ずいぶんと間をおいてしまいましたが、ブログを再開することにします。
この間、台湾の大学訪問や、講演が二つあって、忙しかったということもあります。ちょっと書かないと、あっという間に間があいてしまいますね。読者のみなさんにはお詫びいたします。
実は先日、京都大学総長室特命補佐で文科省研究振興局の学術調査官のM先生をはじめ、大学や文科省を改革しようという高い志をもった若手の方々6人とオフ会でごいっしょしたのですが、M先生は私のブログの熱心な読者で、全部プリントアウトされて、しっかりと勉強されていました。
私のこんなブログでも熱心に読んで下さる人がいるんだと思って、これは、もっと、一生懸命ブログを書かないといけないと、改めて思い直した次第です。
前回のブログのお約束では、2月10日の大前研一氏の週刊ポスト誌の記事に対する私の意見を整理しておくということでしたね。それで、今まで言い足りなかったことも含めて、表にまとめてみることにしました。
次回は、テーマを変えて、先週の私の講演のご紹介や台湾の大学情報をお伝えしようとと思います。
(本ブログは豊田の所属する機関の見解ではなく、豊田の私的な感想である。)
大前氏のコメント・提案 |
現状 |
豊田のコメント |
(コメント)医師不足や地域偏在の問題の元凶は、医師や病院が厚労省管轄なのに医学部を文科省が管轄していること。 |
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・医師不足や地域偏在の元凶は、厚労省が伝統的に医師数を抑制していたことに加えて、若手医師流動化による医師需給の自由市場化で表面化したこと。医学部の管轄が文科省か厚労省かには関係なし。 ・ただし、医学部・大学病院の管轄には、文科省および厚労省が連携して当たるべき。文科省医学教育課と厚労省の交換人事はすでに行われているが、さらに強固に。 |
(提案)医学部における診療科ごとの定員制⇒厚労省が医学部を管轄すれば実現可能 |
・現状は厚労省管轄の卒後臨床研修修了後に専門分野を自由に選択。 ・卒後臨床研修の地域定員が定められたが、どの地域も過剰でない状況では調整は難航し、実効性に課題。 ・産科医不足の対策案として、医学部入学時奨学金の産科枠設定も検討されたが、見送られた。 |
・どの診療科も過剰でない現状では、ある診療科を充足すれば、他の診療科が不足すること等から定員の調整は困難。ただし、医師過剰になれば話は別。専門医の定員制導入は検討の必要あり。 ・厚労省が医師需給を推計し、医学部定員を実質コントロールしてきたが、計画経済による調整は難しい面を持つ。 ・医学部入学時の診療科ごとの定員制はさまざまな困難が予想される。そもそも忌避される診療科の待遇改善が不十分なままで、情報が十分に与えられない高校生に対し入学定員で調整するのは本末転倒。 ・ドイツのような開業医定員制導入については、職能集団が反対。 ・実現は、厚労省の医学部管轄に無関係。 |
(提案)地域と専門分野別に給与や授業料等でインセンティブを与える。⇒厚労省が医学部を管轄すれば実現可能 |
・産科等では診療報酬の+改定がなされた。 ・地域病院の医師給与は以前から高め。 ・奨学金は地域枠入試制度で既に実現。 |
・インセンティブを与えることをさらに推進するべき(大前氏に基本的に賛成)。ただし、厚労省の医学部管轄とは無関係。 ・地域枠入試に伴う奨学金も文科省管轄下ですでに実現したので、実現は厚労省の医学部管轄に無関係。 |
(提案)厚労省が“医師養成学校”を作る。 |
・文科省以外が医学部の管轄・助成に関与する例としては・・・ ・防衛省が防衛医科大学校を管轄。 ・産業医大は厚労省が助成する私大。 ・自治医大は総務省が助成する私大。 ・中国では衛生部が11の医科大を直轄。 |
・厚労省が“医師養成学校”を作ることや厚労省が助成する医学部を作ることも考えうるが、現行の文科省管轄医学部の定員増で対応可能。すでにH19年7625人⇒H24年8991人と1366人医学部定員を増加した。新たな医科大を作ることに比較して経費が少なくすみ、全地域に配置されているという利点がある。 ・もちろん、地域に必要な医師を養成することを理念としている自治医大も定員を増やした(100⇒130)。
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(提案)地方が地方に必要な医師を養成する。 |
