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日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

『「仕事が終わらない」告発・過労死』しんぶん赤旗国民運動部(著)

2006年09月25日 | Book


『「仕事が終わらない」告発・過労死』という本を読みました。

遺族が「過労死」を被った被害者の勤務実態を調べ、裁判を起こし、損害賠償・慰謝料・労災認定を得ようとする過程を、共産党系の新聞記者たちが追ったものです。

共産主義の資本主義認識に間違いがあり、また彼らが理想とする国家・社会のイメージが人々を幸せにしないのは確かですが、社会の現状の問題点を指摘するという点では、一つの役割を担っているのかもしれません。

この本では、「過労死」に至った多くの従業員の方たちの事例が取り上げられています。内容自体は、どの事例も、いかに長時間の勤務に被害者が曝され、精神的・肉体的に追いつめられていたかを示しています。内容自体に初めて聞くようなものはありませんが、内容に新しさはなくとも、遺族の方たちにとってはこれ以上もない事実を突きつけられているのですから、その事実を取材することは重要なことでしょう。

ただ、取材の視点が、被害者が異常な長時間労働に曝され、「過労死」に至った後でも会社はその勤務実態を認めないというストーリーだけに固執しているがゆえに、本全体が単調であることは否めません。

もちろん被害者の方たちが過酷な状況に置かれていた事実を指摘することは重要なことだし、これからも必要なことだと思います。

ただ、だから「会社が悪い、会社が悪い」だけでは、問題に対する認識は深まらないだろうということ。

たしかに会社に問題があるのでしょうが、ではその「会社側」の人たちというのはどういうメンタリティで生きているのか?会社という組織には、一部の人だけを「過労死」に追い込み、他の一部の人は安楽に生活できるようなシステムになっているのか?それとも会社全体が「過労死」寸前で動いている組織なのか?そのように会社を追いつめている原因は何なのか?

そういった事柄への考察がないと、単なる「悪者」と「被害者」という図式しか出来上がりません。



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