日中もやや涼しくなってきて、部屋でごろごろしながら本を読む毎日。
季節の変わり目や、心が穏やかなときに何度も手に取る「家守綺譚」(梨木香歩著 新潮社)。
京都の疎水べりにある1軒の家と、文士。季節ごとの庭木や花、カッパ、小鬼、掛け軸から現れる亡くなった親友・・・。古めかしく美しい日本語に心が洗われます。それに小説の中の日常が、自分の日常と重なる気がして、何とも優しい心持ちになるのです。
文庫も持っていて、こちらは旅先で読みます。ひとり旅の夜に。
多分、ずっと私の人生に寄り添う大切な1冊だと思う。
弟に貸していて、久方ぶりに戻ってきた本たちもいます。新しい気持ちで、再読。
瀬尾まいこのデビュー作「卵の緒」(新潮社)
自分が捨て子だとうすうす気づいている小学生の育生。
母親にへその緒を見せて、と言うと、見せられた物は卵の殻。卵で生んだという。
「親子の証は?」と迫る育生に母は「証しって物質じゃないから目に見えないのよ」と言ってぎゅうっと抱きしめて「ね。今見えたでしょう。証し」「見えないって?修行がまだまだ足りないねえ。こういうことが見えなくてはだめよ、育生。」と言う。
物語の最後に、母親は真実を話すのだけれど、その場面もすごくすてき。
血はつながっていないけれど、愛情で強く結びついている家族、母の強さと明るさ。さわやかな読後感。
同じく瀬尾まいこの「図書館の神様」(筑摩書房)
彼女は最初のころは小学生や高校生を主人公にいろんな形の「家族」を描いていたけれど、最近は20代の女性の恋愛や仕事や日常を綴った作品が多いなあ。
主人公は高校の国語講師になった20代前半の女性。全然興味のない文芸部の顧問になる。部員はたったひとり。
その部員である垣内くんが、すごくいい!
実はスポーツ少年の彼が、体育系の部活に比べて刺激がなくて退屈だと言う主人公にきっぱりと発したせりふ。
「毎日筋トレして、走り込んで、パスして、後はレシーブ練習サーブ練習などなど。バレー部のほうが、毎日同じことの繰り返しじゃないですか。文芸部は何一つ同じことをしていない。僕は毎日違う言葉をはぐくんでいる。」
卒業前に生徒たちの前で発表をする垣内くん。もう、これは、大拍手を送りたい!
(一部抜粋)
「・・・(略)毎日、図書室で僕はずっとどきどきしてた。ページを開くたび、文学について言葉を生み出すたび、僕はいつも幸せだった。(中略)毎日、文学は僕の五感を刺激しまくった。文学を通せば、何年も前に生きてた人と同じものを見れるんだ。(中略)のび太はタイムマシーンに乗って時代を超えて、どこでもドアで世界を回る。マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。僕は本を開いてそれをする」
おお!
私が図書館や書店を好きな理由とおんなじ。
私にとって、本は旅と同じ。本の中の世界に旅をして、わくわくするのです。