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同心円の錯視の説明

2006-11-04 22:41:16 | 視角と判断

 図では左側の外円と右側の内円は真ん中の円と同じ大きさなのですが、外円は小さく見え、内円が大きく見えます。
 大きさが違って見える理由を、心理学では同化効果によると説明しています。
 左の外円は内側の小さな円に同化するので小さく見え、右側の内円は外側の大きな円に同化して大きく見えるというわけです。
 この説明はもっともらしいのであまり疑う人はいないようなのですが、なんとなく変な説明です。
 内側の円と外側の円が接近しすぎれば境目がハッキリしなくなって同化します。
 そうしたイメージでもって内側の円が大きく見えるとか、外側の円が小さく見えるという説明が考えられたのでしょうが、これはあくまでも類推による説明です。
 図のように内側の線と外側の線がハッキリ離れていれば、同化して見えるとすれば相当な弱視ということになってしまいます。

 円の大きさが違って見えるのは別の理由であるということが分かるのがB図です。
 B図の三つの円は同じ大きさなのですが、左が一番大きく、右が一番小さく見えるでしょう。
 左は円の外側が朱色で塗られていますが、円が大きく見えるのは外側の朱色に同化しているわけではありません。
 円の周囲に刺激があることによって円に注視しようとするので、円が手前に見えるように焦点が調節されるのです。
 右側の例では円の中側の朱色の部分が注視の対象になるため、朱色の部分が手前に見えるように焦点が調節されます。
 そのため円は相対的に遠く見えるため、小さく見えるのです。

 もとに戻ってA図で左の同心円では、中側の円が注視の対象となるので、近くつまり大きく見えるので、相対的に外側の円は小さく見えます。
 同じように右側の同心円でも中側の円が浮き上がって大きく見え、相対的に外側の円が小さく見えます。
 
 同心円の二つの円が同化するというならば、二つの円の境目がはっきりしなくなるということですが、同心円を見るときの見方というのは、境目をハッキリさせる見方となるのが生物としては自然です。
 内側の円を外側の円より浮き出てくるように見るというほうが自然なのです。
 実際に見たときの感覚ふりかえってみれば、注視した対象が手前に見えることに気がつくはずです。
 同化効果という説明は、実際の見え方に基づく説明ではなく、言葉のイメージに頼った類推による説明なのです。