図Aのようにスクリーン上に二つの円を表示するとき、同時に表示するのでなく片方を早く表示すれば、当然どちらが早く表示されたか分かるはずです。
ところが、たとえば左の円を表示してから百分の一秒後に右の円を表示した場合は、二つの円は同時に表示されたように見えます。
二つの表示の間隔が0.06秒程度ならどちらが先か分かるのですが、0.5秒以下だとどちらが先かわからなくなります(個人差がありますが)。
そればかりか、左を先に表示して0.06秒後に右の円を表示すると言うことを何回か繰り返した後、右の円を表示してから0.06秒後に左の円を表示しても、やはり左円が先に表示されたように感じるのです。
何回か左の円が先に表示されたのを見て、左の円が先に表示されると脳が思い込んでいるので、実際は右の円が先に表示されているのに、左のほうが先に表示されたと思い込んでしまうのです。
表示の時間差を感じる能力(時間分解能)が低いためにある程度短い間隔で表示されるとどちらが先か分からなくなり、片方が何回か続けて表示されればそれに慣れてしまって、途中で順序を逆にしても分からないのです。
一回一回神経を集中させれば間違えないと思うのですが、同じ側が数回先に表示されるだけで、同じ側が先に表示されるものと思い込んでしまうのですから、脳がいかに楽をしようとしているか分かります。
Bの場合は片方の円を表示してから少しおいてからこれを消し、それから0.05秒程度おいてからもう片方の円を表示するということを繰り返します。
そうすると二つの円が交互に表示されているのに、左から右に、あるいは右から左にと円が動いているように見えます。
同じ色の円であれば左右に円が動いているように見えるというのは、映画のように独立したコマを短い間隔で次々に表示することで動いているように見えることからも推測できます。
しかしこの例では左右の色がまったく違うので、単純に動いて見えるというふうにはなりません。
動いて見えると言っても左右の円の色が違うのですから、途中で色が変わらなくてはなりません。
真ん中で変わるとすれば瞬間的に変わるということになりますが、先の例で見たように目の時間分解能は低いので、真ん中で切り替わるようには見ることが出来ません。
そうするとどのように見えるかといえば、真ん中あたりではどちらの色にも見えず、円が消えたように見えます(実際は真ん中に円はないので見えないのが当然なのですが、消えたように見えるのです)。
動いているように見えるということは、二つの円の間に円が見えるということで、内側に赤い円と青い円がそれぞれ瞬間的に見えます。
赤い円が見えてその後中間に赤い円が途中まで見えるのは感覚的に理解できますが、赤い円が消えた後空白が生じ、途中で青い円が見えます。
この途中で見えた青い円は右側に青い円が表示される前に見えることになります。
つまり見えるはずのない円が見えてしまうということになるから不思議です。