60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

ストループ効果と慣れ

2007-05-21 23:10:04 | 言葉と文字

 一番上の行の文字を読む場合、文字の色と文字の示す意味は一致しませんが、「赤、青、白、、、」と、つかえずに読むことができるでしょう。
 つぎに二行目の四角の部分の色を言う場合、これもつかえずに「青、茶、赤、、、」とスムーズに言うことができます。
 ところが、1行目の文字の色を答えるという課題になると、途中でつかえたり間違ったりします。
 文字の色を答えようとするとき、文字を自動的に読んでしまいそうになるので、ブレーキをかけようとして掛け損なったりするためです。
 いわゆるストループ効果というものですが、文字の色を答えるのが課題なのに、つい文字を読んでしまいそうになるので、間違ったりつかえたりするのです。

 文字を読むというのは大人の場合、かなり自動化されているので、意識的に文字の色を答えようとしても、つい文字を読んでしまいがちです。
 そのため自動的に文字を読もうとする衝動を、前頭葉の働きで押さえられれば、文字の色を間違えずに言えるということで、文字の色を言うことが前頭葉の訓練になると考える人もいます。
 こうなると文字を自動的に読むというのはマイナスイメージでとらえられがちですが、せっかく長期の文字学習で得たの能力なのですからプラスに評価すべきものです。
 
 英語でのストループ効果で分かることは、英語話者もredとかgreenといった文字列を見たとき「r,e,d」とか「g,r,e,e,n」という風に一文字づつ読んでいくのではなく、全体をひとかたまりでとらえ、見た瞬間に意味を理解しているということです。
 瞬間的に文字の意味を理解してしまうので、文字の色を判断して言う前に文字の意味する色を言ってしまうのです。
 日本人が「赤」とか「青」という文字を見て、自動的に読んでしまうというのも、単に音読するということでなく、意味が自動的に呼び起こされているからです。

 どうしても文字を読まずに、色の名前を言うことができるようになりたいという場合は、色の名前を言う訓練をして、それを自動化すれば可能です(そのようなことをすることに価値があるかどうか分かりませんが)。
 図の3行目から5行目にかけては色名でない文字をいろんな色で示してあります。
 これらの文字の色の名前を言う練習をしてみると、2行目の四角形の色をいう場合よりスムーズにできません。
 人間の視覚は色よりも形をとらえることを優先させるので、決まった四角形の色を判断するより、漢字の色を判断するほうが遅くなるためです。
 
 それでも、文字が色の名前を示していなければ、色をいうという課題から外れないですむため、一行目の場合よりはスムーズに色の名前を言うことができます。
 これをしばらく続けると、文字を見てその色をいうことに慣れてきて、半自動化しますからその勢いで、最後の行の色名を言ってみれば、スムーズに色名がいえるようになります。
 十分練習した後で最初の行の文字を読んでみると、ついうっかり文字の色をいってしまうケースが出てきます。つまり逆ストループ効果が出てきやすくなるのです。