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ウォルフレン「誰が小沢一郎を殺すのか」

2011-04-08 01:00:00 | 本、映画、イベント
名著「日本権力構造の謎」のウォルフレンの書き下ろしだ。
反米のサヨク(?)みたいなところが気になる人だが、20年前に読んだ
「権力構造」は目から鱗だったなあ。

鱗だらけの眼ではあるがこの本が一番バラバラ落ちた気がする。
中でも検察・警察と報道の欺瞞、曖昧な法律の恣意的な解釈で官・報が政治家の台頭を抑え、
既成の秩序を守ると言う「非公式システム」という権力構造には得心する物があった。
野党や主婦連、労組らの欺瞞(権力のガス抜き)も「おお、そういうことだったのか」
と感心したものだ。

彼が大筋で間違っていなかったことは時間が証明した。
今はより多くの人が賛同すると思う。

しかし20年たった今、既に使い古されて機能不全になったシステムは温存された。
そして多くの国民は「政治とカネ」のウソに何度でも騙され、いい加減な内閣支持率に
影響され自分たちが選んだはずの議員を見捨てる。

元をただせば明治の寡頭政治。
元老たちが藩の代わりに省庁の利権を代表した。
そして選挙で選ばれる政治家を抑え込むシステムを作り上げた。
天皇を利用したシステムを作った山県はビスマルク、レーニンと比肩しうる政治家だ、
とウォルフレンの評価は高い。

全体的に日本式システム、例えて言えば「喧嘩両成敗」で調和を第一に考える伝統を
ネガティブに捉えるところはやはり西洋人の限界かとも思うがよく見ているなあ。

しかしシステムには耐用期間がある。
高級官僚は自分たちが過去の時代を生き、世の中の変化の先取りなど到底できないのを知っている。
しかし経験の浅い政治家に日本の「良き秩序」を壊させることは許さない。

それが小沢と言う経験が浅いどころか、稀代の改革者で政治のプロに国を託させない
という倒錯的なサボタージュに変質した。
1993年に小沢が非自民政権を発足させたという既存システムに対する脅威のせいだ。
システムが自己目的化したっちゅうわけだ。

システムに組み込まれ全面的に「非公式システム」温存に協力するマス・メディア。
熾烈な小沢に対する人物破壊「キャラクター・アサシネーション」は続行中だ。
「不潔」「顔も見たくない」という声は女性を中心に今でもよく聞く。
刷り込みだ。

彼らに反省の色は無い。
記者クラブの寡占恩恵にどっぷりつかり、小沢擁護のジャーナリストは村八分だ。
上杉隆、江川紹子に続き岩上安身もテレビのレギュラー降板。
検察批判で部数を増やした功労者、異色の週刊朝日編集長山口一臣も交替だ。
行く先が販売とは(嘆)。

そして「非公式システム」はアメリカ覇権とセットだ。
サダム、チャベス、アサンジ、ルーピー鳩山などのキャラクター・アサシネーションも
アメリカの得意技。

そんなアメリカ利権に埋没して国益を省みないようにも見える外務省・防衛省。
外務省のトップは大臣どころか事務次官でもなく駐米大使か。
アメリカが覇権を持っているうちはそれでもいい。
しかしそれって風前の灯でしょ。

これに対し中国の経済的・政治的力は上り坂だ。
歴史的に経済が成長し政治が安定すると「東夷」「西戎」「南蛮」「北狄」に
プレッシャーをかけ朝貢させる傾向がある。
日本にとっても脅威とも言える。
しかしロシアがそうであるようにアメリカだって脅威だよ。

三つのスーパーパワーに囲まれる政治的現実は日本の宿命だ。
アメリカばかりを頼りとし中国に敵対する事に何のメリットもない。
アメリカはアイゼンハワーが危惧したとおり軍産複合体に乗っ取られあちこちで戦争を
起こす制御不能状態だ。
日本は軍産複合体の下請けでいいのか。

これら全て日本の選んだ道。
日本は防衛、外交はアメリカに丸投げ、輸出に励んできた。
一方でちゃっかり「日本的非公式システム」は温存しているので植民地ではない。
冷戦が終わってヨーロッパ諸国は独自の道を歩き始めたが成功体験に埋没して
アメリカの属国のふりをして世界政治で「いないふり」作戦中だ。

そこには、平和を守ると言う戦後の誓いもない。
残念ながらずるい国という印象をあちこちで持たれている。
反核運動が「私は被害者です」だけでアメリカの核の傘に安住するから
何の発信力も残念ながらないのと同根だ。
自前の理念、といっては大袈裟だが独自のスタイルを模索する時だ。


本書では非公式システムの肝に付き再説している。

法律が当局の社会秩序を守るためのトゥールであることは東大法学部の見解である事。

守るべきは慈悲深い政治システムで、天皇からの賜り物である大日本帝国憲法の世界に住んでいる事。

そして条文が意図的に曖昧な政治資金規正法の事。
99%の有罪率で裁判官を兼ねる検察が規制法を使い政治家を操る平沼騏一郎以来のシステムの事。
その無謬性の虜になって冤罪を生みやすいシステムになっている事。

検察に忠実で段ボールに押収書類を詰め悪漢を退治するシナリオを劇場中継するメディア。
中国の人たちは人民日報を、ソ連の人たちはプラウダやイズベスチアを信じなかったが、
日本人の多くは大手メディアの大本営発表に気付いていないのが問題だね。
財政難で権力や企業に媚びるメデイアの姿勢は先進諸国どこもある事だが国民はメディアを疑っている。

数合わせのために入った民主党の異分子、旧社会党出身者が改革意欲がない事
(インチキ・ガス抜き野党なれしているわけだ。ウォルフレン称する一党半体制だったからね)。

ウォルフレンがかつて絶賛したHIVの菅がやり過ぎでスキャンダルのお灸をすえられ、
官僚に飲み込まれた事。

ドッジラインの健全財政政策を金科玉条とする財務省が国家の方向性を打ち出せず景気対策で後手に回る事。
折角菅政権を作ったが就任してすぐ消費税に言及させ参院選敗北。
(ねじれ国会と言う最悪の状況を作り出してしまったおバカさんたちだ)。

版を重ねるごとに自社記事と他社記事を比較し調整し、最終の大都市版では「大差ない紙面」で
世論の方向を決定してしまう新聞の事。

彼らが政局に精通するが政策にはとんと関心が無い事。

政策を語っても報道されない、と脱力する政治家の事。


深い分析は無く羅列的だが一読の価値あり。
差し上げます。


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