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書評「海辺のカフカ(村上春樹)」

2014-08-31 08:09:11 | 書評(文学)


本を読むのが好きだが、遅読だし、あまり読む時間がないのでたくさんは読めない。
私はおととい50歳になった。この先読める本の数なんて限られている。
だから読む本は、自分が本当に興味あるものに限っている。
そして、読みっぱなしにしないで、思いついたことをメモとして書き記して、少しでも血肉としたいと思うようになった。
だから、この書評を始めてみた。

村上春樹の海辺のカフカは、文庫上・下刊併せて約1000ページあり、長かった。
海外でも高い評価を受けているという。
15歳の少年、田村カフカと、老人ナカタさんの物語が並行して進んでいく。
カフカ少年は父から離れたい一心で中野区野方から家出し四国の図書館にたどり着く。
少年は父から、自分を殺して母親と交わるようにとインプットされる。
このあたりはエディプスコンプレックスのモチーフが入っている。
一方、ナカタさんは、カフカ少年の父であるジョニー・ウォーカーを殺して中野区を離れ、
やはり四国の図書館にたどり着く。

サイコパスであるジョニー・ウォーカーの家の冷凍庫には殺したネコの頭が並んでいる。
先日あった、佐世保の少女殺人事件の犯人の少女の家の冷蔵庫にも殺したネコの頭が入っていたと報道された。
この2つのことのあまりの一致におどろいてしまった。

カフカ少年は四国の図書館で、自分を捨てた母と思わしき佐伯さんと出会い交わるが、その後佐伯さんは死ぬ。
そして、おそらくナカタさんが「入り口の石」を開いたことにより、カフカ少年は謎の世界
(仏教でいう中陰、つなり死んであの世に行くときに通過する場所のようなところ)に入り込み、
こちらの世界には戻りたくないと思う。
そこで、少年は死んだ佐伯さんと会い、自分がカフカ少年を捨てたのは、恐怖から逃れるためであったこと、
カフカ少年を捨てたのは間違いであったことを伝えられ、自分のことを覚えていてほしいから
もとの世界で生きていきなさいと諭されて戻ってくる。
少年はこの世界で生きていくことを決心する。
サイコパスなるものからの呪いと決別し、死んだ母から必要とされていることを糧に生きていけると感じたのだろう。
成長物語ともいえる。

読んでいくと、思いもつかない方向にストーリーが展開していく。
そこがこの小説の魅力の一つかもしれない。
そして最後まで読んでも謎は謎として残されたままである。
あえて過剰な説明をしない、村上春樹流の小説の書き方だと思う。

音楽好きとして、気がついた点。
映画「ノルウェイの森」の音楽はレティオヘッドのジョニー・グリーンウッドが担当していたが、
カフカ少年のMDウォークマンには、レディオヘッドのキッドAが入っている。
この世とずれた異様な世界の雰囲気が小説にとても合っている。


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