六本木にある有名な美容学校の理事長である山中さんにお聞きした。
音楽の専門学校などは少子化の影響もあって生徒が集まりにくいようだが、美容学校はいかがですかと。
意外な答えが返ってきた。
山中さんによると、不況の世の中、美容師養成学校の需要は高まっているのだそうだ。
住宅地にも林立している美容室。
しかし人手不足らしい。
従って美容師の免許を持っていれば仕事に困ることはない。
日本中どこに行っても翌日から働き口があるほどとか。
それっていいねえ。
よく海外で西洋人の若い夫婦が長旅をしているのを見かける。
話を聞くと仕事を辞めて数カ月間旅に出たとか。
専門職なのだろうか、旅が終わればまた仕事が見つかるのだろう。
私がやっていた商社の営業職とか石油トレーダーはそうはいかない。
所謂「つぶし」がきかない。
キャリアの中断は余程の覚悟がいる。
そこへ行くと美容師や料理人、医者、看護師や弁護士などの専門職は食うに困ることは無さそうだ。
仕事を一旦やめて充電し見聞を広めたり、学校に入って再教育を受けるチャンスもある。
終身雇用で段々給料の上がる日本のサラリーマンは対極。
組織の中でしか通用しない人間が育つ。
その頂点が経団連会長か(笑)。
美容師の場合2年間の養成期間だが、そう簡単ではないのが国家試験。
電気製品を使ったり薬品も取り扱うので物理、化学も勉強せねばならない。
美容学校に入ってくる生徒は殆どが勉強嫌い。
「聞いてないよ」と愕然とする。
しかし目的が与えられれば人間奮起するものらしい。
学校による徹底的な個人サポートもあって国家試験合格率は98%だと。
高校の先生が「あいつがか」と絶句するらしい。
なんやかんやで2年間で300万円の教育費だが必ず回収できるそうだ。
そこへ行くと音楽の専門学校は実用性ほぼゼロ。
ミュージシャン養成科、音楽療法科とか出てもミュージシャンになれるわけではないし、
音楽療法士なんていう仕事が本当に存在するのか怪しいものだ。
こっちは逆に不況に弱い専門学校だ。
山中さんの話で興味深かったのが生徒の資質。
勘が良くてどんどん吸収する子、不器用で上達の遅い子。
器用な方が良さそうなのもだが、そういう子は多才なのか途中で飽きてしまい他のことに挑戦したりする。
一方不器用さんは他にできそうなことも無いのでコツコツと少しづつ積み上げていく。
その内経営を覚えたりで、成功するのは不器用タイプが多いらしい。
対極が器用貧乏と言われる、ちょっと才能のある人たちなのかな。
野村監督も言っていた。
「器用は弱い、不器用は強い」。
月並みだが継続は力ということか。
しかし周りに器用な人間がワンサカいる中で続けるのは辛いだろう。
不器用でも続けるのは大した才能だ。
音楽を齧ってみるとよくわかるが、どんなに素晴らしいプレイヤーでも現時点は通過点。
いつも上を目指している。
そうでない人もたくさんいるが、みるみる腐ってくる。
どうも人間、そういうものらしい。
組織に埋没するとわからなくなる事だ。
今は、そういう人たちがハバを利かせているのかもしれないな。