現役の経産省官僚でありながら反骨の人と言われる、古賀茂明。
最近は東電の救済策をメディアでおおっぴらに批判。
大臣官房付という閑職で冷や飯を食わされ肩叩きの毎日。
先日、ついに退職した。
東電処理問題では国民の負担を最小限にし、守るべきは被害者と電力供給。
債権者、株主ではないと言い切る。
東電の賠償を支援し監視するために設立される原発賠償機構は銀行や役所の出向者が運営。
結果的には天下り先となって電力会社と癒着すると予言している。
他聞に漏れず東大法学部の出身の古賀。
しかし中高が自由な校風の麻布。
東大ではガリ勉の雰囲気に馴染めず6年かかって卒業。
留年しても試験さえ受かればいい上級官僚になった、という「枠無し」の自由人だ。
戦後レジームからの脱却を謳い文句にした安倍内閣の公務員改革に参画。
官僚では珍しい改革論者らしい。
渡辺喜美と気脈を通じている感じなので「官僚主導反対」だが「対米融和」なのだろうか。
TPPには賛成らしい。
まあ、いいか。
その古賀による官僚論。
官僚の実体が赤裸々に語られる。
優秀であるべき若者が無能な官僚に生まれ変わる。
「霞ヶ関は人材の墓場」(笑)。
「専門知識に乏しく、自分では絶対に責任をとろうとしない素人集団で世界水準より相当遅れている」。
大体、官僚になる動機は山を登るなら一番高いエベレストを、という発想。
試験の得意な連中は東大を目指し、財務省を目指す。
偏差値の頂点だ。
「財務省に入って何がやりたい」と聞かれると多くの新人が「次官になりたい」と。
「人の為より、人の上に」という、まあ意識としては特に高潔でもない普通の人が行くところ。
そこで努力のベクトルが間違うと国民にとっては悲惨なことになる。
戦後60年以上になるのに同じやり方、同じ人事制度で同質の人間が蠢いている。
同質というのがいかんね。
組織として機能不全になるのは当然と言える。
そして彼らのモチベーション(出世の種)が組織の自己増殖という倒錯では、方向転換は容易ではない。
彼らのやり口を学んで変えるべきところを変えようという政治家に一票をいれるしかないな。
官僚機構が無用だということではない。
空気や水と同じ。
がっちりした統治機構は国民が生活していく上で必要不可欠だ。
未曾有の飢饉に苦しむソマリアは無政府状態により援助物資も行き渡らず近隣諸国に大きく差を開けられている。
官僚機構の有難さはそれが崩壊したときに初めてわかるのかもしれない。
組織の存続、増殖が自己目的化した今の霞ヶ関はソマリアの対極にある。
政治家やメディアを支配下に置いているとも言える。
権力の頂点だ。
これは決して素晴らしいことではないな。
官僚の世界では法律を通す、新組織を作り天下り先を増やすことが正義らしい。
これをやり遂げることが実績。
「できる奴」と言われ出世した官僚はそんな奴、ということだ。
2年で人事異動する高級官僚。
散々な結果が出る頃には責任はウヤムヤになっている。
一例としてNTT民営化。
2700億円の泡銭を通産省と郵政省が山分けにした。
使わねば損だ、でベンチャー投資合戦を繰り広げた。
天下り先分捕りが合戦とも言える。
元々犬猿の中の両省。
お互いが張り合って似たような事業を立ち上げた。
結果は見事に全て失敗で2700億の国民の資産が10億に。
人事ローテーションで責任問題はウヤムヤだ。
セコい話だが官僚に必要なのは勤務時間らしい。
夜遅くまで役所にいるため定時になると一旦飲みに出かけて戻ってくるのだと。
なんとも薄気味の悪い社畜(所畜?)だな。
デフレと失業で国民が苦しむ今、震災・原発事故保障で増税が俎上に乗っている。
その前に電気料金の大幅値上げが実質増税として国民負担としてのしかかる。
東電延命で本来真っ先に損失を被るべき銀行や株主が優遇され一般電力消費者が割り勘負けをする。
再生エネルギー関連の買い取り法案も同じ構造だ。
先ず東電や関連会社から絞るだけ絞る、それが優先順位というものだ。
そして国の資産の売却。
増税論議の前にこっちでしょう。
JT株など政府が保有する意味があるのか。
持ち続ける理由は財務次官の超大型天下り先。
国有地も「今はまだ安い」と手放したがらない。
民間が活用すれば固定資産税が入るのに。
「政治主導」を勘違いして震災処理失敗した菅前首相にも手厳しい。
国難を自らの延命の好機と勘違い。
官僚を使わず、官僚と張り合ってしまった。
政治家はビジョンと方向性を出し、官僚に立案させ責任を取る。
延命で目が曇りそこのところの見極めができなかった。
結果は官僚による無作為と責任逃れを許した。
「責任は俺が取るから前例や現行の法律を超えたことでもどんどんやれ」と言うのが正解。
何でも俺が決めるからすべての情報と対応策を上げろ、と。
とんだスーパーヒーローだ。
政治家、特に民主党政治家の程度の低さが官僚主導強化の原因になっている、というのが古賀の見立て。
仙石さん、同僚議員のやり口を見て「これは駄目だ」とばかり政治主導の看板を下ろした。
事業仕訳の政治ショーで官僚を叩く格好をすることに血道を挙げた人たちが経産大臣など要職に居る。
能力もないのにやる気だけが空回りして八場ダム廃止、高速無料化、JAL救済等大恥をかいた人もいたな。
あれが政調会長で起案の頂点とは。
お飾りだね(笑)。
批判だけでなく官僚をどうしたらイノベーション集団にできるか、という提案もある。
東電問題では全面的に古賀に賛成の国鉄フライヤーズだが意見が違うところも多々ある。
多分、楽観的な新自由主義者、自由貿易・自由競争論者なのだろう。
それはそれとして、一読の価値あり。
官僚の傍若無人ぶりは自民党時代よりひどくなっているらしい。
河野太郎ブログ
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