60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

漢字かな交じり文

2007-05-28 23:10:42 | 文字を読む

 文章は長さが短いほうが意味をつかみやすくなります。
 文章が長ければ一目で見渡せる部分の割合が小さくなるので、文全体の構造が頭に入りにくくなるからです。
 ローマ字や平仮名だけの文の場合は、分かち書きをしなければ意味が分かりにくくなるので、空白の分が加わり、漢字と仮名の文字数の差以上に文が長くなります。
 こうしたことからも、漢字かな混じり文のほうがカナ分かち書きやローマ字文よりも分かりやすいし、分かりやすければ読む速度が速くなるということになります。

 樺島忠夫「日本語探」によると、漢字かな混じり文は漢字が30%から35%程度混じって分かち書き効果をあげ、それによっても読みやすさを作っているといいます。 
 もし漢字の比率が10%以下になると分かち書きをしなければ読みにくくなり、逆に漢字の比率が高くなりすぎると拾い読みがしにくくなって読みにくくなるそうです。
 また漢字を拾って重要な部分に注意を向けて読んでいくというやり方は、漢字によってのみ実現されるのではなく、カタカナで書かれている語を拾っていくことでも可能だといいます。
 
 カタカナで書かれている語といえば、普通は外国語由来のいわゆるカタカナ語なのですが、ふつう漢字で書かれている語をカタカナにしてもある程度の効果はあります。
 図の例では漢字かな混じり文が文章の長さが短く、ポイントになる単語に注意を向けやすいのですばやく意味を理解できます。
 平仮名やローマ字の分かち書きは、音読はしやすいのですが、重点となる単語を一目では選びにくく、文章が長くなって全体の見通しが悪く、そのため漢字かな混じり文よりも意味が理解しにくくなっています。
 漢字の代わりにカタカナで書いた4番目の文は、分かち書きをしなくても分かち書き効果があり、5番目の平仮名文と比べれば長さは同じでもはるかに読みやすくなっています。

 漢字が混じっているほうがわかりやすいというのは、それだけ漢字を長期間の学習で身に着けているからですが。
 しかし漢字かな混じり文が分かりやすくなっているというのは、このような表面的な文字数の差だけではありません。
 平仮名文やローマ字文は単に音声を表現しているだけです。
 これを日本語の意味に置き換えると「有能」は「はたらきがあって役に立つこと」ですし、「慙愧」は「恥じ入ること」で「慙愧に堪えない」は「恥ずかしくてたまらない」という意味です。
 したがって平仮名で表すなら「はたらきが あり やくにたつ だいじん だった。はずかしくて たまらない」とでも書くべきところで、そうすると意味は分かりやすくなっても最初の文よりもかなり長くなってしまいます。

 漢字語を使わないで文章を書こうとすると、表現がどうしても長たらしくなり、その上文字列自体が長くなって全体の見通しが悪くなって読みにくくなるのです。
 漢字をある程度使えるようになるには漢字の学習時間が長くなるのですが、そうした犠牲を払っても文章を能率的に読むことを日本人は選択しているのです。