今年始めての本格読書は、はっちゃんが貸してくれた「ウエルカム・トゥー・パール・ハーバー」。
大変興味をそそられたが何せ1000ページ。
「読み流す」には惜しい本なので「読み切る」こととなった。
大変だったが傑作でした。
(必読!)西木正明のウエルカム・トゥ・パールハーバーがやたら面白い
そして、今読んでいるのが那須さんが貸してくれた半藤一利の「昭和史1926ー1945」。
昭和が始まった年から敗戦までの軍国日本の話だ。
これも500ページを超える大冊。
何となく理解していたつもりの昭和史を見直すいいチャンスだ。
しかし「読み切る」となると時間が掛かる。
大変分かり易い語り下ろし形式だが個人名もたくさん出てくる。
漸く200ページまで進んだ所。
日本陸軍が広田弘毅や近衛文麿らの「ちょっとね」と言うか「マジっすか」みたいな首相の下、ついに盧溝橋で支那事変を起こす。
南京・漢口を陥落させ泥沼の日中戦争に突入。
陸軍は北守南進で、また海軍は軍縮条約離脱で英米との対決が迫る。
いよいよノモンハンというところだ。
備忘録も兼ねて振り返ってみる。
不凍港を求め南下するロシア。
日清・日露の犠牲の上で手中にした満州利権。
第一次世界大戦が勃発し、同盟国である英国の要請で連合国についた日本は、中国の空白に付け込み対華二十一ヶ条の要求を突きつけた。
欧米列強と同じようなことを始めた訳だ。
これが大正最後の年で昭和が始まった年。
昭和のスタートは帝国日本のスタートかもしれない。
「赤い夕陽の満州」は日本の「生命線」だった。
ロシアの脅威に対抗する最前線であり、増加する人口の移民先でもあった。
1910年の韓国併合は国際的にも認められていた。
1912年、孫文・蒋介石らによる辛亥革命で中華民国が誕生。
排日の気運は高まったが、共産軍との内戦は続く。
そんな中、満州の軍閥で馬賊の頭目である張作霖が関東軍の言う事を聞かなくなった。
北京から満州にかけての当時の中国側支配者だ。
元々ロシアのスパイだったが関東軍に捕えられ日本のダブルになったんじゃなかったかな。
そんな張が爆殺されたのが昭和3年。
関東軍の河本大作大佐の仕業という説が強い。
そう言うと怒る人も多いが(笑)。
ロシアの歴史家がGRUの犯行だったと言っているらしい。
張がダブルならありえないことではないかも知れない。
何れにせよ「君側の奸」西園寺は関東軍の謀略と見ていたし、天皇は怒った。
「しかし君臨すれども統治せず」で天皇は指導者と言うよりは「被利用者」だった。
事実は神のみぞ知るだが、後の満州事変が柳条湖での列車爆破であるところを見るとやはり関東軍の仕業と見るのが順当なのか。
手口って言うのは大体決まってくる。
さて張作霖爆殺の首謀者とされる河本の後任の関東軍参謀が石原莞爾。
例の「世界最終戦争論」の作者でトーナメントを勝ちあがった日米が決勝戦を行い、勝った方が世界の支配者になると予想した人だ。
後の歴史が満更出鱈目ではないことを証明した。
天才戦略家と著者の半藤も記している。
最終戦争に備えて日本がすべきことは満州を確保、経営することだというのが石原の持論。
満州に親日政権を樹立してその後に領有しようという青写真を作る。
マスコミ対策に力を入れる陸軍は「満蒙は日本の生命線」「二十億の国費、十万同胞の血」キャンペーンを張る。
とっかかりとして関東軍が起こしたのが満鉄爆破。
これを機に満州へ軍が出動、実効支配して傀儡政権を作ろうというわけだ。
昭和6年、柳条湖での列車爆破のことだ。
満州の緊張に危機感を持った穏健派(君側の奸)と天皇は事態不拡大方針を閣議決定する。
しかし関東軍は暴走し満州に侵攻してしまう。
ところが何ということか、若槻首相は日本の朝鮮軍が既に満州に入ったことを聞くと
「それなら仕方ないね」と黙認してしまう。
そして関東軍の快進撃のせいか天皇も「やむを得ない」と許可してしまう。
日本人に有りがちな現状追認主義だ。
そういう流れに持って行く手伝いをしたのがマスコミ。
朝日と日日(毎日)が俄然関東軍を擁護した。
そして軍の発表を垂れ流し事件が支那の計画的行動という虚報を流す。
この世論先取りが効を奏し、国民は関東軍の進撃に興奮する。
すると新聞は号外合戦でこれを更に煽る。
世論に迎合すれば新聞が売れる。
しかし何と言うことは無い。
たっぷり有る軍の機密費で接待され骨抜きになって、陸軍の広報機関になっていたわけだ。
新聞社後援、関東軍主催の満州戦争と言われる所以だ。
このメディアの在り方、軍隊という官僚が機密費を使いメディアを支配するやり方。
これは過去の話だろうか。
官僚でなく政治だが、野中元官房長官が田原総一朗に提供しようとした資金は一千万円だったそうだ。
わお。
田原が言っている。
他の連中は黙っているが受け取ったのだろう。
TBSのアイツに読売のアイツ、時事通信のアイツ等は間違いないな(笑)。
現金ではないかも知れないが、テレビは3000億の売り上げを生む国民の財産、電波を
僅か30億という卑猥とも言える金額で与えられている。
おまけに先進国では例外的なテレビと新聞のクロスオーナーシップが許され、
新聞には再販価格維持という独禁法の例外まで付与されている。
そして国民の税金で賄われる記者クラブ。
ここでの官僚や政治家の発表や囁きが記者の「現場」だ。
政官既得権の愛人大手メディアが権力に迎合しないわけがない。
そして板垣征四郎に説得されて満州侵攻を勝手に許可した重罪人、本庄繁関東軍司令官の責任は
有耶無耶にされ侍従武官長として天皇の側近となった。
石原莞爾は参謀本部作戦部長に栄進。
問題を検証して過ちを繰り返さない処分をするという胆力に欠けるのが我が国民性だ。
更に確固たる戦略を持つことが求められる首相等の指導者が官僚の言うなりで現状を追認する。
昭和がダメになった瞬間と半藤が語るが、平成の現在に至るもそのダメさは健在のようだ。
ノモンハンどころか支那事変までも行きつかなかったが、長くなったのでこの辺で。