Don't Let Me Down

日々の雑感、引用。
言葉とイメージと音から喚起されるもの。

私事と歴史的瞬間

2013-11-07 23:09:51 | 日記

★ 辺見庸ブログ“私事片々” (2013/11/07)

・ まだ雨がふっている。雨があがったらエベレストに行こう。けふは特別の日だ。肌膚(きふ)の粟を生ずるを覚えなければならない日だ。まさに慴然とすべき日である。マジ、そうおもふ。このところずっと毎日が「特別の日」だ。新聞とテレビと、可視空間のすみずみまではりめぐらされた大小あらゆる種類のメディアは、「特別の歴史」という観念を総がかりで消しつぶしにかかってくる。けふもけふとて、幼児虐待、いじめ自殺、死体遺棄、育児放棄、食品偽装、あなたにおすすめの商品、「オバマ大統領とツィ―トしませんか」、「痔」切らずに直る!、口臭・加齢臭消えたあ!、1週間で10キロやせたあ!、競馬・競輪・競艇・パチンコ・宝くじ、1%富裕層への道、UPGRADE TO PREMIUM!  No more commercials!・・・のジョーホーであふれかえり、「特別の歴史」は手もなくかき消される。ハンナ・アーレントの母マルタが、幼いハンナにむかって叫んだという「よく注意しなさい、これは歴史的瞬間です!」という「悟性の声」は、いま耳を澄ましてもどこにもない。日本版NSC(国家安全保障会議)の設置法案の修正案が、6日の衆議院特別委員会で、与党と民主党などの賛成多数で可決され、けふ、衆議院を通過した。特定秘密保護法案もけふの衆院本会議で審議入りした。沖縄・宮古島に、陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾がはじめて上陸した。陸海空自衛隊による戦争演習のいっかんで、射程百数十kmの88式地対艦誘導弾は沖縄本島にも展開する。今回の演習は、隊員3万4,000人、艦艇6隻、航空機およそ380機が参加して、離島防衛が主な目的なそうな。「月々スマホ990円特割!」の広告といっしょに「歴史的瞬間」が藻屑のように流されてゆく。(雨があがった。アランはいまエベレスト登攀から無事もどってまいりました! 幼稚園生とその親たちから不審者かテロリストのようにジロジロ見られました。だって、目つきはわるひし、昼日中ホームレスのやうなかっこうをしてビッコひきひき通学路をあるき、自民公明を反動の巨大巣窟、民主党を裏切り者と偽善者と低脳だらけのニセガネ政党となじり、共産党までインチキ呼ばわりするんですもの、アラン、当然じゃありませんこと? あなたこそ正真正銘のフシンシャよ!)20世紀の全体主義は20世紀大衆社会の病理を発生源としたのだとしたら、21世紀現在のこの大激変はなにを発生源とし、なにが未来に予定されているのだろうか。近代以降、みずからを堂々「侵略者」と名のり戦争を発動した国家などない。ニッポン軍国主義、ナチス・ドイツさえもが「祖国防衛」を口実に侵略戦争を展開し、まつろわぬ自国民(ニッポンは当時から大部分のひとびととメディアが権力にまつらふ一方であったが・・・)を徹底的に弾圧したのだった。J-NSCは今後、まちがいなく「戦争」と「監視」と「謀略」の司令塔として拡大、発展するだらう。メディアと人民がそれを支えるであらう。J-NSC構想は第一次安倍政権時代の「チーム安倍ちゃん」による事実上のクーデター計画であった。問題は、これが第一次安倍政権が瓦解したあとも、ニセガネ民主党の菅・野田政権によりしっかり継承され、衆院選で政権交代するよりもまへに、J-NSCの設置がすでにして事実上きまっていたこと。そして、秘密保護法の法制化も陰に陽にすすめられてきた事実だ。自公の反動はおのずと明らかである。しかし、民主党とは、おい、菅よ、辻本よ、千葉景子よ、あなたがたはいったいなんだったのだ。死刑もやります。憲法も破壊します。戦時体制もつくります。自公に反対するふりもします、だったのか。「わたしたちはいまだかつてひとりの人間にもであったことがない。権力亡者の<猿の影>につまずいただけだ」ったか。新旧のファシズムはその内部にニセの<反ファシズム>を包含してきたし、今後もそうであろう。そして、きのふも、けふも、明日も、「歴史的瞬間」がうちつづき、サムライ・ニッポンはいとど勇ましくなっていく。わたしはJ-NSCに反対する

(以上引用)