・公立大は今回の医学部学生定員増で地域に必要な医師数を増やしたはず。 ・自治医大は各県の地域医療に必要な医師の養成システム。 |
・地方にある文科省管轄の医学部でも、今回、地域枠+奨学金制度により、地域に必要な医学部定員を増やした。 ・問題は、公私大も含めて、地方大の卒業生が地方にとどまらずに、都会に移動すること。今回の地域枠+奨学金制度の効果をフォローする必要あり。 |
(提案)インターネット診断を認める。 |
・すでに遠隔医療は相当進んでいる。 |
・遠隔医療についてはさらに推進するべき。 |
(提案)医療特区を作り外国人医師を雇用 |
・地域医療崩壊の時に、一部地域が希望したが実現せず。また、外国の優れた医療を学ぶための外国人医師雇用も希望されているが厚労省は認めない。 |
・医師会は断固反対。 ・厚労省のハードルは高い。
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(提案)大学病院の廃止 |
・日本では大学が附属病院を所有 ・海外では、大学の所有以外に、非営利法人や厚生省が所有するケース等、様々な形態がある。 |
・所有・非所有に関わらず、教育病院は必要不可欠。ただし、大学が所有する・しないで、メリット・デメリットがある。最新の研究成果の臨床応用の観点からは所有する方がベター。 ・国際競争力の観点からは、所有する教育病院に加えて、非所有の教育病院を増やして、むしろ拡大するべき。 |
(コメント)日本のように大学側が優位に立つと、医学部生が専門を決める際に医局のパワー争いになり、人員が不足している科ではなくボスの強い科に人が集まる。 |
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・最近は、卒後臨床研修でじっくりと中身を見てから研修医が専門診療科を選ぶ。ボスの魅力による診療科の医師偏在は、日本全体でみれば平均化され、大きな影響とはなりえない。 ・医局のパワーとは医局員数と考えられるが、卒後臨床研修のマッチング制度による若手医師流動化によりパワーは弱体化した。その結果、地域の医師不足や偏在は解決するどころか、逆に悪化した。 ・だだし、私はいわゆる”医局”のシステムが必ずしも良いとは思っているわけではない。 |
(コメント)研究は研究所の役割にして大学は病院を経営せず、学生の教育に徹するべきではないか。 |
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・日本では臨床治験の空洞化がおこり、医療機器の開発でも世界の後塵を拝し、臨床研究の国際競争力は急速に低下している。臨床研究の場として病院は欠かせず、大学病院以外の病院の協力も得て、いっそう推進するべき。 ・病院経営上の観点から、附属病院は財務的に大学から完全に分離するべき。この点では、大前氏の病院の独立性を高めるべきでという意見に通じる部分がある。しかし、大学は附属病院や非所有教育病院において、教育に加えて研究をいっそう推進するべきという点で私の意見と異なる。 |
(コメント)患者の位置付けが不明確な日本の大学病院は、もはや無用の長物になったといわざるをえない。 |
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・大学病院における患者の位置付けは明確。患者を第一に考える高度医療である。臨床研究においてももちろん患者の意思が最優先される。 ・地域にある大学病院の地域医療への貢献は極めて大きい。今や大学病院なくして地域医療は考えられない。また、東日本大震災での経験でわかるように、全国レベルの災害医療への貢献も大きい。 |
(提案)厚労省が実務面から市場原理で医師を最適配分する仕組みをつくる。 |
・現状でもある程度インセンティブが設けられているが、不十分。 |
・大前氏に基本的に賛成 ・基本的には医学部定員増による医師数増+インセンティブ+マイルドな規制的措置(専門医の定員制や専門医資格に一時的地域勤務を義務付ける等) ・要するに、医師不足および偏在の元凶が、医師数不足および医師流動化(自由市場化)であることから、医師数を増やし、医師流動化(自由市場化)に逆らうインセンティブや規制を与えることが基本。ただし、強い規制は職業選択の自由を損なう等の問題もあって職能集団の理解が得られないことから、マイルドな規制にとどめるべき。 |
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