日本語(和語)は意味が大ざっぱで良くいえば抽象的で、たとえば「かたい」は「外力を受けても変化しにくい」というような意味で、「固、堅、硬、難、、」など漢字を思い浮かべれば具体的に意味がはっきりする、というような説があります。
しかし「かたい」というコトバヲ聞いて、適当な漢字をすぐに思い浮かべられるというような人は学者か何かで、普通の人は「ハテナ」と戸惑うのではないでしょうか。
日常会話では「頭がかたい」とか「口がかたい」、「かたい職業」、「かたい表情」などといったコトバを使っても漢字を意識しないのではないでしょうか。
漢字を当てはめなくとも意味が通じていて、それぞれ意味が違うことは承知しているでしょう。
逆にこの場合はどんな漢字を書いたらよいのかと聞かれても、すぐに漢字が思い浮かばなかったり、漢字を思い浮かべても迷ったりします。
高島俊男「漢字と日本人」によれば和語に漢字を当てはめることはおろかなことで、漢字をどう使い分けたらよいかなどと聞いてくる人はかならずおろかな人だとしています。
日本人が日本語で話すとき、あるいは書くときは「かたい」と書けばよいといいます。
「かたい」といって別に漢字を思い浮かべなくても意味が分かるし、漢字で書かなくても意味がわかるというのです。
たしかに、英語でhardというコトバもいくつもの意味がありますが、hardはhardと書くだけで特別に書き分けたりしません。
たとえばtakeという単語はいくつも意味があるので、図のように漢字をくっつけて書けば、「アホじゃないだろうか」と思われるというのですが、それはどうでしょうか。
英語の話者であればそんなことはもちろんしないでしょうが、日本人が英語を習っている途中であればこれも便法です。
takeという言葉の意味が全面的に頭にしみこんでいない段階では、個別の訳をくっつけておいたほうが理解しやすいのです。
また、おなじ「かたい」というコトバでありながら、どういう風に意味が違うのか、と改めて聞かれれば説明に窮するかもしれません。
漢字をうまく当てはめることができれば、かえって意味がはっきりするということもあります。
たとえば「紐でかたく縛る」という場合「緊く縛る」ほうが意味が通じ、「15勝はかたい」というとき「かたい」「堅い」というより「確実」としたほうが近い意味となります。
国語辞書のように堅、硬、固、難の4字ですべての「固い」を書き分けようとすれば、なんとなく合わない部分が出てきますが、漢字を当てはめてみようとすること自体は、意味を整理する上で役立つのです。
和語の部分を尊重するのであれば、漢字を当てはめたとき必ずルビを振るようにして、和語が意識に残るようにすれば良いのです。