Weekend Strummer

ウィークエンド・ストラマー。
世間知らずのオジサンが脈絡無く語る、ギター・アフリカ・自閉症。

丁寧な食事

2020-07-22 12:40:52 | 自閉症

落ちている1円玉を拾うのに必要な運動量をコストとして計算すると1円よりもはるかに高くなってしまうのだそうです。なので、地面に落ちている1円玉を見つけても拾わずに通り過ぎる方が損をしないで済むらしい。
私はたとえ1円であろうと天下の通用金が落ちていれば絶対に拾います。
そんな私でありますが、実は茶碗にご飯粒を残してしまう癖があります。ご飯のカタマリを大口開けてわしわしと食べるのは大好きなんですが、茶碗にくっついたご飯粒をチマチマ取るのはなんか面倒くさいんです。仕事に見合うだけの儲けにつながらない気がする。

ところで自閉症の娘は普通の箸を使うほど手先が器用ではないので、介護用の箸を愛用しております。
単純なピンセット状の構造をしている箸で、箸本(というのでしょうか)が金属製のバネでつながっており、親指と人差し指で箸先を閉じて食べ物を摘むようになっております。試しに使ってみたことがあるのですが、使い易くできているはずの介護用箸が、普通の箸に慣れている私にはなぜか使いづらい。不必要に力を込めてしまうせいでしょうか、箸先はそろわないし肩は凝るし、変な例えですが、補助輪のついた自転車に乗ることに似た不便さがあります。

娘は幼い頃からずっと使っている愛用の介護箸で茶碗からご飯を食べ、食事の終盤には茶碗に着いたご飯粒を器用に一つづつ丁寧に摘み取って口に運びます。その丁寧さに見合わぬほどの速いスピードでリズミカルにヒョイパクヒョイパクと、一粒残さず全て食べてしまう。ご飯茶碗だけでなく、おかずが載っていた皿の上などもきれいに平らげ、食後は何も残っていない状態になります(たぶん強迫観念:不完全恐怖による行動の一種ではないかと思います)。

食事の作法など何も身に着けていない娘ですが、少なくとも食後の食卓を見ると気持ちの良い食べっぷりです。

私も真似することにしました。
食事の終盤、軽く興奮していた食事中の心理を落ち着かせ、食器を観察します。茶碗に着いたご飯粒や取り皿に残った料理のかけら(それはキャベツのごく小さな切れ端だったり、薬味に使われたゴマの一粒だったりします)。そういったものを箸で摘み取って口に運びます。老眼鏡をかけて真面目に向き合う仕事です。
食物ではなく食器に注意を向け、一つ一つの食器をきれいにするつもりで食べると目的が見えてきて更に冷静に取り組むことができます。箸で摘めるものは残さずすべて取りつくします。汚れのように皿に散った七味唐辛子なども、箸先で集めて成形すると挟むことができます。

食後の食卓は空の食器だけが並び、ささやかな達成感と清々しさを感じるようになりました。
なんだか禅寺の食事のようです。食う即是色。

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