図Aを見てもたいていの人はなんだか分からないでしょう。
それではBではどうでしょうか。
BはAを逆さまにして、白い部分を赤、黒い部分を青にしています。
この段階ではまだ何か分からないかもしれません。
それではCはどうでしょうか。
これはBの青い部分を黒く、赤い部分を白くしたもので、つまりAを逆さまにしたものですが、こうなると、どうやら人の顔らしいと感じるのではないでしょうか。
それでもまだ分かりにくければ、目を細めてボンヤリ見れば分かります。
これはアインシュタインの顔だというのですが、そういわれればそうだと思い、いちどそう思ってみるとただの模様には見えなくなります。
ただ、Cの場合でも右脳に損傷のある人はなんだか分からないそうです。
それではCならば人の顔だということが分かりやすく、BやAになると人の顔に見えにくいのでしょうか。
Aは逆さまになっているのでわかりにくいという風に説明できるかもしれませんが、Bは色が変わっているだけです。
BがCに比べ顔のように見えにくいのはCに比べ立体感がないためです。
Cは白と黒で明暗差がハッキリしているので立体感が出てくるのですが、Bは青と赤で明暗差があまりないので立体感がほとんど感じられないのです。
Cは光が当たったところと影になるところというふうに見えるので顔に見えるのですが、Bは顔だと思ってみても立体感がほとんど感じられないのでリアリティーが欠けています。
そこでAを見るとこちらも、何か分からないので立体感がありません。
ベティ.エドワーズ「脳の右で描け」では立体的な絵を描くときうまく描けないのは左脳で見るからだとしています。
左脳はものをありのままに見ないで、こうあるべきだという先入イメージで描くからうまくいかないのだとしています。
そこで人物画など立体感のある絵を模写するとき、絵を逆さまに見て輪郭を模写すれば、絵が分かりにくく見えるので、左脳に邪魔されずにありのままに描けるのでうまくいくといいます。
逆さまにして見ると左脳が働かず、右脳で見るのでありのままに描けるといいます。
しかし、左脳が働くと見たままでなく、先入観で見てしまうので輪郭がおかしくなるというのは変な説明です。
そうならば私たちは絵を描くときでなくとも常にものをありのままに見ていないということになります。
しかも先入イメージはどうやって出来たか説明できなくなる上に、絵を描いた場合でも出来上がりがおかしいと見る眼は左脳が働いているはずです。
たとえば上のA,B,Cの3枚の絵を模写するとして、うまく描けないのはどれかといえばそれはCです。
これは立体感の感じられる絵を平面に描こうとするのは難しいことなのだということで、右脳で見るとか左脳で見ると言う問題ではないのです。