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多義語とルビ

2007-05-19 23:45:00 | 言葉と文字

 日本語は同音多義語が多いので漢字で書き分けないと意味が通じないなどとよく言われます。
 たとえば「ゆく(いく)」というようなコトバはいろんな意味で使われます。
 国語辞典を引くと「行く、往く、逝く」などという具合に、いくつかの漢字が当てられていますから、これらの漢字で書き分けるのかなと思います。
 ところが用例を見ると、すべてが漢字で書き分けられているわけではないということが分かります。
 「こころゆくまで楽しむ」とか、「その案でゆく」などといった例では漢字は示されていません。
 つまり、適当な漢字がスット当てはめられるというわけには「ゆかない」場合もあるのです。
 日本語の同音多義語を使うとき、漢字が頭に思い浮かぶと言われても、合点が「いかない」のです。
 また「嫁にゆく」「養子にゆく」というばあいに、「適く」と書くのが適当なのですが、「行く」と書くのが一般的になっていて、意味によって書き分けるというのもそう厳格なものではないようです。

 一方で漢字の「行」を引くと実はこれも多義的で、「ゆく」という意味だけではありません。
 良く知られている「おこなう」という意味のほかにも、「行脚」「行列」「銀行」などに使われるように、いくつもの意味があります。
 漢語も多義的なのですが、漢語の場合はほかの字で書き分けるということはできません。
 これは英語の場合でも同じで、「go」という単語は「行く」という意味のほかにたくさんの意味がありますが、ほかの文字で書き分けるというようなことはありません。
 
 英語の場合、中学生の暗記用単語カードなら、ひとつの単語について2,3種の意味しか記されていませんが、ちょっとした英和辞典で見れば、go,comeなどの基本語はとても覚えきれないほどの意味が載っています。
 アメリカ人やイギリス人なら、辞書など引かなくても、意味が分かるのかといえば必ずしもそうではないでしょう。
 英英辞典でもうんざりするほどの用例がありますし、幼児のうちからいろんな意味が分かるわけではないのですから、アメリカ人などにも正しい使い分けは難しいのでしょう。

 日本語で「行く」と書いて「ゆ」とルビを振るのは、漢字の読み方(音声化)を示しただけでなく、日本語の「ゆく」と漢語の「行」の意味の共通点を示す結果になっています。
 そのため単に「ゆく」とか「行」と書くよりも意味が分かりやすくなっています。
 英語の場合も「go」の上にルビのように、訳語を振れば日本人の学習者には分かりやすく、覚えやすくなります。
 おろかといわれたり、邪道といわれても二つの言語を並列表示すれば意味が頭に入りやすいのです。
 振り仮名とか訳語を添えるのは記憶しようとしないので、記憶の妨げになるという説もありますが、同時に見ることで自動的に理解することができるので、逆に記憶にプラスとなります。