下手の横好き日記

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貫井徳郎『誘拐症候群』

2011-01-18 23:59:59 | 
久しぶりに読んだ貫井作品は、症候群シリーズの第2作目です。
通常の警察の捜査が無効な犯罪を、超法規的捜査であぶりだす仕事をしているのは、
警視庁警務部人事二課の環敬吾が率いるメンバーたち。
非現実的な設定ですけど、そこが逆に面白いシリーズです。


突然誘拐された我が子・・・しかし身代金はひどく現実的な額で、
被害者の親たちは犯人の言うままに身代金を振り込んでいく。
やがてすぐに子供は解放されるが、犯人の念入りな脅迫に屈した親は警察には届けない。
一方、環のグループの托鉢僧・武藤は、托鉢中に知り合ったティッシュ配りの男と親交を持つ。
ところが、その男・高梨の赤ちゃんが自宅から誘拐され、1億円の要求が・・・


この作品には、大きく二つの「誘拐」が出てきます。
1つは、少額身代金を振り込ませる小口誘拐で、「ジーニアス」と名乗る男が首謀者。
ネットを駆使して前代未聞の誘拐を次々と成功させていきます。
知らない間に犯罪に加担してしまった女性の困惑と不安が、サスペンスフルです。

そしてもう一つは、1億という身代金を取ろうとする赤ちゃん誘拐事件。
ティッシュ配りをして生計を立てている絵本作家・高梨は、実は大企業の御曹司。
韓国人女性との結婚に反対する父親と絶縁し、自分の力で生きていこうと頑張っています。
しかし身代金が1億となると、その父親に頭を下げるしかないわけで。
身代金の運搬役に武藤が指名されていて、非常にスリルある展開になっています。

さて、この二つの誘拐事件を俯瞰して解決に導くのが環敬吾。
常に冷静で容赦のない作戦を立てる環ですが、
今回はそのスタイルに対して、武藤が葛藤します。
ここに来て、一気にキャラクター達にも興味が膨らんできました。
この症候群シリーズは三部作だということで、三作目の『殺人症候群』も楽しみです☆

それから、この作品はネット社会に対して、ある種の問題提起にもなっています。
作品が書かれたのはかなり昔なのですが、現在の状況も当てはまるかな・・・
そういう意味では娯楽要素と社会要素がうまくミックスされたミステリだと思います。
展開もハラハラ&ドキドキの連続ですし、一気に読めてしまいました♪

基本的には勧善懲悪の精神があふれた現代版「必殺」シリーズ。
方法はどうあれ、悪人がやっつけられるのは精神衛生上はいいですよね。
ただ、この作品の読後感にはちょっと辛いところもあります。
もう少し別の終わり方がなかったかと思いますが、仕方ないのかな・・・