Don't Let Me Down

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戦争国家への道;あなたは、ほんとうに戦争をしたいか?

2013-11-11 10:47:31 | 日記

<イラク派兵の実態と「特定秘密保護法」> 弁護士川口創のブログ 2013/11/10

2003年、イラク戦争はアメリカによる一方的な攻撃で始まった。日本は世界に先駆けてアメリを支持し、イラク特措法を作り、2004年から本格的に自衛隊をイラクに派兵した。
国は、イラク派兵の実態について、「人道支援」という宣伝をするばかりで、その実態を明らかにするように求める情報公開請求に対しては、「墨塗り」の書面を出しつづけ、イラク派兵の実態を国民に隠蔽し、欺き続けた。

その中で、我々イラク派兵差し止め訴訟弁護団は、独自の情報収集をした。また、中日新聞・東京新聞など、一部のジャーナリストが精力的にイラクでの航空自衛隊の活動の実態を取材をし、報道を続けた。そういった積み重ねの上で、2006年7月に陸上自衛隊が撤退したと同時にこっそりと始まった、航空自衛隊によるバグダッドへの輸送活動の実態が、武装米兵の輸送であることが分かった。

そして、バグダッドが当時、激しい戦闘地域であり、その最前線に武装した米兵を多数送り込むことが、米軍との「武力行使一体化」にあたる、として、2008年4月の名古屋高裁は憲法9条1項違反の判決をおこなった。

仮に、「特定秘密保護法」ができていれば、我々の情報収集も、また、中日新聞・東京新聞の取材活動も、処罰の対象となりかねなかったのではないだろうか。イラク派兵の実態は隠蔽されたままで、当然違憲判決なども出ることがなかったであろう。

2008年4月に違憲判決があり、当初、政府はこの判決を軽視する発言を繰り返していたが、2008年の年末には、イラクから自衛隊を完全撤退させた。
憲法9条が力を発揮したと言って良い。

名古屋高裁が憲法9条違反の判決を示したのは、原告側がイラクでの自衛隊の活動を詳細に証拠として提出したからである。その証拠は、我々原告弁護団がイラク隣国ヨルダンへの調査を行うなどによって独自に入手したものもあれば、中日新聞・東京新聞の優れた記者達が地道な取材活動によって入手したものもある。

こうした情報は、「外交・防衛」に当たるため、特定秘密に指定され、入手できなくなる。そうであれば、憲法違反の事実が海外で積み重ねられたとしても、情報入手ができない以上、憲法9条を活かす訴訟自体が不可能となり、憲法9条は空文化してしまう。

さらに、違憲判決から1年あまり経った2009年10月、国はそれまでほぼ全面的に墨塗りに形でしか「開示」してこなかった航空自衛隊の活動実績について、全面的に開示をしてきた。
その「全面開示情報」から、航空自衛隊の輸送活動が、人道支援でも何でもなく、武装した米兵の輸送が多数に上っていたことが明らかとなった。
仮に特定秘密保護法があり、「特定秘密」に指定されていたとすれば、こうした情報が開示されることはなかったであろう。

安倍政権は、来年には、国家安全保障基本法まで制定を狙っている。
国家安全保障基本法は、集団的自衛権のみならず、海外での武力行使を全面的に解禁していくことにつながる法案であり、憲法9条を完全に空文化させしまう法案である。同法案では国民に対する「防衛協力努力義務」も課され、この基本法の下で作られて行くであろう様々な法律によって、戦争に反対すること自体が処罰対象となりかねない。

国家安全保障基本法の中には、秘密保護法制の制定と、日本版NSCの創設自体が明記されており、この国家安全保障基本法と、特定秘密保護法と、日本版NSC法とは、一体となって、日本を軍事国家に作り上げる法体系の基本として機能していくことが予定されている。

国家安全保障基本法は、まさに「平和憲法破壊基本法」である。
明文改憲手続きを経ることなく、憲法9条に規範を根こそぎ否定し、軍事中心の新たな国家体制を作り上げるのが、国家安全保障基本法であり、その大事な骨格となるのが、特定秘密保護法である。
このようなやり方が認められては、もはや我が国は立憲主義国家とは言えない。
しかし、現実には、内閣法制局長官のクビをすげ替え、集団的自衛権を容認する人物を「長官」として送り込んだ。

内閣法制局を握った安倍内閣は、一見「敵なし」である。
国家安全保障基本法も、来年、制定に向けて大きく動くであろう。
特定秘密保護法は、戦争国家への大きな第一歩である。

特定秘密保護法が出来れば、自衛隊が海外に派兵されても、もはやその活動実態について調査することは不可能になり、活動実態についての情報公開について国は応ずることもないだろう。

海外で自衛隊が憲法9条違反の行為をしていたとしても、その実態を私達が直接情報収集をしていくことは極めて困難になり、憲法9条違反の活動は国民に隠さてしまうだろう。 そして、国家安全保障基本法の下、9条違反の事実が次々積み重ねられ、その「事実」に合う形で「法律」が次々作られ、憲法9条は、明文改憲手続きを経ることなく、あってもなくても良い規定になってしまう。

特定秘密保護法は、単に「知る権利」云々、という問題にとどまらない。私達が今直面しているのは、「平和憲法」の危機であると同時に、「立憲主義」の危機である。

立憲主義を破壊する一連の「手口」に対して、大きく連帯していくべき時である
幸い、広汎な連帯を行う大きな素地が出来つつある。一見敵なしの安倍政権であるが、私たちも決して無力ではない。全力で戦争国家への「手口」を止めていこう