蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

L’Homme nu裸の男に読む構造神話学と哲学修辞 中 

2024年07月12日 | 小説
(2024年7月12日)De sorte que l'objet réel sur quoi porte l'analyse se situe au niveau du groupe, et non de telle ou telle de ces propriétés. D'autre part, ce mythe, déjà découpé selon des critères subjectifs dans l'ensemble dont il est pourtant solidaire et dont l'existence n’est même pas soupçonnée, se trouve à son tour morcelé en incident, éléments ou motifs qu'on ne définit pas de façon rigoureuse et qu'on laisse voyager au gré de caprice ou d’oublis qu'il est commode d'imputer aux conteurs : « perdus par une version, récupérés par une autre cédée ou empruntés à différents systèmes mythiques, et toujours dépourvus de propriétés intrinsèques qui pourrait expliquer leur coalescence en vue d'un arrangement déterminé qui donnerait naissance à un mythe » (Demetracopoulou).
(神話要素とは歴史神話学で)具体的な客体であり分析対象に採り上げられ、その客体は集団の中に位置する性格付けのみを受ける。要素が具有する固有性状から分析するなどは決して無い。更に(Demetre..が定義する)神話とは、その集合体を通して確固としているかもしれないが、すでに主観に導かれる判断基準で出来事、構成、目的などに細断されている。その細分仕方も厳格な基準で扱われているとは言えない。辻褄が合わなければ先住民語り手の気まま、忘却に押し付けられる。「一の語りでは失われていて、別の語りに復活している。別の神話群では押し込められたり引き出されたりして、いずれにしても本来の性状は、それがあれば神話が生まれた状況が判明するのだが、すでに失われている」(Demetra...)

文言、語の解説(鍵語に網を入れている)2 ;
対象とする要素をl'objet réel具体的客体と定義する。Réelの語義は実際そこにある、見えるモノとの意が浮きでる。そのモノは特定の神話群groupeでのみ取り沙汰され、神話群が離れると意味をなさない、なぜなら客体だから。Propriétés はレヴィストロースの用語でも神話の登場物(者)にあらかじめ定められている性状です。性格行動基準が定められている、よって自立する主体と言える。Demetra..は、主観的判断基準Critères subjectifsを持ち込み、対象をモノsubjectifと捉える。上記の自律する性状が、神話進展に結びつく仕組みを無視する。
神話をmorcelé en incident細分化しても、その神話の理解に繋がらない。辻褄が合わない事情は語り手の気ままcapricesに責任を帰す。dépourvus de propriétés intrinsèques本来内包する性状、が見えないとするが、その原因は要素を細分しているところに起因する。動機づけを導入し、筋道に法則性を説くレヴィストロースとは正反と言える。
Dans ces conditions, si le mythe soumis à l’enquête offre une unité, celle-ci ne pourrait lui venir que d’une idée directrice qui, pour prendre une forme sensible, doit prélever dans une tradition au demeurant amorphe les images et les incidents les mieux propres à servir à son dessein. Selon notre auteur, cette idée serait celle d'un d'inceste catastrophique qui menace l’ordre du monde, et dont les victimes cherchent à se venger. Mais outre que cet énoncé simpliste laisse échapper toute la substance concrète du mythe―alors que chaque détail, nous le verrons, est rigoureusement motivé―
神話を出来事などで細分化すると、その神話はともかく一つの纏まりを残すだろうが、神話の理解にもたらす成果は強圧的な示唆と化す。ともかく認識できるように(歴史神話学に特有の)進め方で視覚像、逸話などを不整合のまま放置して、神話の意思を探り抜き取る。著者(Demetra …)によればこの意思とは「惨禍をもたらす近親姦であり、被害者の世界秩序への挑戦」であるとする。この単純過ぎる解釈が神話の肉付けを見逃している以上に、それぞれの細目が厳密に動機づけられている神話事情も語られない。


裸の男に先立つ11年前、レヴィストロースは構造人類学でギリシャ神話「エディプス」を解析している。破線矢印が古代ギリシャ人が信心としている動機と肉付け。本図は同書の説明に則り部族民が作成した。


文言、語の解説3 ;
前半はDemetra...の神話解析方法論。不定冠詞 « une » が続く。Une unité, une forme, une idéeなどと4の名詞にかぶさる。不定冠詞とは「とある一つの」の意味で、uniteに冠すると「とあるなにかの」一体。その一体が素性、有り様などで明確に定義できればlaを冠するはずだが、そのように文を作らない。得体のしれない何やらの「一体」。極め付きは « une tradition » とある一つの慣習。この語が歴史神話学の分析手法を「とある」で切り捨てている。
これらの調査はDemetra が手掛け、歴史神話学の規範に沿った信頼おける結果が得らているはず。が、その手法をレヴィストロースが認めないと不定冠詞で表現している。
« toute la substance » は「文脈に内包される全て」が直訳だが、肉付けと訳した。肉付けが果たす役割が « rigoureusement motivé » 厳密な動機づけ、その接合材。神話要素に内含する肉付けの概念も、動機付けの仕組みも説明しない歴史神話学の手法は、この筋立てを支配する機構=構造=を見逃す。反文化の化身アビが、兄弟双子の活躍を導く動機 « motivation » の役割を当てられ、そのつながりは(北米神話では)厳密。アビにも兄弟双子にも、主体性が具わり自律歩調で活動する機構がこの状況に覗える。

部族民は別投稿で「活動から沈黙」の動機づけを述べた。兄弟双子もアビ退治の活動の後に、空に上って星に化身して春の訪れを告げる(M539悪霊退治の双子の星)。

L’Homme nu裸の男に読む構造神話学と哲学修辞 中 了 (7月12日)

追:原文はOffice Wordで作成している、鍵語に網目をかけているのだが、Blog画面では消える。読者各位にはご不便をかけているが、ホームサイトに
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