国鉄フライヤーズ

目指せカネ、ヒマ、若さ

中野剛志著「PTT亡国論」

2011-10-03 01:00:00 | 本、映画、イベント


これを書いているのは10月1日の土曜日。
日曜日から一週間ニューヨークに遊びに行く。
友人の国分夫妻、松川夫妻、フォルクローレ・ミュージシャンで甥にあたるシロー君に会うのが楽しみだ。
ラテン系のライブの他、ブルーノートのデビッド・サンボーン+ジョーイ・デフランチェスコや55バーのマイク・スターン+リチャード・ボナも見逃せない。
安いんですな、これが。
一流ミュージシャンなのにこれでやっていけるの?と思うほど。

音楽や野球、アメリカ発の文化にどっぷり浸かってきたし、これからもそうだろう。
決して反米主義者ではありません(笑)。
でも親米の前に親日。
日本の国益には敏感でいたい。

前に紹介した現役経産省官僚中野剛志の反PTT論である「PTT亡国論」。
経産省が何故か無理矢理にでも推進するPTT(環太平洋戦略的経済連携協定)に真っ向から反対する困った(笑)官僚は
京都大学大学院藤井研究室(都市社会工学)に「窓際」出向中。

彼のTPP反対論のポイントがよくわかる。
TPPそのものが自由競争の枠組みであるどころか、単にアメリカの経済戦略の一環であり、
ターゲットが日本市場であるというのが中野の意見。

元々過剰な自由競争は国家経済にとって必ずしも良いことではないという考え方のようだ。
その辺がきちんと説明してあって参考になった。
経済学出身の国鉄フライヤーズだが、経済理論はからきし苦手だ。
遅まきながら勉強させてもらった。

勉強になったがちょっとややこしいし、理解も万全でないので割愛(笑)。
興味のある人は自分で読んでみてください。
福澤諭吉を敬愛する自立主義者で骨っぽい。
なかなか読み応えある(と思う)。

そういう根本的な考え方は一先ず置くとしても、「鎖国に戻るのか」だとか、
「世界の孤児になるな」とか、ついには日独伊三国同盟でもあるまいに
「バスに乗ろおくれるな」のような情緒的な言動する日本人が多いのはどうしたことか。
違和感を感じざるを得ない。
キャンペーンだな。

大体において日本の市場は閉鎖的なのだろうか。
日本の輸出がアメリカの製造業の脅威となった6ー70年代、所謂日米経済摩擦。
その頃までは確かに関税、非関税の障壁でよちよち歩きの製造業を守り育成した。
それで成功したわけだ。

リトル・リーグがプロ野球と試合しても話にならない。
フライ級ボクサーががヘビー級に殴られたら再起不能。
こういう段階では保護は必要で効果が有った。

しかし日本の製造業が急速に発展すればそんな障壁を何時までも置いておけるはずもない。
今では全品目平均の関税率は近年アメリカのターゲットになっている韓国より遥かに低く、更にアメリカよりも低い。
ふーん、アメリカより低いんだ。

農業部門はがっちり保護されているという印象だ。
しかし関税率が特に高いというわけではなさそうだ。
農産物に限定すると、アメリカよりは高いが、韓国より遥かに低く、さらにEUよりも低い。
ほう。

そしてもちろんWTOに加盟しているし、インドやASEANなど12の国・地域とすでにFTAやEPAを締結しており、
さらに韓国、豪州、ペルーらと調整中だ。
これのどこが「鎖国」だと言うのか?
言ったのは経団連の米倉、利己的なキャンペーンだ。

TPPの参加国はアメリカを除けば小国(シンガポールやブルネイ)や農業国(チリやニュージーランド)
日本型の先進国は入っていない。
韓国も中国もインド入らないという。

実質的に日米FTAだ。
だったら日米で交渉したらいい。
何故アメリカはPTTの枠組みを持ち出す?
アメリカにとって都合がいいからだろう。
日本にとっては共通の利害を持つ仲間のいないリーグで孤軍奮闘しようというわけだ。
なんでまた。

官僚の言うアジアの成長を取り込むというのは欺瞞だ。

前述の通り中国もインドも韓国も入らない姿勢だ。
何が何でもTPPを推進するための空っぽの作文。
こういう目くらましのくだらない作業は得意中の得意だ。
御用学者を集めて研究会、委員会で箔付けする。

アメリカが日本にTPPを迫る理由はアメリカの雇用対策。
農業製品、工業製品で日本の市場により食い込みたい。
要は日本の農家や製造業者から日本市場を奪い取りたい。

そのためにグローバル・スタンダードとも呼ばれたアメリカ方式を日本に丸ごと飲ませたい。
例えば自治体の入札書類には英語版が必須。
アメリカの入札書類は日本語かい?
日本人が日本語を使うことを非関税障壁と呼ぶわけだ。

