ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

国立大学協会も財務経営センターの事業仕分けに対して声明文

2010年06月07日 | 日記
5日の土曜日には、財務・経営センター主催の、第51回高等教育財政・財務研究会で「今後の国立大学財務・経営センターの支援事業のあり方」というテーマで講演。約120人の国立大学関係者や民間の方々が参加。

事業仕分け前に予定されていたもので、当初はバラ色のお話をする予定であったものが、事業仕分けで一転して、すべての事業が廃止という結論を踏まえての「今後の支援事業のあり方」についてしゃべらされる羽目になるとは!!

パワーポイント80枚準備してお話をしましたが、この日の最後の結論は

「将来の見通しが不透明な現状においても、改革できるところはただちに改革し、特に附属病院に対して「融資・交付」「分析・研究」「相談・提言」を有機的に機能させた三位一体の、しかも強固な現場のネットワークを活かした機動的支援体制を可及的に構築して、実績を上げる。」

それにしても、パブコメノ締め切りがどんどん迫ってきました。皆さん、まだ書いていただいていない人がおられましたら、ぜひともご自分のお考えを書いていただきますようお願いします。

パブコメのサイト


https://www.net-research.jp/airs/exec/rsAction.do?rid=407716&k=346b632983

必ず16番、17番、18番の3つにパブコメを書いてください。5月27日のブログで書いた私の意見を参考にしてください。

もちろん19番、24番、27番の事業についても書いていただいて結構ですよ。


国立大学協会が6月3日付けの声明文をホームページ上にアップしました。これも大いに参考にしてください。

長くなりますが、引用しておきます。




平成2 2 年6 月3 日
国立大学協会
国立大学財務・経営センター事業の廃止は、国立大学法人の
運営に甚大な影響。格別のご配慮を。

先般実施された行政刷新会議の事業仕分けにおいて、国立大学財務・経営センターの事業がいずれも「廃止」との判定を受けたことについて、国立大学協会としては、極めて深刻に受け止めております。そこで、当協会経営支援委員会において、当該事業が廃止になった場合に国立大学法人として懸念される事項について、下記のとおり取りまとめました。

つきましては、下記に示します国立大学の教育・研究・診療を支える国立大学財務・経営センターの事業(機能)の継続について、格別のご配慮をお願い申し上げます。



Ⅰ 施設費貸付事業

国立大学附属病院の使命である教育・研究・高度医療・地域医療への貢献、なかんずく日本全体の地域医療を中心として担ってきたことは紛れもない事実であり、今後、医学研究の国際競争力、地域医療の再生を図るためには、「調査研究」と附属病院の「経営の分析・助言」に基づいた、低利・長期の附属病院施設の整備に対する貸付が必要不可欠である。

(1)我が国の医療の崩壊懸念

貸付事業を廃止し、各法人が民間金融機関等から個別に借入を行う制度にすると、法人の規模・資産等により調達力に差が生じ、国立大学法人によっては、低利・長期の施設費の借入が困難になり、附属病院に期待されている使命を果たすことができなくなり、我が国の医療の崩壊に繋がる恐れがある。

(2)新たな業務のコスト増
各法人が財政融資資金から借り入れる場合であっても、個々の法人毎に借入のための業務や債券発行などの新たな業務の発生によるコスト増が生じることなどを考えると、財務・経営センターが一括して借り入れ、各法人に貸付ける現行の仕組みの方が、全体的に見て効率的であると思われる。

(3)債務負担の軽減

厚労省のNC(ナショナル・センター)は独法化に際して、借入金債務の一部を承継していない。一方、国立大学は法人化に際して、債務の全部(約1兆円)を財務・経営センターが承継し、国立大学法人が実質的に負担している。国立大学附属病院は、債務の償還によって疲弊していることが問題であり、診療負担の増加、論文数の減少、不十分な設備投資などの悪影響が出ていることから、国において債務負担の軽減策を講じていただきたい。

Ⅱ 施設費交付事業

国立大学法人の施設整備費の不足により、国立大学施設の老朽・狭隘化が進み、教育研究の質にも影響を及ぼしつつある現状で、施設の改修・修繕に必要な安定した財源を確保するため、交付事業は必要不可欠である。大学の持つ資産を大学の充実に使えないようにしたのでは、欧米のみならず、アジアの大学に比しても見劣りのする国立大学の施設がますます劣化することになる。

(1)国立大学法人の施設整備費の一翼

国立大学法人の施設整備費は、年間2,200億円必要との試算(文部科学省)があるが、平成22 年度予算においては、文科省の施設整備費補助金463億円、財務・経営センターの交付金56億円、附属病院の長期借入金388億円の合計907億円にとどまっており、所要額の半分以下しか措置されていない。このような現状にある中で、国の厳しい財政状況の下、年々補助金が減額されており、さらに安定的な財源であったセンターの交付金までもが廃止されることは、国立大学法人にとって到底耐えられないことである。

(2)法人化の制度設計の一部

施設費交付事業は、国立大学の法人化の検討の際に、各法人が土地を処分した収入の半分をセンターに納付させ、それをプールして全法人の施設改修費等として有効利用し、併せて法人間の資産の再配分機能を果たす仕組みとして、法人化の制度設計の一つの要素として取り込まれたものであり、法人化後の国立大学に対する財政支援の重要な制度の一つとしてビルトインされたものであるから、国の厳しい財政状況の下、一般財源による予算措置が期待できない現状においては、交付事業を廃止することは容認できるものではない。

(3)土地処分のインセンティブが失われる

国立大学法人では、その土地処分収入の1/2を当該法人で使用し、残りの1/2をセンターの交付事業の財源として全国の国立大学法人の施設改修等に供しているが、この制度がなくなり、すべての収入が一般会計の収入となってしまえば、土地処分のインセンティブが失われる。

(4)代替地を獲得することが困難になり、教育研究機能が損なわれる国立大学法人は、公共用の目的に供するため、地方公共団体等に協力して法人の所有する土地を処分せざるを得ない場合があるが、その場合、法人は、教育研究機能を維持するため、代替地を確保する必要がある。しかるに、処分収入の1/2を法人に留保する制度がなくなり、国の厳しい財政状況の下、代替地を購入するための予算措置も十全には行われないことになると、国立大学本来の教育研究機能を果たすことができなくなる。

その他

○ 調査研究や経営相談事業は各法人の経営戦略の貴重な情報源

調査研究事業によるすべての国立大学法人の財務・経営に関するデータの蓄積や分析、附属病院の財務・経営分析、先進的な改善事例の集積を踏まえた経営相談事業は、各法人の経営戦略の構築や経営改善の実施に当たり、他法人等のさまざまな情報を獲得する貴重な情報源となっている。これらの調査研究等を各法人で行うことや、コンサルタントの活用も各法人でばらばらに行うことは、国立大学法人全体として見た場合非効率的であると思われる。

上記のような機能を果たしてきた国立大学財務・経営センターの事業の見直しに当たっては、これら国立大学法人全体に対する支援機能が一層向上するように配慮して頂きたく、国立大学のイノベーション力、国際競争力、高度医療・地域医療の最後の砦機能の低下につながることのないよう、重ねてご配慮をお願い致します。
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