ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

「若手職員勉強会」「係長クラス勉強会」は改善・改革活動の横展開

2010年09月09日 | 日記
昨日、当財務・経営センターが主催する「国立大学法人係長クラス勉強会」の企画委員会が学術総合センター会議室で開かれました。全国からやる気のある係長が8人集まり、来る10月28日、29日に開かれる勉強会の計画を検討。

このような全国の国立大学法人の事務職員が一同に会していっしょに大学経営について議論する機会は、他にはほとんどなく、たいへん貴重な大学間交流と能力開発の場となっています。また、参加した事務職員の満足度も高く、たいへん好評を博している事業です。

今年度は若手職員勉強会、病院若手職員勉強会、係長クラス勉強会、病院係長クラス勉強会の4つの勉強会を開くことになっています。

勉強会の企画は、企画委員会の職員たちの自主的なアイデアを尊重しています。上からの押しつけの勉強会ではなく、自分たちで企画した方が、やる気がでるはずですよね。ただし、企画委員会には、指導的な立場の課長クラスの方々若干名が陪席して、あまり脱線しないように、また、効果的な勉強会になるように、それとなくアドバイスをし、議論を誘導します。

これはまさに、私が三重大に導入したproblem-based learning (PBL) 教育の原理と同じですね。少人数のグループで学生達が自主的に問題を発見し、議論し、自己学習をして、自分たちで解決する。そこにチューターと呼ばれる教員がつきますが、あくまで主体は学生であり、チューターは議論を誘導したり、自己学習のアドバイスをするに留める。

勉強会本番においても、議論のきっかけとして講師のお話を聞くことはありますが、自主的なグループワークが主体です。つまりPBLと同じで、自ら問題解決をすることが求められます。

ところで、去る8月18日に開催された若手職員勉強会の企画委員会では、次のような疑問が出されました。これは、若手職員達がツイッター上でもつぶやいていることです。

若手職員が勉強会で集まってせっかく大学の改善・改革について議論しても、各大学へ帰った時に、それが組織全体の改善・改革に結びつかない。現場の改善・改革のアイデアを組織としての改善・改革につなげることができなければ、勉強会を開いても意味がないのではないか?

私もまったくその通りだと思います。では、どうすればいいのでしょうか?

いろんなファクターがあると思いますが、現場の若手からせっかく改善・改革の提案が出てきても、その直接の上司である係長クラスでつぶされてしまっては、どうしようもありません。ミドルリーダーである係長クラスが上手に若手の改善改革のアイデアを拾い上げて、さらに上のレベルに、組織として採用されうる企画案に整えて上げていく必要がありますね。

係長クラスの勉強会は、まさにそのような現場の改善・改革の要になる係長の改善・改革営意識を高めることをねらっています。

もちろん、課長、部長、役員レベルの理解も必要ですが、現場の若手と係長クラスの改善・改革意識を高めることができたら、国立大学全体を改善・改革するための強力な戦力になるはずです。

10月28、29日には全国の国立大学から各1名のやる気のある係長に集まっていただく予定です。複数職員の参加を希望する大学も多いのですが、単なる講演を聴くだけの研修会では効果が低いので、グループワークという形をとりたいために一度に多くの人を集められないこと、そして、予算にも限りがあることなどから、まことに申し訳ありませんが各大学1名とさせていただいています。

そして、今回集まっていただいたやる気のある係長は、各大学へ帰っていただいたら、改善・改革意識の高まりを自分一人だけにとどめず、ぜひとも大学全体に広げていただく中心人物になっていただきたいと思っています。

このように改善・改革活動を一つの大学だけにとどまらせずに、他の大学にも伝播させていくこと、つまり「改善・改革活動の横展開」は、たいへん重要かつ有効な経営改善手法だと考えています。

4月の事業仕分けでは、このような事業は否定され、各大学が個別にプロのコンサルに頼めばいい、という結論をいただきましたが、実は私は今でも納得がいきません。

また、公的使命が大きな比重を占める大学という機関は、個別に競争させるということも必要だとは思いますが、それと同時に、大学間のネットワークを強化して、一つの大きなシステムとして、効率化を図ったり、連携をしてお互いに助け合ったりする仕組みが重要であると考えています。

そして、そのためには財務・経営センターのような、政府からも一歩距離をおいた第三者的な大学支援機関の存在が必要不可欠であると考えています。このような大学の第三者的な支援機関の存在は、いくつかの先進国で一般的に見られる仕組みです。

事業仕分けて否定され、将来の見通しのつかない不安定な状況においても、当センターの経営支援課の職員達は、「改善・改革活動の横展開」の重要性を理解し、一生懸命勉強会のお世話をさせていただいています。

私は理事長として、このような職員達に心からありがとうと言わせていただきます。
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3 コメント

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危ない安定からあるべき不安定へ (しみず)
2010-09-09 17:37:31
やる気のある係長クラスを刺激し、もっとやる気になってもらうことは大切なのですが、その上が・・・。特に大学や附属病院は、非常に大きな組織で、しかも官僚的でありながら、同時に権力構造が横並び的な組織(中小商店の集まり)なので、ことなかれの傾向が強く、下の者のやる気が上を動かすことは、なかなかないのが現状です。大体、教授、部長は、動きたくない。変えたくない。変える必要を感じていない。なぜなら、自分の身はおそらく安寧ですから。自分のお店さえよければよいからです。大学全体のことに思いを寄せる教授がどれだけいるか。ましてや、地域のことに思いをいたす教授がどれだけいるでしょうか。三重大は特殊なケースで、それは先生が実際に動かれる方で、実際にリードし、尊敬と敬意を集めていたからだと思います。「つぼやき」からも、それはよくわかります。この「あぶない安定」を不安定化するには、内部の若手の力と、外部からの突き上げ(意見、要望、期待、批判、叱咤激励)が必要と思います。中と外から動かさないと、おそらく動かない。財務・経営センターの役目は、内部に対してだけではないと思います。そういう意味で、財務・経営センターは、大学と大学病院のあるべき姿のために、内部からも、外部からも、必要とされる組織だと思います。
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訂正 (しみず)
2010-09-09 21:21:12
ちょっと言葉足らずだったかもしれません。そういう若い方のやる気が、大学や附属病院で、埋没せずに活きるように力を貸したり、そこの環境にかかわったりするのも、センターの役割ではないか、ということです。なにしろ、センターは「上の人たち」に関われるのですから。
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しみずさんのコメントに感謝 (つぼやき)
2010-09-14 14:40:40
しみずさん。コメントありがとうございます。その通りだと思います。若手や係長だけではなく、その上のレベルの意識改革が大切ですね。それに改善・改革を進めるには、内部からだけではなく外部からの何らかの力が必要なことも同感です。ご指摘の通り、財務・経営センターはそれができる立ち位置にあると思います。私はそれをぜひともやってみたいと思います。
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