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視覚と判断

2007-06-23 22:55:11 | 視角と判断

 自分の意思で手を動かしたとき、動かそうと思ったときより脳の神経活動はそれより0.4秒ほど前に始まっていて、実際に筋肉が動くのは動かそうと思ってから0.2秒程度後だそうです。
 リベットという神経科学者の実験では図のような装置で、光が2.5秒で一周の速度で走るのを見ていて、手を動かしたいと思ったときを知らせます。
 そうすると脳波計の記録はそれより0.4秒程度前から始まって実際の動きは、意思決定の0.2秒後という結果となるそうです。
 人間が自分の意志で手を動かしたと思っても、もうそのときは脳神経が活動して手を動かす準備をしているので、自由意志というものはないというふうにも思えそうです。

 この場合は、外からのきっかけではなく自発的に手を動かした場合なのですが、外からのきっかけで手を動かした場合はどうなるでしょうか。
 右の図のように、スクリーンに印が現れたらボタンをすばやく押して、印が現れてからボタンが押されるまでの時間を計ると、0.2~0.3秒程度です(ひとによって違い、またコンディションによって違う)。
 この場合は実際に手が動いてボタンを押すまでの時間が含まれているので、見てから手を動かす準備をするのにほとんど時間がかかっていないということになります。

 印が現れたらボタンを押すのは反射運動ではないかとも考えられますが、ボタンを押すというのは反射ではなく意志活動です。
 何かが顔に向かって飛んでくれば自動的によけるというのが反射で、スクリーンに印が現れたらボタンを押すというのは、練習や意識の集中で成績が変わる意志活動です。
 リベットの実験は、外からのきっかけでなく、自分の意志を意識するということになっています。
 つまり手を動かそうと意識してから動かす場合、意識活動に多くの時間がかかっている、すなわち意識活動のスピードが遅いのです。

 リベットの実験を知って、ピッチャーが150kmのスピードで球を投げた場合、ボールが投げられるのを見てからでは打てないなどという説明があります。
 150kmの球はピッチャーの手を離れて0.4秒で届きますから、バットを振ろうとして実際にバットを動かすまでの0.2秒を引くと、投げてから0.2秒後にはバットを振る決意をしなければなりません。
 ところがリベットの実験結果を当てはめると、脳はその前に振る準備をしていて、それはピッチャーが投げる0.2秒前ということになってしまうのです。
 そこでピッチャーが投げるのを見てそれから打とうと脳が準備に入るなら、0.4秒後に打つと意識されさらに0.2秒後にバットが動くということになって、そのときはボールが届いてから0.2秒後でもう手遅れということになるというのです。
 
 実際はボールを打つというのは外からのきっかけでバットを振るということなので、ボールが投げられるのを見て、0.2秒以内のところでバットを振れば間に合うのです。