Don't Let Me Down

日々の雑感、引用。
言葉とイメージと音から喚起されるもの。

20世紀思想史と“コンステラチオン”

2013-11-12 14:53:50 | 日記

★ 今はっきり言えることは、筆者が一貫して向き合ってきたのは、20世紀における思想史の時間軸に沿ったプロセスではなく、一つの「布置状況」(コンステラチオン)の問題性だった、ということである。「コンステラチオン」(Konstellation)とは、ベンヤミンによって占星術の用語から発掘され、マンハイムによって知識社会学的に歪曲されはしたが、アドルノに受け継がれて展開深化された方法的な視点である。日本語に訳すとすれば、状況とか布置状況とか星位とか訳すほかないようだが、これはたんに複数の要因が関連し合っている客観的状況をさすのではない。

★ コンステラチオンが独自の方法的視点を示す術語でありうるのは、それがたんなる客観状勢ではなく、第一に、それが主観と客観との相互作用として捉えられる弁証法的過程の断面として主観的契機と切り離すことができず、第二に過去と現在との相互浸透という形で、瞬間のイメージの裡に、両者が同時に透視される、という所にある。

★ ちょうど北斗七星などの布置のうちに、それぞれの星の何億光年という距離の落差が一つの平面として投影されるように、20世紀の思想史のその時々の断面のうちには、太古以来の主体性の原史が、人間の生と死が、栄光と悲惨に充ちた過去と空白の未来とが、同時に投影されていると言えよう。

★ この本で取り上げられている思想の諸断面は、それが個々の思想家に個体化され、あるいは何十年代という時期に分節されてはいても、じつはこういう一つなる布置状況(コンステラチオン)へのその時々での集中と応答を表わしている。この布置状況が続くかぎり、またそれを超える地平の彼方を先走って不当に覗くことが許されないかぎり、それら個々の応答が古びるということはありえない。

<徳永恂『社会哲学の復権』(講談社学術文庫1996)学術文庫版まえがき>



★ 過去がその光を現在に投射するのでも、また現在が過去にその光を投げかけるのでもない。そうではなく形象の中でこそ、かつてあったものはこの今と閃光のごとく一瞬に出会い、ひとつの状況(コンステラツィオーン)を作り上げるのである。言い換えれば、形象は静止状態の弁証法である。なぜならば、現在が過去に対して持つ関係は、純粋に時間的・連続的なものあるが、かつてあったものがこの今に対して持つ関係は弁証法的だからである。それは時間的な性質のものではなく、形象的な性質のものである。弁証法的な形象のみが真に歴史的な――ということはアルカイックではない――形象なのである。解読された形象、すなわち認識が可能となるこの今における形象は、すべての解読の根底にある、批判的・危機的で、危険な瞬間の刻印を最高度に帯びているのだ。

★ 知的機敏さと弁証法的唯物論の「方法」とのあいだの関係を打ち立てねばならない。事実に則した振る舞いの最高の形式のひとつである知的機敏さに、つねに弁証法的プロセスがあることを証明しうるだけでは十分ではない。それ以上に決定的なことは、弁証法的に考える人間は歴史を危機の状況(コンステラツィオーン)としてしか見ることができないということである。彼は、この状況の展開を思考によって追いながら、いつもその向きをそらそうとして跳躍を準備している。

<ヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論』第3巻(岩波現代文庫2003)>






“どちらともいえない”ヒトへ

2013-11-12 11:32:11 | 日記

昨夜、たまたま以下に引用する“ニュース”をテレビで見た。

ぼくが驚いたのは、その最後にある《「特定秘密保護法案」について、政府が、安全保障などの情報を外国と共有するために必要だとしているのに対し、国民の『知る権利』が侵害される可能性があるという指摘も出ていますが、法案が必要かどうか聞いたところ、「必要だ」が25%、「必要でない」が16%、「どちらともいえない」が48%でした。》という部分。

いったいぜんたいこの“どちらともいえない”というのは、どういういう意味(判断)なんでしょうか?

