蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

レヴィストロース神話学第3巻「食事作法の起源」を読む10

2018年11月13日 | 小説
(11月13日)
パラダイムparadigmeについて少々語る。
スタンダード辞書では【語】語形変化の表とある。レヴィストロースが社会学に応用を試みた時の原義であろうが、よく分からない。そこでLeRobertでの意義(前回12日の投稿で末尾に載せた)を用い、さらにterme(用語)をcode(符丁)、chaineをcodage(符丁の展開)とする投稿子の解釈を述べた(原文は前回)。これに基づくと「ある特定の目的を有し、かつ、話し語りの流れの中で(codage)、一の交差点を持つ、いくつかの符丁(code)の相関係を明らかにする研究」=認識体系、あるいは思想の相関を調べる事=となる。
paradigmeに対応する用語syntagmeなるの意味を尋ねむと再びLeRobertのお世話になると<<Le syntagme se compose de plusieurs unites consecutives (par exemple; s’il fait beau, nous sortons). Place dans un syntagme, un terme n’aquiert sa valeur que parce ce qu’ile oppose a ce qui precede ou ce qui suit, ou a tous les deux>>(出典F・de Suassure le cours de linguistique)訳:天気が良ければ外に出る。この語の連なりをsyntagme=統合節=とする。文節とは一つの語はその意味を先に立つ、あるいは続く語との関連でしか意味を持たない。例文では「外出する」は前の「天気が良ければ」との関連でのみ意味を成す。なおここに使われる<consecutive>には、時間の経緯をもたない「空間」でのつながりの意味ととりたい。

社会人類学において「構造」の概念を展開するにあたり、レヴィストロースはソシュール言語学から影響を受けたと学者諸氏に膾炙されている。その一つがparadigme/syntagme
の概念であるが、上記引用を読めば、その影響度合いの重さを理解できよう。まさにcodage=paradigme、code=syntagmeである。言語学での文脈の流れを哲学社会学において「思想の流れ」に置き換えたと言えるのではないか。
(なお投稿子は上記概念に基づいて「農協パラダイムの終焉」なるブログを2017年12月22日から8回本年3月3日に投稿している。ご参照あれ)

写真:ホオズキ、東京多摩地区とある市で撮影。

さて、小筆作成の「モンマネキパラダイム」に移る(前回投稿の写真をご参照)
syntagmeには天文地理身体...が横に並ぶ。原典レヴィストロース作成の表(本書の137頁、11月10日掲載)ではこれらは縦並びであった。天文の月はモンマネキが人間社会を創造する原初にはなかった。故に5番目の妻(初めての人間妻)は月経の周期性を持たず、経血の垂れ流し。これを漁の寄せ餌に使うという不謹慎さを発揮してしまった。
周期性を無視して女が魚をとっては、川に魚がいなくなってしまう。姑(仲介者であるが預言者の役割)に追い出された。
兄妹の近親姦が発生し、兄は首をはねられた(敵戦士の甘言にうっかり釣られての言い伝えもある)。地上に居所を失ったがん首が空に昇って月になると決めた。なぜ月かの問いに「人には何にも役に立たないから」と首が答えた。月が誕生して月齢が発生し、月の周期性が夜空に展開する。しかし月は魚をもたらしはせず、日中の生産と消費活動に影響を及ぼす訳でもない。28日の周期は女の月の障りを呼ぶだけ。がん首の選択理由は全く持って正しい。
syntagme社会に目を向けると。社会の符丁codeとは、畢竟どの部族と同盟を結ぶか、婚姻相手をどのように選ぶかに尽きる。洪水から一人残されたモンマネキがやっと探した人間女は距離と類縁が近すぎた。近親姦ゆえに失敗した。モンマネキはカヌーで妻問いに出立する(神話の筋にはないがほのめかしがあるとレヴィストロースは伝える)。婚姻のたどり着くは規則である。それをいとこ婚とするか、近隣の特定部族の子女を配偶に選ぶのかは民族誌の研究テーマとなるが、近親婚を禁忌としも遠方婚姻も禁じる一定規則を設け同盟の周期性を確立する。
上記の展開とはparadigmeであり、筋でcodageとしてモンマネキと周辺神話の骨組みとなっている。Saussureの定義に戻ると「一の交差点を持つ」がparadigmeの十分条件であるが、モンマネキの交差点とは「周期性」である。
天文から民族倫理までのcodeが周期性の追求で統一されている。

レヴィストロース神話学第3巻「食事作法の起源」を読む10の了
(次回投稿は11月15日予定)

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