国鉄フライヤーズ

目指せカネ、ヒマ、若さ

「実録連合赤軍 あさま山荘への道程」

2010-03-24 01:00:00 | 本、映画、イベント
映画『隣の家の少女』予告編


総括しちゃいました。
良くも悪くも我々の学生時代を語る時に欠かせないのが新左翼。
全共闘世代とか言われることもある。

そう言われるのは実は迷惑。
嫌いなんです、ああいう泥臭い原理主義。
多分、戦時中の下級軍人もああだったのかなというイヤーな感じ。

ゲバ棒っていう殺傷能力に著しく欠ける武器を振り回す。
竹やりでB29に立ち向かうのと同じメンタリティーです。

ノン・ポリという「政治活動興味ありません」派でしたが、
国中が70年安保を前に政治化した時期でした。

というか68年のパリ五月革命に象徴される旧来の「闘わない左翼(共産党、社会党)」
に対し「闘う左翼」というものが台頭し、暴力による世界同時革命のような熱が高まっていました。

結局は「内ゲバ」と言われた活動家同士の抗争で自滅していくわけですが。
大学が新左翼運動のメッカ、渋谷で言えば「109」みたいな、或いは先月のバンクーバーみたいな
ところですから、そこの住民としては嫌でもある種のかかわりが出てくる。

学校には立て看板が並び同じ字体(革命中国のあのヘンテコな略漢字)で同じような煽動的で
空疎なアジが書き連ねられていた。
「ワレワレはトーソーにショーリしなければならなーい」みたいな内容です。

そして「なんとか集会(3.22決起集会みたいな大袈裟なやつです)」があちこちで開かれ、
また日常のクラス・ミーティングでも各派の使いっパシリが勢力争いの演説会をする。

気が重かったよ、わたしゃ。
皆さんよく勉強しているので、反論する隙間がないぐらい理論武装している。
でもそれが外国の革命思想の翻訳のような「変な」日本語なんですよ。

彼らはそれに酔っていたようだが。
部外者の耳にはダサいだけだった。

今のケンポーは占領軍が作った英文を日本語に翻訳したもの。
だから拭い去りようもない違和感があるのと同じ感じでしょうか。
お題目にしか聞こえない。

平和憲法のおかげで戦争がなかったなんてよく言うよ。
国家間のマジな戦争なんて中越戦争が最後。

アメリカに焼き尽くされ、中国に裏切られた小国ベトナムの命がけの反撃でした。
あとは相手がテロリストとか民族とかの非対称戦争です。

戦争と言えば「経済戦争」。
敵は「同盟国」アメリカ。

1ドル360円と言う特別の待遇で経済大国にしてもらった日本。
東西冷戦の果実でした。

しかし70年ニクソン訪中とニクソン・ショック(ドルの兌換停止)で戦後体制は一度目の終わりを迎えた。
日本はその意味がわからず相変わらず輸出振興、そして商品や資本の輸入には
保護主義を続けました。

その結果、80年代は怒ったアメリカに仕掛けられた経済戦争の時代だったし、
最近でも郵貯やトヨタでやられてる。
まだわかってない、とキッシンジャーあたりは日本の悪口を言っているのでしょう。

経済戦争では平和憲法は役に立たないし日本の官僚はよく戦った。
でも時代が変わっていることに気付かない。

おっと、学生運動の話だった。
運動家のアジ演説も空虚なお題目。
輸入憲法やシャンソンの訳詩みたいな不自然な響き。

そして新左翼のうちでもノンセクト・ラディカル(と言っても立派なセクトではないかな)。
武装闘争に先鋭化し結局は訓練ベースでの「総括」という仲間殺しで自爆してしまった連合赤軍。