A:「特定秘密保護法案」がなんであるかが、“わからない”という意味でしょうか?
B:「特定秘密保護法案」には、良い面と悪い面がある(と思える)ので、“どちらともいえない”のでしょうか。

もしAであるなら、「特定秘密保護法案」についてもっと知るように努力することは、いくらでもできるはず。
もしBであるなら、自分が“判断を保留する”ことが、いかなる結果を招くかを“内省”する必要がある。

“情報”と“意見”は、あふれているじゃありませんか。
“あなた”は、その情報を受け取り、他者とその多数の情報について話し合い、さらに自分の問題としてそれを吟味し、さらに自分の“感覚”を信じて、判断すべきではないんですか?

ぼくは、「特定秘密保護法案」“だけ”について言っているのではありません。

そうでなければ、“あなた”は、永久に(死ぬまで)、時流に流されるだけで終る;


<NHK世調安倍内閣支持60%> NHKニュース11月11日 19時26分

NHKが行った世論調査によりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は60%、「支持しない」と答えた人は25%でした。
NHKは、今月8日から3日間、全国の20歳以上の男女を対象に、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行いました。
調査の対象となったのは、1641人で、63%に当たる1027人から回答を得ました。
それによりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は先月より2ポイント上がって60%でした。
一方、「支持しない」と答えた人は、1ポイント下がって25%でした。
支持する理由では、「他の内閣よりよさそうだから」が35%、「実行力があるから」と「政策に期待が持てるから」が20%だったのに対し、支持しない理由では、「政策に期待が持てないから」が43%、「人柄が信頼できないから」が16%、「支持する政党の内閣でないから」が12%などとなっています。
次に、6つの政策課題を挙げて、国が今、最も力を入れて取り組むべきだと思うことを聞いたところ、「原発への対応」と「景気対策」が21%、「社会保障制度の見直し」が18%、「東日本大震災からの復興」が14%、「財政再建」が10%、「外交・安全保障」が8%でした。
安倍内閣の経済政策を評価するか尋ねたところ、「大いに評価する」が9%、「ある程度評価する」が55%、「あまり評価しない」が24%、「まったく評価しない」が8%でした。
一方、景気が回復していると感じるかどうかについては、「感じる」が14%、「感じない」が47%、「どちらともいえない」が36%でした。
原子力発電を巡って、国の原子力規制委員会が安全性を確認した原発の運転再開を進めるという政府の方針に賛成かどうか聞いたところ、「賛成」が19%、「反対」が44%、「どちらともいえない」が33%でした。
自民・公明両党が、原発事故の放射性物質の除染や汚染水対策などに必要な資金を、国が負担できるようにすることを提言したことについて、国がこれに沿って対応すべきだと思うか尋ねたところ、「思う」が63%、「思わない」が6%、「どちらともいえない」が27%でした。
政府が今の国会で成立を目指している「特定秘密保護法案」の内容を知っているかどうか聞いたところ、「よく知っている」が3%、「ある程度知っている」が33%だったのに対し、「あまり知らない」が43%、「まったく知らない」が18%で、「知っている」と答えた人は、先月より10ポイント以上増えました。
また、「特定秘密保護法案」について、政府が、安全保障などの情報を外国と共有するために必要だとしているのに対し、国民の『知る権利』が侵害される可能性があるという指摘も出ていますが、法案が必要かどうか聞いたところ、「必要だ」が25%、「必要でない」が16%、「どちらともいえない」が48%でした


