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水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

神様メール(1)

2016年06月06日 | 学年だよりなど

 

  学年だより「神様メール」


 最近知ったのだが、神様のお住まいは、ベルギーのブリュッセルにあるそうだ。
 市内のあるアパートの一室に籠もり、神は自分のパソコンで世界を作り出し、街をつくった。
 それだけでは寂しいので動物を作り、人間を作りたもうた。
 それでもまだ面白くないので、人間に不幸や不安を与えることにした。
 神は、綿密に不幸・不快のの法則を作り出す。
 「1429条:最初に好きになった人といっしょにはなれない」「1550条:悪いことは必ず続けて起きる」「1726条:パンは必ずジャムを塗った側が下になって落ちる」「2011条:スーパーの列は自分が並んだのと違う列が早く進む」 … 。
 こういう法則を、神様は嬉々として作り、エンターキーを押し続ける。
 執務室には、世界のジオラマもある。その上からじょうろで雨を降らしたり、火を点けて燃やしてみたり、飛行機を落としてみたり、バスを転落させてみたり … 。
 レールの上を快調に走る列車が、狙ったポイントで「見事に」脱線すると「もう職人芸だな」とほくそえむ。つまり、これが人間界に起きる自然の大災害や大事故、大惨事なのだ。
 そして「おお神よ」と嘆く人間たちをパソコンの画面で確認し、大笑いをする。
 そんな悪趣味な神の所業を、娘のエマは見つけてしまった。
 日頃から母親や自分に対して横暴な「父」を、エマは嫌っていた。ただでさえ嫌いなうえに、父が何をやっているのかを知ったエマは我慢できない。
 夕飯のテーブルにつくものの、父親を憎々しげににらんでしまう。
 「何か、言いたいことがあるのか。おれをにらむな!」 「最低!」
 「なんだと!」 「ああやって、みんなを不幸にして楽しいの?」
 「おまえ書斎に入ったな。許さん!」
 逃げる娘をおいかけ、捕まえてお仕置きをする神。エマは家を出ることを決意する。
 人間界への行き方は亡くなった兄のJC(イエス・キリスト)に教えてもらった。
 洗濯機を40度のやわらか洗いにセットしてドラムに入り、数時間這っていけば人間界のコインランドリーに出られると。
 パソコンがなければ神は何もできないことを、エマは知っていた。
 その夜も、神はいつもどおりビールを飲んで泥酔し、眠りこけている。
 エアは、神の腰にぶらさがっている鍵を抜き取り、書斎に入る。
 パソコンの前に座ると、人間たち全員のスマホに向けて、それぞれの「余命情報」を発信する。
 再起動できないようにしてパソコンを閉じると、お風呂場の洗濯機に入る。
 驚いたのは人間たちだった。
 突然差出人不明のメールが届く。そこには「あなたの余命は残り5年二ヶ月です」「22年と8ヶ月です」「84時間です」と書いてある。
 表示された数字は、そのままカウントダウンを開始し、余命を表示し続ける。
 いったい誰がこんな悪質ないたずらを行ったのか。
 世界中で問題になり、犯人捜しも行われるが解明できない。
 送られたメールがすべて現実であることを人々が気づくのに、時間はかからなかった。

コメント
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