下手の横好き日記

色々な趣味や興味に関する雑記を書いていきます。
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東野圭吾『学生街の殺人』

2011-01-10 20:08:39 | 
巷で話題のシリーズではなく、比較的初期の作品を読んでみました。


大学の門が移動したせいで、すっかり寂れてしまった旧学生街。
大学を卒業したものの就職しなかった津村光平は、ここのビリヤード場でバイトしている。
ある日、先輩店員・松木が殺され、光平はその第一発見者になる。
なぜ松木は殺されなければならなかったのか?
やがて事件は連続殺人となり、光平は否応なく事件の中心に・・・


昔なつかしい典型的なモラトリアム人間の光平。
この光平の漂わせている雰囲気に、どうにも既視感がありました。
なんとなく村上春樹ワールド・・・人間のたたずまいがそんな感じ。
1987年発表だから、まさに「ノルウェイの森」と同じ年の発表なんですけど、
その当時の若者っていうのは、そういう雰囲気だったんでしょうか?

ま、そんなことはさて置いて。
密室、アリバイ崩し、犯人当てなど、ミステリ要素はかなり楽しめる作品です。
光平たちの素人探偵ならではのたどたどしい調査の一方で、
ライバル(?)の敏腕刑事・香月のプロフェッショナルな捜査も見ることができ、
さらに、その二人がビリヤード対決!!
絵に描いたような展開なのですが、エンターテインメントですね☆

読後感は、幸福とは言えないのですが、
事件を通して光平が人間的に1つの壁を打ち破ったというところが、
この作品がミステリでありながら青春小説のたたずまいを持っている理由でしょうか。

このときの光平に、ある登場人物がいます。
「たぶん呪いが解けたのよ」
「あなたには何かの呪いがかかっていて、それで身動きがとれなくなっていたんだわ」
何の呪いかと気にする光平に彼女は答えます。
「学生街」

前へ進めなかった光平の状況を上手く表しているような場面だと思いました☆