ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

事業仕分けについてのパブコメ募集に一人でも多くの皆さんのご意見を!! (その2)

2010年05月28日 | 日記
昨日もお願いしましたが、パブコメ募集に、あなた自身のご意見を送ってください。そして、あなたのお友達にも、一人でも多くパブコメにご意見を出していただくよう、呼びかけてください。

https://www.net-research.jp/airs/exec/rsAction.do?rid=407716&k=346b632983

財務・経営センターに関係する項目の中で、皆さんにどうしてもご意見をいただきたいのは、16番、17番、18番の3つです。

私の意見は、今までのブログで詳しく書いてきましたが、説明が足りなかったことの補足を仕分け人の皆さんのコメントに沿ってしていきたいと思います。

<16番>
(1) 施設費貸付事業
(2) 承継債務償還

についての仕分け人の皆さんのコメントでは、①民間でやればよい、②国でやればよい、の二通りのご意見があります。

そして、民間でやればよいという理由としては、「各大学は自立するべき」「各大学が経営努力を行った方が改善される。」「診療報酬で貸付を返済する以上一般の公的病院、民間病院と差はない。」

国でやればよいという理由としては、「特別会計時代の発想から変わらない。」「国と独法の役割が不明」などがあげられています。


まず、民間でやればよいという理由の「各大学は自立するべき」についてですが、確かに、仕分け人の皆さんがおっしゃるように、法人化により各国立大学には、より自立的な経営が求められています。

ただし、その公的使命の大きさから、民間企業とは異なり、国からの支援も受けつつ、かつ公的機関であることによる義務と制約の中での自立です。この公的使命の大きさ故に、財投等を活用した長期かつ低利の融資を受けることは大きな意義があります。


「各大学が経営努力を行った方が改善される。」という理由についても、もっともなことであり、私も国立大学それぞれの経営努力が最も大切と考えます。

ただし、放置をすれば良い方向に向かうというのは大きな間違いです。財務・経営センターの役割は、まさに各大学病院に経営努力を促し、自立軌道に近づけるためのお手伝いをすることです。

借り入れを民間から独自に行った場合は、現行の長期かつ低利の借り入れは困難で、各大学病院の負担が大きくなり、夕張状態にある大学病院を自立軌道に近づけることはさらに困難となります。また、各大学の規模によって利率等に差が生じる可能性があり、地方の小規模大学にとって不利な条件になることが考えられます。これは、地方の医療確保に絶対に必要不可欠な大学病院の経営を悪化させることにつながり、大きな問題を生じます。

なお、融資と経営評価は一体的に行うべきですが、他の金融機関では、教育・研究・高度医療・地域医療の支援という公的機能まで含めた経営評価は、大学病院についてのデータを活用できないこと等から困難です。


次は「診療報酬で貸付を返済する以上一般の公的病院、民間病院と差はない。」という理由についてです。

国立大学病院の再開発には、教育・研究・高度医療・地域医療の支援という大きな公的使命があります。そのために一般病院に比較して多額の費用がかかります。また、不採算的な診療があっても、公的使命達成のために、採算を度外視して維持しなければならない面があります。

ところが、このような一般病院に比較して高額となる再開発費や不採算診療に対して、現行の診療報酬ではカバーされません。この点が、一般の公的病院や民間病院との大きな違いです。この部分については、大学病院がいくら経営をがんばってもカバーできるものではなく、公的支援なくしては、現場は疲弊し大学病院は崩壊します。地域医療の最後の砦ある大学病院の崩壊は、すでに崩壊している地域医療にさらに甚大な影響を与えます。


次に国がやればよいという理由として「特別会計時代の発想から変わらない。」「国と独法の役割が不明」があげられています。

平成16年の法人化で、国立大学法人は自立的経営に向けて大きく一歩踏み出しました。たとえば約1兆円の多額の債務償還にしても、それまでは特別会計の中で、国の中でのやりくりであったものが、法人化により各国立大学法人に割り当てられ、各大学法人の現場の責任で償還することとなりました。これは特別会計時代の発想からすでに大きく変わったことを意味します。

また、貸付業務を国にもどしても、その事務作業量は変わらないことから、経費の節減に結びつかず、各大学病院の事務作業にかかる費用は、当センターが一括して行っているスケールメリットが失われ、むしろ増大することが試算されていることは以前のブログでも書きましたね。

独法の存在する意味は、国では実施困難、あるいは、するべきではないと考えられる事業(政策企画ではない、現場に直結した日常作業的な事業など)で、民間にまかせることも不適切な事業を、より効率的・効果的に行わせることであると考えます。国の政策決定にもとづき、本センターのような第三者組織が、国や民間では実施できない分析・研究にもとづいた経営評価、融資・交付、支援、提言等を有機的・一体的に機能させ、かつ、現場に直結した経営支援を行うことは、最も効率的で・効果的であると考えます。

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