これを境に日本の新左翼運動は社会から見放され終息しました。

なんだか不思議でした。
革命理論を熱く語る人たちなんですが知性を信じていない「反知性主義」。
肉体と情念のアングラ演劇が熱狂的に支持された時代です。

一方で国粋主義者も先鋭化して三島由紀夫事件も在学中に起きました。
あれほどの知性を持つ人が起こしたのも同じような「反知性」の運動だった。

ゼンキョウトーの経験者内田樹と平川克美(私と同じ年)が言っていたが三島は尊王攘夷。
全共闘は反米攘夷。

同根なので三島は「君たちが天皇と一言、言ってくれれば共闘できる」と東大全共闘に呼びかけたそうです。



私は全く学生運動にはかかわらなかったしデモに参加したこともない。
でも連合赤軍のなかにも知り合いの知り合い(鳩山邦夫のアルカイダの友人みたいですが)
がいるし、三島の盾の会もそうです。

そんなわけで気が重いけど映画を見ました。
190分、長いし重い。



若松孝二というアングラの人から見た連合赤軍。
彼らに共感して接触もあったインサイダー。
私財を投入して作った渾身の作品です。

感想をふたつばかり。

その一。
若松さんは反権力の政治的な人間だが、映画監督として名を上げたのは低予算の所謂「ピンク映画」。
「ピンク映画界のクロサワ」と呼ばれて若者の圧倒的支持を得ていた。
見たことありませんが(ホ、ホントに)。

実録連合赤軍、これ見方によっては密室、監禁もののポルノ的要素満載ですねえ。
エロいよりグロいですが。

純粋で男好きのする遠山美枝子役の坂井真紀が「総括」されていくところが映画の大きな流れです。
「コレクター」とか「隣の家の少女」のような。
若松さんは個人的にも遠山さんを知っていたらしい。

やっぱり知性より情念の人なんでしょうか。



しかしこういうテーマは芸術ではよく取り上げられる。
小田嶋隆が書いていたが紫式部の源氏物語もそういえばそうです。
紫の上の話は、少女誘拐、監禁、飼育で理想の愛人にするという「とんでもない」話。

それでも立派な芸術作品です。

二つ目。
私は連合赤軍のことはテレビのニュースで見ていただけで調べたわけではないので或いは
見当違いかも知れませんが。

「総括」の首謀者森恒夫と永田洋子。
映画を見た感じでは変ですね、彼ら。

特に森恒夫。
この映画、運動関係者を次から次に実名で紹介している。
原田芳男のナレーションがいい。

森恒夫は始めの頃に登場する。
逃走者として。
当時の言葉で言う「ヒヨッ」た。

そして途中から先鋭的なリーダーとして再登場し連合赤軍の独裁者になる。
前に紹介した「動物農場」の豚、ナポレオン(スターリン)ですね。
この人が洗脳、組織浄化に異様な情熱を発揮します。

密室での不思議な光景。
総括という自己反省を迫られた人が「私は実は心の奥であなたをの代わりに指導者になろうという、
野心がありました」みたいな「自白」をしてしまうんですね。
そして処刑される。

これとそっくりの話がすでにオーウェルの「動物農場」に出てくる。
こわいですね、全体主義という密室。
共同体そのものが検察の取り調べ室みたいな。

森さんの話です。
この人さっき書いたようにブランクがあってからバージョン・アップして帰ってくる。
そして連合赤軍を、さらに言えば日本の新左翼運動を自滅させる劇薬となるわけです。

それが映画では唐突に副指導者で愛人でもある永田洋子と公安に逮捕される。
あさま山荘事件の前です。

実際は逮捕に来た警官隊に斬りつけ警官を刺したいうことになっているらしいが。
そんな劇的な場面が全く描かれていないのが不思議な感じです。

そして「自殺」。

私には「この男が公安のスパイとして新左翼を内側から破壊したんだよ」という若松さんの
メッセージのようにも見れた。

思いすごし?
ネットで調べてみたが公安の工作説は見つからなかった。
知っている人がいたら教えてください。

重くて長い映画でした。
ブログも長い、すんません。



最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順

コメントを投稿