60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

右脳のイメージ記憶

2006-11-11 22:53:46 | 脳の議論

 旧ソ連の記憶術者シェレシェフスキーは超人的な記憶力を持っていたといいます。
 たとえば表Aを三分ほど見て、この表を思い出すように言われるとよどみなく全部の数字を言うことが出来たそうです。
 それだけでなく、どの行を指定されても正確に答え、反対の順序でも全部の数字を思い出して答えられたそうです。
 また数ヶ月たってもこの表を思い出すように言われると、正確に思い出すことが出来たということです。
 ところが彼はBのような表を覚えるように言われると、Aのときと同じように覚え、数字が規則的に並んでいるということに気がつかなかったそうです。

 彼は表を覚えるときに数字として記憶するのでなく、表を視覚的に記憶していたので、思い出すときも表として脳に浮かんでくるので、その表を見ながら答えていたのだそうです。
 そのためBのように数字が規則的に並んでいようが、不規則に並んでいようが同じことだったのです。
 いわゆる写真記憶というもので、直観像として記憶していたわけです。
 写真記憶というのは、特定の部分に注意を向けたり、無視をしたりせず、視覚的にあるがままに記憶するものです。

 ところがこのような記憶は、非常に無駄なもので、無目的なため、必要な部分と不要な部分の区別がないのです。
 もしなにか原理とか筋道とか意味を求めようとすると、純粋に視覚的な像を記憶するのが妨げられてしまうのです。
 つまり左脳が働くとあるがままには記憶しにくいのです。
 視覚的に記憶しようとするとき音楽を耳にする分には良いのですが、母国語のように意味が分かるものが耳に入ると混乱をしてうまくいかなかったりしたのです。
 よく右脳による視覚的記憶は写真記憶だとか、記憶できる情報量が膨大であるなどと言われますが、その記憶の内容は整理されていないものなのです。

 シェレシェフスキーはあまりに強力な記憶力を持っていたために、かえって忘れるのに苦労をしたということですから、記憶力が超人的であればよいとは限りません。
 普通の人間はシェレシェフスキーのような客観的な記憶が不得手で、自分に都合の悪いようなことは忘れたりしますが、生きていくうえではそのほうがよいのでしょう。
 左脳が働いて、意味づけをしたり関係付けたりするので、ものをありのままに見て記憶することが出来なくなっているのですが、かえってそのため人間は進歩したのかもしれないのです。