蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

ムルンギン族体系の続き 一般化交換 8最終

2021年07月08日 | 小説
(2021年7月8日)前回(6日)で女の交換を一般化するには水平とたすき掛け交換を交互に組み合わせにて可能。このレヴィストロースの主張を交換サイクル展開図を用い再現した。その起点としてa1(サブセクション、以下同じ)がb1から女(嫁)を貰い、8のサブセクションを一巡する周回があって、もう一つの周回はa1がb2へ女(嫁)を贈るを起点とした。これと逆巡の流れを再現するとa1がb1に贈り、a1はb2から貰うとなります。





前回の図と同じ、赤の実線矢印は水平交換、弧の破線がたすき掛け交換。青破線は子の流れ。黒の丸数字が水平交換の順番、赤はたすき掛けの巡となります。



系統図に組み替えても共時(local line)の女交換が破綻なく世代再生産(decent line)に結びつきます。

これら展開図、系統図の意義とは?前回と併せてレヴィストロースは以下を証明した事につきます。
1 水平交換(あるいはたすき掛け)のみでは女のやり取りが限定交換になる。さらに周回の流れ向きで子のやり取り相手が代わる、階層(クラス)が成立しない。
2 水平交換とたすき掛けを併用することで女やり取りが一般化し、子のやり取り相手が固定する。すなわち階層が安定する。
3 女交換は一般化、子の流れは限定交換(貰った相手に同じ財を返す)。ムルンギンに限らずアボリジニは子の限定交換を保持し、階層の安定を求めたと言い換えできます。階層とは突き詰めて男系の維持です。
上3の内容がオーストラリア・アボリジニ族に共通する親族体系です。

レヴィストロースは4の階層をPRQS、とPR,RP,QS,SQの組み合わせを主張した(本投稿の3,4回、6月24、27日)。この階層の2通り組み合わせは、a1がb1に、あるいはb1がa1にのいずれかを起点として選ぶかの差です。前回に掲載した系統図(本書から)ではPR,RP,QS,SQの階層となっています。しかしこの図の出典は無いからレヴィストロースが作成したと見られる。彼にしてもたすき掛け交換を「optionel選択的、たまにあり得る」とした原典以上の資料を持ち合わせていないから、ムルンギン族がどちらの組み合わせを実践していたかを断定するには情報不足。よって2の組み合わせを思弁からの可能性として提示したと思います。
見える(explicite)モノを論じるだけでは科学ではない、見えない(implicite)背後のカラクリ(構造)を見つけ出す、これが科学だ!と教え、実践し実証した例の一つがムルンギン体系の解析と圧倒される次第です。


ムルンギン族体系の続き 一般化交換 8最終 了

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