個性がない左右対称顔

　「魅力的な顔は左右対称である」という説があります。
　心理学者とか、動物行動学者などがそういうことを主張したので、部外者はそんなものかと思ってしまうようです。
　普通の人の経験では、ほとんどの人の顔は非対称的なので、左右対称の顔が魅力的なのかどうか分かりません。
　
　そこでほぼ正面をむいている人の顔の半分をとって左右対称の顔を合成して見たらどうなるかを試して見ます。
　上の顔はケネディ元大統領の顔ですが、一番左が元の顔、二番目は左側から作った合成顔、三番目は右側からつくった合成顔で、四番目は左右を反転したものです。
　左右が対照的でないので、左半分からつくった対象顔と右半分から作ったものではかなりイメージが違います。
　この例で見る限り左右対称になっているほうが、どちらにせよ非対称的である元の顔より魅力的であるとも思えません。
　少なくとも左右対称顔は大統領にはふさわしくない感じです。
　さらに一番左の顔と、一番右の顔とでは同じ顔でも左右反転した場合は、どちらが好ましいかは別として、見た感じが違います。
　要するに右側と左側が同じでなく、それぞれが違った役割を持って全体のイメージを作っているので、左右を同じにすればよいということではないのです。
　
　下の例はオードリー.ヘップバーンの写真ですが、この場合は一見すると左右がほぼ対照に見えますが、実際はかなり非対称です。
　一番左の元の顔を左右反転したのが一番右の顔とですが、二つの顔を見比べるとかなり印象が違います。
　二番目は顔の左側だけで作った合成顔、三番目は右側部分だけからつくった合成顔ですが、こうして見ると左右はかなり非対称であることが分かります。
　この場合は、対称顔と非対称顔とどちらが魅力的かといわれても、人によって答えが違うだろうとしか言えないでしょう。
　ただ女優として見れば左右対称顔のほうが面白くないというか、ふさわしくないという感じです。
　
　一般的には見る側の左視野に入る側が全体イメージに近く、左側（本人の右側）半分で合成した顔のほうが好ましいとされますが、そうだとすると、一番右の顔と二番目の顔が同じように見え、一番右の顔と三番目の顔が同じように見えるということになります。
　また一番左の顔を基準に見ると二番目の顔が好ましく、一番右の顔を基準とすれば三番目の顔が好ましいということになります。
　このようにして見てくると、対称顔について言われていることは、何かあやふやな感じがしてきます。
　「左右対称的な顔が魅力的だ」という説は事実というよりは、対象性が好きな人の主張でしかないように思えます。