陽だまりの中のなか

前田勉・秋田や詩のことなど思いつくまま、感じたまま・・・。

駒木 田鶴子詩集『雪の吐息』

2023-07-03 | 詩関係・その他

       

 駒木田鶴子(こまき たづこ)さんの第4詩集『雪の吐息』が刊行された。
 駒木さんは秋田県横手市住。秋田県現代詩人協会会員、日本詩人クラブ会員、詩誌「舟」同人。
 
 あとがきで、「六十歳で第一詩集を上梓してから第二、第三と、なぜか7年周期で出版してきた」が、
今回の詩集は13年ぶりになると記す。

 また、所属誌詩「舟」(岩手県滝沢市。レアリテの会)とのかかわり方や自身の詩の在り方を「私の
詩はレアリスムが基調になっている」と述懐しながら、
「亡くなった人の生きられなかった時間を含め
八十八年を生きてきた自分の証となる詩を残したい」と、その意図を明言する。第三者へと言うより
は、自身へ向けて”付託”するかのように。

 描かれた情景は、時として少女の目であり、地域性であり、そしてまた不意にコケティッシュな”女人”
の目であり、それらをさりげなく表出している。

「レアリスム」と語る言葉の持つ意味合いが、その手法としていわゆる”現実”や”生”であるならば、これ
またそうあることを意識しながらも、固定されない視点
を持った、詩人の全方向性を示している作品集
であると思った。


    雪の吐息

  風が止まるとき
  雪は 本音を漏らすのでしょうか
   シンシンと?

   ひひとして?
  いいえ 様子ではありません
  雪そのものの吐息です

  それは
  眠りかけた屋根を伝い
  しめ切った二階の窓から
  木綿のパジャマのようにヒンヤリと
  ひとり寝の素肌に触れるのです

  昔「雪喰い」した銃後の少女は
  年を重ねても
  雪の音やにおいに敏感です
  ジョリッ ジョリッ と
  雪玉をかじる勇ましい響き
  今も舌の上に残る
  燃えさしの 移り香まで

  人知れず
  真綿色した雪の華が
   咲いて
    散り敷いて
     消えてゆく

  ほらっ 聞こえるでしょ
  風がブレスするつかの間の
  雪の吐息が
  夜のとばり越しに鼓膜をふるわせる
  小さな命のしたたりです

 

 

著 者  駒木 田鶴子(こまき たづこ)
出 版  書肆えん(しょし えん) 
     〒-010-1604 秋田市新屋松美朝5-6
     ℡・Fax 018-863-2681
発行日  2023年6月25日 
定 価  本体2,500円(税込2,750円)  


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