輪郭を見分けるのには色の違いよりも明暗の違いのほうがハッキリ分かります。
図の左の例では上段がグレート黒の帯が隣接しています。
二つの帯の境界は浮き上がって見えますが、これは境界付近でグレーの部分が白く感じられ、手前にあるように見えるからです。
下のほうは隣接している二つの帯がオレンジと青という補色の関係にあるので、ハッキリと色の差が見えるのですが、境界線は浮き上がって見えるほどの迫力はありません。
色の違いがハッキリ分かる組み合わせなのですが、明度の差がないので平板に見えるのです。
真ん中の例では、グレーから黒へ段々変化するようになっていますが、明度の変化につれて右側が奥に、そして縮小しているように見えます。
明るいほうの部分が手前に、大きく見えるようになっている錯視図なのです。
これにたいして、下の図ではオレンジから青に移行しても青のほうが奥に見えたり縮小して見えるということはありません。
色彩心理学ではオレンジは暖色で進出色、青は寒色で後退色とされているのですが、この図は平板に見え、上の図のような錯視は生じません。
人間の目は色を感じる視細胞は網膜の中心付近に集中しているので、ハッキリ見える中心視の場合はことさらに輪郭をハッキリさせる機能が必要ないのかもしれません。
明暗を感じる視細胞が中心となる周辺視の場合は中心視よりぼやけて見えるので、明暗の差に敏感になるようにできているのかもしれません。
一番右の図では上の場合は、白黒の明暗だけの図で、黒い四角の間にある線は、実際は水平線なのですが斜めに見えます。
ところが、下の図のように背景を青に、四角をオレンジにすると水平線は水平に見え、斜めには見えません。
青とオレンジは色は補色の関係にあって、境界はハッキリするのですが、明度はほぼ同じなので、片方が膨張して見えたり、片方が収縮して見えるということはありません。
上の図で水平線が斜めに見えた理由は白が黒に対して膨張して見え、黒が収縮して見えることが原因だったということが分かります。
ここで、四角はオレンジのままで、背景を白くしたらどうでしょうか。
オレンジはもちろん白より明度が低いので、背景と明暗差があるので水平線は斜めに見えます。
オレンジは進出色だといっても、白に比べれば明度ははるかに低いので、白との比較では収縮色なのです。
そのため四角がオレンジになった場合は水平線は斜めに見えてしまうのです。
白地に黒く書くということは、文明世界では当たり前になってきていますが、きわめて人工的な現象です。
自然の中ではたいていのものは色がついているので、いわゆる幾何学的な錯視図のように、白い紙の上に黒い線でかかれたものは、自然には対応準備ができていなかったものなのかもしれません。