蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

レヴィストロースを読む 神話と音楽 第二楽章良き作法のソナタ4

2017年11月05日 | 小説
(11月5日)
全体350頁の本書Le cru et le cuit、その100頁まで進みました。選ばれた神話は21、全体では187を数えるので9分の1ですが、神話の引用のない序曲が37頁占めたので、頁数に比例してはやや少ない。しかし鳥の巣あらし野豚の起源の神話群は原住民の思想を解き明かすに重要です。
レヴィストロースは提案します
<Marquons ici un temps d’arret, pour reflechir sur notre demarche>
訳:ここで小休止してこれまでの論点を整理してみようと(105頁)。
この行の前後の数頁は、投稿子が規定するところのdiscours(本論)です。ようやくレヴィストロースが手の内を明かすかの予兆に震えます。

この105頁の直前ではM16~21の比較を表にしています。
手順はelements要素を引き出し、思想であるpropriete(属性、特質)を特定したうえで比較する。従来の「登場人物と筋道」すなわちformeの似通いで近遠を判定する神話学とは大きく異なります。
M16では主要なelementとしてヒーロー俗神が狩る鳥を取り上げている。
デジカメ化した104頁を掲載しています、参考に。
Gibier鳥=airUterreと判定しています。=としたが本文では3の-が縦に並ぶ。ただの=はidentite同一ですが、一本追加の3本縦置きの記号はcongruenceです。辞書を開くと「整数(図形)の合同」<deux nombres dont la difference est divisible par le troisieme>。数学用語で「2の数字(図形)は近似しており、第3の数字(図形)と対照してその差異を判別する」とある(辞書はスタンダード、robert)。尊師は解説を当然、加えません。よって勝手ながら自己解釈の独断を下さないと進まない。

俗神カルサカイベはウズラと豚の交換を要求した(挿入の図は本書から)

本書は「構造神話学」なので、それらしき解釈を試みる。それは「形態formeは異なるが思想たる特質proprieteが同一」とします。例として「伏し目の女性」「空を見つめる女性」は異なる図形ながら、表現する悲しみという思想で同等、この2はcongruenceと言える。

続く記号のUはunion同盟です。M16で俗神が狩り野豚と交換を求めるのはウズラに似た鳥。地を這い空を飛ぶのは確か、ウズラを持ってして地と空という資源を示している。さらにM16は→M21とあり、→とは転換の記号。M16が伝播してM21に変換した意味。M21では漁がelementに取り上げられている。魚は水とcongruenceの同等性を持つとしている。ウズラと魚はelement(=forme)として異なるものの、天地と水、いずれも天然資源を表現する思想、ウズラが魚に思想として転換した。さらにこの同一性は、elementの上の言い切りsequenceで同一方向に働き、最上層のarmature=schemeにもそれを継続させる。

表を追っていこう。

本書104頁、ピンクの下線部を本文で説明している。

Mundurucu族では男と姉妹の関係に//がかぶさる。破局である、兄弟姉妹の諍いがsequenceシーン、場面となる。M16の冒頭で俗神(カルサカイベ)が姉妹嫁ぎ先のキャンプに居を構えウズラと野豚との交換を姉妹に要求して断られた。この顛末シーンを△―//―○=△血族の破局、姻族は同盟維持とした。一方Bororo族のM21は姻族、妻と夫の破局○=//=△がelementだが、両者間には→変換があったとしている。
ちなみにM21の要約を上げると「夫が漁に出ても魚一匹取れない、妻が出ると大漁で夫はバカにされる。しかし妻はカワウソと同盟しているとバレ、夫に詰られた。復讐に妻は芥子たっぷりの食事を与え、夫は「グウブウ」と大変苦しんで豚に変身する」まさに夫婦の破局です。
これらをレヴィストロースは嫁のやり取りにつきまとう破局とした。「donneur嫁の出し手対prenneurもらい手」の軋轢をcodeとして展開している。これは前回に取り上げたテーマです。
いずれのケースでも本来、同盟として機能すべき結合が破局する。「破局」がcodeで、展開(codage)するという共通性をM16~21が共有している。

sequences単位でM16,20,21を比較した表が最終です。M16では自然資源とは天地がcongruence、M20では文化財(金剛インコが水から拾い妹のもらい手に送った石)と水空気、M21では自然資源は天地と同一と読めます。
資源(文化財)と天水、空気を数式で結んでいるその理由は?105頁に移ります。

神話と音楽 第二楽章良き作法のソナタ4の了

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« レヴィストロースを読む 神... | トップ | レヴィストロースを読む 神... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

小説」カテゴリの最新記事