<参考1>

<「特定秘密保護法案」は報道の自由及び民主主義の根本を脅かす悪法であり、撤回、または大幅修正を勧告します。>

日本外国特派員協会は現在日本の国会で審議中の「特定秘密保護法案」に深い懸念を持っています。我々が特に懸念を抱いているのは、記者を標的にして起訴と懲役刑の対象にしかねない同法案の条文び与党議員の一部がそれに順ずる発言です。
開かれた社会においては、政府と政治家の活動に関する秘密を明らかにして、国民に知らせることが調査報道の真髄であります。
調査報道は犯罪行為ではなく、むしろ民主主義の抑制と均衡のシステムに不可欠な役割を果たしています。
本法案の条文によれば、報道の自由はもはや憲法に規定されている権利ではなく、政府高官が「充分な配慮を示すべき」案件に過ぎなくなっていることを示唆しているようにとらえても無理はないのです。
その上、「特定秘密保護法案」は政府の政策に関する取材でも「不適切な方法」を用いてはならない、とジャーナリストに対する脅し文句も含まれています。これは、報道メディアに対する直接的な威嚇の如しであり、個別のケースにおいて許せないほどに拡大解釈ができるようになっています。このような曖昧な文面は事実上、政府・官僚は存分にジャーナリストを起訴することができるよう、お墨付きを与えることになります。
日本外国特派員協会の会員は日本国籍も外国籍も含まれています。しかし、1945年に設立された由緒ある当協会は常に報道の自由と情報の自由な交換が、日本と諸外国との友好関係や相互理解を維持増進するための、不可欠な手段と考えてまいりました。
その観点から、国会の方々へ「特定秘密保護法案」を全面的に撤回するか、または将来の日本国の民主主義と報道活動への脅威を無くすよう大幅な改訂を勧告いたします。
ルーシー・バーミンガム日本外国特派員協会々長 平成25年11月11日

(レイバーネット)


<参考2>

<秘密保護法案を問う 歴史研究> 毎日新聞社説  2013年11月12日 02時31分

◇検証の手立てを失う
特定秘密保護法案は、国民の共通の財産であるべき公文書の保管、公開を著しく阻害する恐れがある。これでは、政府は後世の歴史的審判を逃れてしまいかねない。
歴史の検証に欠落ができてしまうのは、すべての国民にとっての損失だ。私たちは、政治や社会の有りようを将来の歴史的審判にゆだねなければならない。それでこそ、人類は歴史から教訓を学びとり、未来を思い描くこともできるのだ。
歴史学の6団体の代表がこのほど、特定秘密保護法案に反対する声明を出した。同時代史学会代表の吉田裕(ゆたか)・一橋大大学院教授は、公文書にアクセスしにくくなるうえ、廃棄される危険を指摘する。
また、「オーラル・ヒストリー」(政治家や官僚に直接に話を聞き、記録する手法)もやりにくくなると懸念する。聞き取りの対象者は慎重になり、研究者も萎縮しかねない。
近年盛んになった「オーラル・ヒストリー」は文書史料では得にくい歴史的真実を浮き彫りにする成果を収めている。たとえば、「聞き書 野中広務回顧録」(御厨貴(みくりやたかし)、牧原出(まきはらいづる)編・岩波書店)もその一つだろう。歴代内閣を裏で支えた元自民党幹事長の証言は、新しい事実も交えて、生々しく政治状況を描き出している。こうした貴重な記録を残せないのでは、大きな損失だ。
一方、民主党政権によって、日米密約に関する外交文書がなくなってしまった問題が調査された。不自然な欠落があることが外務省の有識者委員会で報告された。そのうえ、元外務省条約局長は国会で、核持ち込みなどの関連文書の一部が破棄された可能性を指摘した。
こんなことを繰り返すと、歴史研究が偏ったものになってしまう。
アメリカや英国では国家秘密も一定期間を過ぎれば公開される原則がある。日本で公文書が公開されないと、歴史家は外国の史料を中心にして、日本の外交を検証するしかない。それでは見方が一方的になりかねない。歴史とは多角的に光をあてることで、全体像が見えてくるものだ。
こういった懸念を払拭(ふっしょく)するには、特定秘密も一定年数を経ると公開する原則を定めることや、秘密指定の妥当性について第三者機関がチェックする仕組みが必要だ。
歴史研究が妨げられることは単に専門家たちの問題ではない。研究の積み重ねが、やがて教科書にも生かされ、国民全体に共有されていく。現代の専門家が困ることは、未来の国民が困ることにつながる。