A図では5本の横線が水平なのに傾いて見えます。
この場合も目を細めてみると錯視は消え、5本の線が水平に見えるようになります。
目を細めてみると水平に見えるということは、5本の線は網膜には傾いて映るのではなく水平に映ると考えられます。
また5本の線の左端を同時に注視すると、右側は周辺視野となり、周辺視野で見る横線は水平に見えます。
同じように5本の線の右端に注意を向けて見ると、5本の線を左の周辺視野で見ることになり、平行に見えます。
今度は5本の横線に注意を向けてみます。
まず真ん中の線を注視しながらすぐ上の線と下の線を同時に見ます。
さらに一番上の線と一番下の線にも注意を向けて見ると、5本の線すべてに注意が向きますが、このとき5本の線は平行に見えてきます。
5本の線を意識的に見ることで、妨害刺激の斜線の影響から逃れることができるのです。
B図の場合は、円の中側にある正方形がゆがんで見えます。
この場合も目を細めてみるとゆがみは感じられなくなりますから、錯視は網膜上でおきているのではなく、脳の処理によっておきていると考えられます。
ここで円の中心に視線を向け、注意を内側の同心円から順に外側の同心円に向けていきます。
そうすると円と交わって見えていた正方形は、背景に退き円の環が前景に浮き出てくるように見えます。
背景に退いて見えると正方形のゆがみはなくなっています。
逆に正方形の4辺に同時に注意を向けて見続けると、正方形が前景になったり背景になったりしますがゆがみは感じられなくなります。
正方形に意識を集中して見れば、同心円からの刺激を排除できるので、ゆがみをがなくって見えるのです。
A図の場合も5本の線を同時に見るためには、目を見開いて注意の範囲を広げなければなりません。
B図の場合も同心円や正方形の四辺を同時に注視するには、伏目でなく目を見開いて注意の範囲を広げる必要があります。
逆に言えば注意の範囲を広げて見ることができたかどうかは、錯視が消えたかどうかによってチェックすることができるということです。