左の図は「オオウチの錯視」と呼ばれているもので、真ん中の円形の領域が動いて見えるだけでなく、ときとして外側の正方形の部分も動いて見えます。
実際に図が動いているわけではないのに、いくら注意してみても動いて見えて舞います。
動いて見える理由はまだ分かっていないようですが、どういう場合に動きが激しく感じるかといえば、それは視線を動かしたときです。
それでは視線を動かさなければ、図形が動いて見えないかというと、視線を動かさずにじっと見ても、図形は動いて見えます。
視線を動かさないでいるつもりでも、目は動いているので、図形の動きは小さくなるようでも、やはり動いてしまうのです。
右側の図は左の図の黒い部分を赤、白い部分を青に塗り替えたものですが、この場合は真ん中の円形の領域の動きは小さく、外側の正方形部分は動かないように見えます。
真ん中の円形部分も視線を動かさずに注視すればとまって見えることもあります。
この場合、赤と青の部分は明るさが同じなので、動いて見える主な原因は白と黒という明暗の対比が極端なことだと考えられます。
同じパターンの図形でも、青と赤のように明度が同じ色で構成されているときは動きがはるかに小さく、ときに静止して見えるからです。
パターンについて言えば、白と黒のおなじ形の長方形の組み合わせになっているために、ちらついて見え、視線がスリップしやすいことも原因のひとつと考えられます。
実際に左の図を建て横ともに4倍程度に拡大してみると、図形はほとんど動かなくなり、とまって見える時間が多くなります。
それぞれの図形の横にあるのは、真ん中の円形領域の中央部分を取り出したものです。
白と黒の場合で見ると、白と黒の長方形が交互に縦につながっているのですが、間の二本は上から下に目で追っていくと途中でスリップして途切れてしまうように見えます。
白い長方形が太く、黒い長方形が細く見えるので上から下まで見たときに途切れて見えてしまうのです。
ところが右の赤と青の場合は、明度が同じため赤の長方形も青の長方形も同じ大きさに見えるので、上から下までつながって見ることができ、視線がスリップしにくいのです。
左の図で白と黒の長方形がつながっていると見極めようと注意を集中させてみると、ときどき上から下までつながって見える瞬間があります。
このときは図形の動きはとまって見えますが長続きはしません。
しかし一時的ですが、同じ大きさの白と黒の長方形のつながりという、部分的なパターンを全体から切り離して見ることが出来ているのです。
少しの時間であれ止まって見えるためには相当程度の集中力が必要で、止まって見えることがあるかどうかで集中力をテストすることが出来ます。