日本のメディアは報道しようとしないが、PTTは関税全廃、サービス、貿易、政府調達、知的財産、金融、人の移動を自由に、
という極めて急進的な枠組みだ。
シンガポール、ブルネイらの貿易立国、資源国のための協定にアメリカが飛びついた。
東アジア諸国を引っ張りこもうとしたが中韓はメリット無しと判断したようだ。

そう、メリットがあるかどうかが重要。
そこで判断するのが当たり前。
「世界の孤児」「平成の開国」「バスに乗り遅れるな」みたいな標語に踊らされるのは愚かだ。

デフレや雇用が問題なときに何が外国人労働者だ。
そして、コメなど特定分野の除外は参加時点で認められない。

アメリカの関税が下がることによって日本の対米輸出が増えるかというとそうは行かない。
日本のメーカーは円高対策で、既に現地生産を進めている。
そしてこの円高というのがミソだな。

アメリカは大々的な金融緩和・ドル安戦略を採っている。
カネを刷りまくれば価値は下がる。
当たり前だ。
関税が数パーセント下がったところで為替操作されれば効果ない。
アメリカは自国の雇用を作る為に今後もドル安政策を続けるようだ。

今現在、株や商品のバブルが弾け、ドルが不足になっている。
全てがドル表示の株や鉱物資源などが売られればドルが足りなくなるからドル高になる。
現在ドル高が進行中、そんな中でも日本円の強さは不変だ。
アメリカと日本の財務省はそれぞれの思惑で日本には緊縮財政、増税路線を推し進め円高誘導している。

全てが繋がっているようだ。

アメリカは今まで基軸通貨のドルを際限なく印刷することで世界からモノを買ってきた。
日本も中国もその恩恵に浴してきたわけだが、こんなことはもう続かない。
際限なく貿易赤字を出す国と一方黒字を溜め込む国。
グローバル・インバランスというやつだ。

だからアメリカが輸出を奨励するのは極めて正しい。
TPPはアメリカの戦略として正解だ。

問題は日本。
輸出中心の経団連が日本経済の代表ではない。
アメリカへの輸出を増やすことは政策の優先順位としては低い。

日本の問題はデフレであって、需給ギャップを縮める必要がある。
その為に必要なのが政府支出。
民間の投資意欲がデフレで削がれているときが政府の出番だ。
内需を刺激し、「日本の」農家や製造業に元気を与える「日本人の」雇用を生み出すことが必要だ。

TPPなどで過度に自由化をすればモノやサービスが国境を超えてどんどん入ってくる。
結果はデフレの更なる進行。
低体温にしたところで病気は治らない。

農業部門など長年の農業政策の誤りで国際競争力がない分野がある。
特に米などの穀物。
政府の補助金がないと成立しないこの部門に従事する人は準国家公務員と言えるかもしれない。

だからといって農業を自由化しろというのいはナイーブすぎる。
ここにもモンサントを中心としたアメリカ農業戦略がある。
アメリカによる、アメリカのための戦略TPPを推し進めようとする日本人。

TPP締結が使命のようにも見えるアメリカの手先前原。
モンサントのエージェントである住化の米倉が会長を勤める経団連。
反日(?)日本人の動機を見極める必要がある。

それと同時に政府を含む日本人の戦略思想の無さには暗澹たる気持ちにさせられる。
繰り返すがTPPはアメリカによるアメリカの為の対日戦略だ。

国家の経済戦略は駆け引きであり利益の分捕り合いという戦争、と中野は言う。

デフレ不況からの脱却、食料の海外依存問題、グローバル化、グローバルインバランス、
アメリカの輸出倍増戦略、気候変動等内の情実、外の大勢についても何一つ議論が尽くされていない。

ビッグ・ピクチャーに興味がなく目先の政局のみを追いかける大手メディアに付き合っているとバカが移ります。








最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
NY いいなあ! (はっちゃん)
2011-10-03 15:34:07
おぉ そーゆーことだったのですか!
今はもうNYの空気を吸っているのですね。
今の「アメリカの空気」のこと、レポートしてください。

日本が脱原発にハッキリと舵を切れば、また「日独伊三国同盟」か(笑)歴史は繰り返すのか?

PS 松川くんによろしく!
返信する
いいでしょ (taku)
2011-10-03 18:50:03
ニューヨークのデモも知らない大衆を見て中流が健在?な日本はまだいいかな、と思ったり。
一方でアメリカの底力を感じる旅でもあります。
ニューヨークはアメリカではないか(笑)。
核兵器保有を諦めた三国同盟。
正解でしょうね。
松川君はちっとも変わっていない昔のまんま。
ご夫妻と楽しい時を過ごしています。
返信する

コメントを投稿