学年だより「根拠なき自信(2)」
転機となった出来事は? と問われ、Hikaruは2011年のライブツアーをあげる。
東日本大震災後、活動を自粛するミュージシャンも多い中、歌を届けに行こうと彼女たちは決意する。そのツアーの中にHikaruの故郷富山公演があった。
郷里で初めて行われたライブ。「おかえり、ひかるちゃん」の声があふれる温かい会場。
「ただいま! 上の方も見えとるよ、ありがとう」と声をつまらせるHikaru。
「みなさん、Hikaruを育ててありがとう!」と叫ぶWakanaの横で号泣しているKeiko。
映画のなかで最も心打たれたシーンの一つだ。
~ ――今、10年前の自分に声をかけるとしたら、何と言いたいですか?
Keiko 私は「大丈夫だよ」ですね。「これからいろんなものに触れて、自分の人生が、人との出会いで生まれるから。大丈夫だよ」って。先ほども言ったように、人に興味を示して、人のことを知りたいって思えるようになったのは、WakanaとHikaruがいてくれたから。人へ接し方が、すごく変わりました。 ~
2018日1月23日。記録的な大雪の翌日。武道館十周年コンサート。
実はカラフィナは、プロデューサー梶浦由記さんが所属事務所を離れた関係で、その後の活動をどうしていくか模索中の時期でもあった。
しかし、3人が築いてきた十年と、メンバー同士の信頼は揺るぎないものだった。
武道館を埋め尽くした客に手をふる3人の姿には、10年を支えてくれたファンへの感謝、積み重ねてきた過去への自信、どんな形であれ歌い続けるんだという強い意志が見てとれた。
自分達がどんな道を進もうとしているのかイメージできなかった10年前のとまどいは、微塵も感じられない。
目指す方向性は合っているのだろうか、「売れる」のだろうかと悩んでいるヒマもなく走ってきた年月があるからこそ、たどりつくことができた境地だ。
「ドラえもん」に、「みこみ予ほう機(見込み予報機)」というアイテムが出てくる。
自分が何かしたいと思ったことの実現可能性を判定してくれる機械だ。
たとえば、のび太が「こづかいを上げてもらえるみこみはあるかしら?」と訊ねると、予ほう機は「アッカンベー」をする。
見込みがあるときは「プップクプー」とラッパが鳴り、ないときは「アッカンベー」だ。
のび太が聞く。
「すごくむずかしい宿題、できるみこみはあるかな」。「アッカンベー」
「このプラモをうまくつくれるかな」。「ベー」。
スネオのパパが聞く「この宝くじは当たるかな」。「ベー」。
ジャイアンが聞く「教えてほしい、おれが歌手になれるかどうか」。「ベー、ベー、ベー」。
予ほう機の答えのほとんどは「アッカンベー」だ。
なぜか。そんな質問をしているようでは「アッカンベー」なのだ。