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日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

『これからの10年 団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!』

2005年10月23日 | Book
 消費社会研究家、三浦展さんの『これからの10年 団塊ジュニア1400万人がコア市場になる!―マーケティング戦略の狙い目はここだ!』を読みました。現在の人々の生活スタイルの変化とそれにともなう消費欲求の特徴を分かりやすく解説してくれている本です。

たくさん興味深い指摘があるのですが、その中でも個人的に身に覚えのある感じが特にしたのは、「ニセ団塊世代」についての三浦さんの指摘でした。

三浦展さんは、「ニセ団塊ジュニア」と「真性団塊ジュニア」を分けています。すなわち、従来「団塊ジュニア」と呼ばれている1971-4年生まれの人たちの両親は、母親は団塊世代であっても父親はそれ以前の世代の場合が多く、彼らが育った家庭はまだ権威的な雰囲気に覆われていました。しかし75-9年生まれの人たちは両親ともに団塊世代以降の場合が多く、それだけ「自由」な、「友達的」な雰囲気の家庭で育った人が多いとのことです。

三浦さんによれば、本当に新しい感覚をもって消費・生活スタイルを作っているのは真性団塊ジュニアであって、従来企業が「団塊ジュニア」としてターゲットとしてきた「ニセ団塊ジュニア」は、むしろ閉塞感をもって生きているということです。

プリクラ・たまごっち・コギャル・iモード・ルーズソックス・パンツまで見せるほどジーンズを下げる男の子のだらしな系ファッションなどなど、思わず大人が眉をしかめてきた流行は真性団塊ジュニアが流行らしたんですね。

それに対してニセ団塊ジュニアは、男はファミコン・ガンダム・エヴァンゲリオンなどオタク的で暗く、女子は朝シャン・ラルフローレンのポロシャツ・紺のブレザーなど地味で堅実で清潔志向。

このニセ団塊ジュニアは大学受験では人数が多いため競争が激しく、東京の私大が軒並み偏差値が高かった世代です。やっと大学に入って就職をしてもバブルの崩壊で雇用情勢が厳しく、経済が急に暗くなった時代に働き始めました。

それ以前の「新人類」が右肩上がりの経済成長の中で物量的な消費を謳歌し、後続の真性団塊ジュニアが新しい感覚で消費・生活スタイルを作っていったのに対し、このニセ団塊ジュニアはひたすら受身的に時代に流されていった世代なんですね。それだけに彼らの消費スタイルは地味で、新しいムーヴメントの主役ではなく、時代の暗い面に翻弄され続けている世代です。

三浦さんの指摘では無印良品などのどこか地味で清潔的な消費を担ったのがニセ団塊ジュニアです(グサッ)。なぜなら時代の暗黒面に翻弄され続けたニセ団塊ジュニアは、癒しを求めて彷徨い続けているからです。三浦さんはこの世代を「雑貨や小物、インテリア、家具、あるいはマンガ、アニメなど、外見からはわかりにくいもの、部屋の中のもの、あるいは内面的なものに関心の強い世代だと言える」と述べています(172頁)。

たしかに無印良品・ロフトといった清潔で品がよく高過ぎないというイメージのものに僕は弱い。マクドナルドよりもモスバーガーだし、スタバよりもドトール・エクセルシオールのほうが落ち着くかも(スタバも好きだけど)。また、だらしな系ファッションやルーズソックスにはまったく共感しなかったけど、そういう規制破壊的なパワーは自分よりも後の世代のほうが強いのかも、とこの本を読むと確認させられます。

オタクと癒しというのは、ある面では時代が要請している現象であって、根っこはつながっているのかな。

ただ、三浦さんが言うような「ニセ団塊ジュニア」と「真性団塊ジュニア」がどれだけはっきり世代で分けられるかというと、もちろん微妙な部分も多いと思います。真性ジュニア以降でも内向的で地味で清潔志向な人たちを僕は知っているし、オタク・癒しといった特徴はある程度社会全体に共通する心性のようにも思います。

ただ、それでも自分の内面を新しいレンズで見るきっかけを与えてくれた面白い本でした。他にも消費と世代に関する面白い指摘がいっぱいの本です。


涼風

参考:三浦展さんの会社のHP

   「世代マーケティングの重要さ」『日々の生活から起きていることを観察しよう!! by ムギ』