リ・ン・ゴ」といえるようになっても、音の組み合わせが、くだんの赤い果物と対応していることがわからないと、「ことば」を話せることにはならないのである。
2 だから言語を習得するのに、大人と子どもが対面してコミュニケートするばかりでは、不十分となってくる。一つの語彙を伝えるには、当のことばの指示対象が眼前になくてはならない。つまり指し示すものを面前にして、かつ大人と子どもがともにそれに注意を向けつつ、指示する語を伝達して初めて、ことばの意味が伝わる素地ができ上がるのだ。こういうように、周囲の大人の指示行為に理解が及ぶようになったとき、子どもは一般に、「三項関係が形成されるようになった」と発達上、呼ばれることが多い。
3 ただ、モデルである単語とその指示対象との対応関係の把握は、容易そうでいて実はさほどやさしい作業ではない。子どもの生活世界は、ものにあふれている。ある単語を耳にしたとき、彼らは無数の潜在的な指示対象の候補のなかから、適切な一つを選択しなければならないのである。しかも大人は、英語の先生が生徒にしてみせるように、本を手にとって“This is a book.”と教えてはくれない。
4 おのずと子どもの方から積極的に、「コレナニ」とたどたどしくとも答えを大人に求める必要に迫られることとなる。そこで、子どもが身体的動作による指示行動を行うようになるかどうか、ということが、言語習得の上でたいへん重要な意味を持つこととなる。だから「指さし」の形成が求められることとなる。
5 指さしとは、外界の対象物を定位しつつ腕を伸ばして「あれ」と指し示す行動のことである。地球上のおよそ八割以上の文化内で、人は人さし指を伸展させることで指示行動として用いているといわれている。この事実から、ヒトを他の生物から分かつ特徴の一つは、自分の身のまわりにある、さまざまな事物の存在を他者に伝達しうる点にあると、古くからいわれてきた。また、単に存在を伝えるばかりではない。対象を自己と他者がともに知覚し、対象がもたらす同一のイメージを持つ機会が提供される。結果として個々人の心のなかの認識世界に、何がしか互いに分かち合い、文化と呼べるような現象が芽ばえる素地が与えられる。特定の対象への関心が共有される素地をはぐくむ点で、指さし行動の出現は発達的にエポックメーキングな出来事と考えられるのである。
     (正高信男『子どもはことばをからだで覚える メロディから意味の世界へ』による。)


注1 エポックメーキング――画期的。新たに一つの時代を開くようなさま。



1 単語+指示対象→意味を持つ
     ∥
  リ・ン・ゴ+くだんの赤い果物→話せる


2 子ども
    ↓↑   ことばの指示対象=指し示すもの
  大人


3 子ども
   ある単語を耳にする
    ↓
   無数の指示対象から一つを選択する
 しかも
   大人は、本を手にとって“This is a book.”と教えてはくれない。
    ∥
   指示対象を手にしてそれを表す単語を発してくれない
    ↓
4 「コレナニ」と大人に聞く必要に迫られる
   ↓
  身体的動作による指示行動を行う = 指さし  言語習得の基盤


5 指さし……外界の対象物を定位しつつ腕を伸ばして「あれ」と指し示す行動
               ∥
  ヒトを他の生物から分かつ特徴
       ∥ 
  対象がもたらす同一のイメージが提供
       ∥
  特定の対象への関心が共有される


  指さし行動の出現……発達的にエポックメーキング



   【初期の指差しと言語習得】
  ある単語を耳にする。
     ↓
  子どもは無数の候補の中から適切な一つを選ぶ必要が生じる。
  しかも
  大人は(     )
         ↓
  だから子どもは積極的に指差しをする。



 第3形式段落を、箇条書きにまとめられるかという主旨の問題。


日常生活のなかで
子どもがある単語を耳にする
大人はそれすべてを指さしながら話すわけではない
だから、自分で指さしをしないといけない


という内容だから、


(大人は)指示対象のものを指し示しながら、単語を発するわけではない
(大人は)単語を発しながら、対応するものを一々提示してくれない


とまとめればいい。


【示された解答例】
  1 自分から指示対象を指し示して、単語との対応関係を教えてはくれない。(33)
 2 適切な対象を手にとって「これが単語に対応するものだ」と教えてはくれない。(36)
 3 英語の先生がするように、本を手にとって「これが本だ」と教えてはくれない。(36)



 3はほんとうにいいのかな。「This is a pen.」の話は具体例の一つだから、
 今までの国語の試験なら3と1が同じ評価とは思えないが、新テストは大丈夫みたいだ。

コメント
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