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漢字と仮名

2007-05-26 22:37:20 | 文字を読む

 図の5行の文字列はいずれも14文字です。
 最初の2行は左右両端が漢字になっていて、次の2行は両端が平仮名になっています。
 真ん中の星印に視線を向けて見ると、両端の漢字部分がはっきり認識しにくいので視線を動かさないで1行を丸ごと読み取るのはなかなか難しいでしょう。
 行の真ん中に視線を向けた場合、左右両端は周辺視野で見ることになるのでぼやけて見えるのですが、複雑な漢字があれば読み取れないからです。
 本とか山のように、形が単純で見慣れている漢字であれば、周辺視でも読み取れますが漢字が続いているとほかの字が読み取れません。
 
 これに対して3行目と4行目のように、漢字が中心視野にあって、左右両端が平仮名であれば視線を真ん中に向けたままで、なんとか1行全体を読み取れるのではないでしょうか(すくなくても全体の文字が見えた感じがするでしょう)。
 平仮名は48種類しかなく、形が単純な上に見慣れているので、周辺視野にあっても漢字よりもはるかに読み取りやすいためです。
 とはいえ、5行目のように平仮名ばかりになると、一つ一つの文字は見えているような感じがするのに、同じような文字が並んでいるために区切りが見えず文の意味はつかみにくくなります。

 漢字かな混じり文が速く読めるというのは、漢字に注目しながら読むと文章の区切りが自然に分かり、平仮名部分は特に注視しなくてもついでに周辺視で読み取れるからです。
 漢字にルビが振ってある場合、ルビは漢字よりズット小さいのにじっと目を凝らしてみなくても読み取れます。
 不如帰のような当て字は本来なら平仮名で表記して、漢字を小さく上に表記すべきなのですが、それでは極端に読みにくくなるので、当て字のほうを大きく本来の和語のほうを小さく表示しています。
 じっさい、「きつつき」とか「ろくろくび」に当て字を振るととても読みにくくなってしまいます。
 
 昔は新聞とか子供やいわゆる大衆向けの本には、振り仮名が振ってありましたが、これは小学校教育だけでは漢字の多い文章を読むことはできなかったためです。
 昔の日本が文盲率が低かったといっても、平仮名が読めたということで、現在のようにルビなしでほとんどの人が新聞を読めたわけではありません。
 振り仮名なしでもほとんどの人が新聞を読めるということからすれば、現代のほうが識字率はかなり高くなっているといえます。
 戦前は現代に比べれば平均的教育期間がズット短かったので、漢字がまともに読めない人が多くても当然ですが、それでも多くの人が文字を読むことができたのは、振り仮名があったためです。
 振り仮名は目の負担になり、目を悪くするという意見もありますが、昔のように総振り仮名にしたりしなければ思うほど目の負担にはなりません。
 意味の分からない単語の意味を調べるにしても、かなが振ってあれば簡単に調べられるのですから、もっと振り仮名を増やしたほうが良いと思います。