まだ東の空に太陽が上り始める頃、この花は薄緑色の萼に包まれた真っ赤な蕾を開き始めます。五枚の花弁が開いて行くと中から花粉をいっぱいに付いた雄しべを何十本も従えて、まだ頭(五本のシベ)を閉じて睡っている雌しべが立ち上がってきます。まるで 「ブラシの木」 の花のようです。雄しべは盛んに花粉の頭を揺らして昆虫たちを誘います。太陽が中空に昇ってくる頃、やっと雌しべは眼を醒まし、昆虫たちが花粉を点けやすいように五本のシベを開き始めます。風や、昆虫たちの足で花粉は雌しべの五つのお皿に付けられます。モンシロチョウ、クマンバチ、アオスジアゲハなんかの昆虫たちです。太陽が少し西の方へ傾く頃「もういらないよ」と五つの頭を外に向けてしまいます。翌日の朝、花の様子を見ると花粉が付かなかった(受精できなかった)花は、花柄の途中から先が丸ごとポロっと落ちてしまいます。受粉したものは花弁だけが落ちて、五日ぐら経つと萼の中に実のようなものが付いているのが見られます。こんなかなと想像してみました。
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