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チンパンジーの顔も非対称的

2006-11-07 22:55:06 | 視角と判断

 元の写真(一番左)はフランス.ドゥ.ヴァール「政治をするサル」から。
 人間の顔はほとんどが左右非対称なのですが、人間に近いチンパンジーはどうなのでしょうか。
 写真の上のほうは若いオスのチンパンジーで、下は年をとったメスです。
 一番左が元の顔で、二番目は左半分の合成顔、三番目が右半分の合成顔、四番目は元の顔の左右反転顔です。
 チンパンジーの顔は一見したところでは左右対称に見えますが、左半分の合成顔と右半分の合成顔の感じはかなり違いますから、やはり非対称的なのです(この二つの例は一見して対称的に見える例を選んだものです)。
 左の二つ同士と右の二つ同士がそれぞれ見た感じが似ているのですから、顔の左側(チンパンジーにとっては右側)が全体イメージに近いというのは、人間の顔を見た場合と同じ現象です。
 チンパンジーは人間に近いので、チンパンジーの顔を見たときも左側の印象が全体の印象になるのです。

 このチンパンジーはオランダのアーネム動物園で二十数頭の集団で放し飼いされていたもので、餌付けをされているので菜食のための時間が要らない分、お互いの社交時間が多くなっています。
 この放飼場は10万平米と大きなものですが、それでも自然の棲息テリトリーと比べれば百分の一以下ですから、人口密度?が高く、社会的相互作用が高くなっています。
 そのせいでという訳ではないのですが、顔の右と左は単純に対称的でなく、複雑な表情を作りやすくなっているように見えます。

 人間の場合でも非常に驚いたときとか、激しく泣いたり、笑ったりするときは顔の表情は左右同じになるので、左右の表情に差のある場合はもう少し社会的な交渉の場合です。
 チンパンジーは他の動物に比べお互いの社会的相互作用が多いので、顔の表情力が人間ほどではないにしても備わっているようです。
 左右対称な顔が寄生虫にやられていない証拠で、優秀な遺伝子を持っているから異性から好まれるのだというような説は、チンパンジーの顔など良く見ないでつくられたものかもしれません。